第15話 冒険者エルフの夫婦は共働き
「て、展開が早いですね」
「はい。王様に手紙を送ったとレイナは言っていました」
「しかし、王様と喧嘩して出てきちゃったんでしょう?そんな簡単に王様も迎えなんてよこしますかね?」
「はい。私もまた怒られるかもしれませんが、レイナもただじゃすまないかもしれません」
「下手したら……エルフと人間との間で戦争なんてことも?」
「うーん。王様のことは私も知っていますが、そこまでのことをするかどうかは……でも、わかりませんね」
なるほど。これは最悪なことを考えれば、国際結婚の破綻からエルフと人間の国家間戦争に発展しかねないというわけか……
益々そんな話、たかだか経験5年くらいの弁護士のおれに担えるのか??
ちょっと相談から逃げ出したくなる……
「離婚するかどうか、のところで、もしオーランさんが離婚したくないということだとすると『離婚しないためにはどうしたらいいか』が次の問題になりますね」
「はい。先生、それをぜひ知りたいです」
正直、離婚しないということであれば本来弁護士の出番はないのだが……
今までの経験から何かアドバイスできることはあるだろうか。
ここは原点に帰ってもう少し事情を掘り下げてみよう。
「そもそも、結婚してからの生活ぶりについて、もう少し教えて頂けますか」
「はい。でもどうしてですか?」
「オーランさんが離婚したくない、とお考えなのであれば、攻略しなければならないのは、レイナさんの気もちです。『どうやったらまた気もちが戻って来るか』ですね。さっきの幸せそうなお話からすると、別れたいってなっちゃう理由がわからないんですよ。そこを考えてみようかと」
「はい。私も、なんでレイナさんが別れたいなんて思うのか、そこがわからないです」
「ああ、なるほど」
「今まで色々な離婚相談を聞いていますので、何か経験上役に立つ話ができるか考えてみます」
「ありがとうございます。そうですね。まず、私は、結婚したすぐのころ、冒険者を一時辞めていたんですよ」
「はい。先ほど、そういう話でしたね」
「でも、結婚した後、子どももふたりできてくると、生活のため、稼がないといけなくなってきまして……」
「はい」
子育てにお金がかかるのはどこの世界でも同じということか。世知辛いね。
「まだ子どもが小さいのですが、私はもう一度冒険者として仕事に出ることにしたんです。久しぶりにエルヴァーンギルドに顔を出すと、しばらくぶりだったのでだいぶ冒険者ランクは下がっていました」
「あ、まだその『エルヴァーンギルド』では仕事ができたんですね」
「はい。そこは幸いでした。でも、ランクが下がっていたので、なかなかいい稼ぎの仕事は回ってきませんで、正直、蓄えていたお金を少しずつ使いながらの暮らしでしたね」
「大変ですね」
「はい。ランクの低い仕事はあまり大きな稼ぎにもならないので、『量』をこなす必要があって、何日かかけての遠征だったり、小さな仕事をたくさんこなしたりしました」
「なるほど」
「昔は、こういう仕事も自分のステップアップと修行のためと思っていましたが、最近は本当に、レイナと子どもたちのため、という気もちでしたね」
「いい旦那さんじゃないですか!(イケメンだし)」
「いや。私としては、当然のことと思っています」
「レイナさんは、家でどうしていたんですか?」
「レイナは、家で子どもの面倒をみていることが多かったと思いますが、私の仕事の稼ぎが少ない時もあって、レイナも私の村の小さな冒険者ギルドに登録していました。レイナも、簡単な依頼をこなしてくれていたようです。結婚した以上、お互い助け合って、背中を預け合っているのと同じですからね」
「夫婦ふたりで共働きってやつですね」
「はい。最近は、そういうエルフの夫婦がほとんどですね。戦闘系エルフの夫婦の連携は、ふたりがまるでひとつの生き物みたいで、本当にスキがないですよ」
「なるほど」
「そういえば、レイナのことで1回気になる話を聴いたことがあります」
「え、どんな?」
「はい。ある時、村のギルドに所属している友達から、こんなことを言われたことがありましたね。「レイナが、泣いていたよ』って」
「え!?何かあったんですか」
「はい。レイナは、エルフの村には友達もほとんどいないみたいで。エルフの中には人間のことを好ましくないと思っている人がいるのも事実です。いや、もう今の時代、そんなことを言う人は少数派なのですが、もしかしたら村の誰かに何か言われたのかもしれません」
「ああ、なるほど。それはつらいですね」
「レイナさん、可哀想。元は王女様なのに」
「でも、それならそういう愚痴みたいのって、家でも話していなかったんですか?」
「え!?いや、それが、私はそういう話を聴いていなかったんです」
「どうしてですか?そういうの、信頼できる夫に一番に話すと思うのですが」
「私、家に帰るとほとんど寝ているだけですから」
「ん??それはどういう??」




