第17話 超S級最上級ランク任務:夫婦関係の改善と継続
「ありがとうございます。先生。とんでもない魔法の呪文を教えてもらったような気がします。でも、明日、迎えが来てしまうというので、そんなことをしている時間があるでしょうか……」
「そうですね、確かに……でも、もし明日で最後かもしれないなら、いっそのこと、オーランさんの気もちを全てぶつけてみたらいいんじゃないですか」
「え?」
「『おれは、離婚したくない』って」
「はい」
「そして、『いつもキミが大事な話をしようとしていたとき、眠ってしまっていびきをかいてしまって、ゴメン』『いびきがうるさいおれと、いつも一緒に寝てくれてありがとう』『いびきがうるさいって言われたけど、そんなことはもう忘れて気にしてない』って」
「そうですね。それに、それでもリコンすると言われてしまったら、それを『認める』しかないんでしょうね」
「そうかもしれません。でも、私の知り合いに、なぜか一度離婚したのに、同じ人同士がまた結婚したという夫婦がいますよ」
「先生、本当ですか?」
「はい。エルフのみなさんにはないかもしれませんが、「再婚」というやつですね。だいたい違う人と再婚するのが多いですが……」
「なるほど、『サイコン』というのですね。もしだめだったら、時期を見て、もう一度私から結婚の申入れをしてみますよ」
「ありがとうございました。何か、やるべきことが見えてきた気がします」
「はい。たぶん魔女の館とやらに単身で乗り込むよりは、よっぽど簡単な気がしますよ」
「はい!確かに。でも、ただ気もちを伝えるだけなのに、命の危険はないかもしれないですが、これは超S級最上級ランクみたいに……難しいですね!」
「そういう難しい任務こそ、燃えるんじゃないですか!」
「ははは、確かにそうですね!」
「先生、それに見習いの城石さん、今日はありがとうございました」
「いえいえ、それではお気をつけてお帰り下さい」
オーランさんを事務所の玄関まで見送る。
「先生から教えてもらった、『結婚を長続きさせる秘宝』使ってみます」
オーランさんは、そう言うと、オーランさんの身体を覆っていた光の粒子がどんどん拡散していって……眩しい大きな光になった。眩しさで目を閉じて、再び目を開けると、オーランさんの姿はそこにはなかった。
「ふう。今回もまた無事に終わった」
「先生……」
「え、ああ、城石さん。お疲れ様」
そうだった。今回は城石さんも一緒なんだった。
今回の相談、どう思っているんだろう。いや、この変な相談内容をどう受け止めているんだろうか。
「先生、こういう相談って、初めてですか?」
「いや、実は2回目……かな」
「ああ!やっぱり!何か妙に慣れてましたよね!」
「え、ああ、いや、そうは言っても、2回目だよ?」
「こんな相談、絶対他では受けられないですよ。オーランさん、本当にエルフ??信じられないけど、信じたい!廣田先生に魔族とか悪魔の話をしていたってことは?」
「あ、うん、つい最近、旦那さんを殺されたっていう『魔族』を名乗る人の相談があって……」
「うそぉ!すごーーーい!!」
「いや、すごいのかな……」
「すごいですよ!先生、異世界からの相談者の『引き』持ってますね!」
「ああ、『引き』ね」
「私、実は『異世界』系の話大好きなんです!最近はもちろん勉強時間の方が長いですが、一生涯で見たら、たぶん六法の勉強するよりもそういう小説や漫画読んだり、アニメ見てる時間の方がずっと多いかもしれません」
「え、ああ、そうなの?」
「そんなんで司法試験大丈夫?」という言葉がもう少しで口から出そうになったけれど、そこは飲み込んだ。
「はい!あんまり法律関係の人に言うと笑われるんで、あんまりこっちの業界の友達にも言ってなかったんですけど」
「ああ、確かに司法業界の人たちはリアリストで、ファンタジーより現実的な話の方が好きだからね」
「そう!そうですよね!でも、先生はああいう人の話、真正面から受け入れて聞いていて、しかも提案した解決案もすごい個性的で、びっくりしました!」
「ああ、あれはおれというか、以前、廣田先生が離婚相談でそんなこと言ってたんだよ」
「ええ!そうなんですか?」
「うん。離婚って、結構法律論じゃないところに問題があることが多いからね。まだ離婚しなくても何とかなりそうな相談者だったら、廣田先生はあんな感じで『夫婦関係が上手くいく秘訣』みたいな話をすることが多いよ」
「うわぁ、すごい勉強になる!」
「おれはまだ人生経験足りないから、そこまでいい自信もって言えないこともあるけど、廣田先生の受け売りだね」
「ありがとうございます!先生!明日も楽しみですね」
「うん。でも、明日こういう相談が入るかどうかはわからないよ」
「でも、楽しみです!また明日もよろしくお願いします!」
城石さんは、そう言うと、玄関の扉を開けて、途中で消え去ることなく普通に去って、帰宅して行った。




