第12話 経験値「0」と経験値「1」の違い
城石さんが「イケメン」と評するご相談者を相談室にお招きする。
「こちらへどうぞ」
「はい」
改めてお顔を拝見すると……おお、ああ、た、確かにイケメンだ……
目鼻立ちは整っていて、まゆ毛もキリっとしている。瞳の色は濃いブルーで、背中の方にまで伸びた髪の毛は、艶があって、薄いゴールド。男のロン毛なんて、本当にカッコいい人じゃないとカッコが付かない。身体中を、何というか、小さい光の粒子みたいなものが覆っている。かといって誰も寄せ付けない雰囲気というわけでもなく、その粒子からは優しさのようなものさえ伝わる。この人の人柄を現しているのだろうか……
ただ、一か所だけ、妙におかしなところがある。
耳が……とんがっている!
普通の人間よりだいぶ長い。
マリンダさんと同じく、また魔族がやってきたということなのだろうか……
「はじめまして。冒険者エルフのオーランと申します。本日はよろしくお願い致します。」
「はい。よろしくお願い致します」
なるほど、今回は「エルフ」ですか……魔族とまた違うファンタジーの一族が現れたぞ。しかし、前回のマリンダさんの時ほどの衝撃はない。人間、何でもそうだが、経験が「0」なのと「1」あるのとでは大きな違いだ。
「……ぃ」
うん?小声で誰かの声がする。
「…先生」
相談室の扉がちょっと開いて、手だけが見える。
そして手招きをしている。
城石さんのようだ
「すみません、ちょっと失礼しますね」
「はい」
相談者オーランさんに断りを入れて、相談室の外に出る。
「先生、ちょっとこっちへ。いいですか」
「うん。いいよ」
相談室から離れた私の執務スペースへ移動する。
「先生……」
「うん」
ああ、きっと城石さんも自らを「エルフ」と名乗るオーランさんのことが気になるのだろう。しかし、おれに何か聞かれても、わからないぞ?
「私も、一緒に相談入っていいですか?」
「ええ!どうして?」
「だって、あんなイケメン気になるじゃないですか!」
「え、ああ、そういうこと……」
「はい!それに、何か光の粒子みたいのが回りを飛んでますし、『エルフ』って言ってましたよ!」
「うん、ああ、そうだね」
「本当の『エルフ』ですか?どういうことですか??コスプレイヤーでしょうか??」
「いや、そんなことおれもわかんないよ」
「あの耳、どうなっているんでしょうね?確かめますか!!?」
ああ、そうだよね。もしそこを暴こうとするなら、そこをつついて見たくなるよね。うんうん。おれもマリンダさんの相談のとき、「ツノ」を確認したもんね。その気持ちは非常によくわかるよ。
しかし、前回ちょっと疑ってしまって、相談者との信頼関係が危うく崩れるところだった。ここは経験値「0」の城石さんと経験値「1」のおれの違いかな。ランチに廣田先生から言われたことを思い出す。
「城石さん、ランチの時、廣田先生が言っていたこと、覚えてる?」
「え、何でしたっけ?」
「この仕事は、誰かの相談を受けるというものなんだから、『まずはその人がどんな人なのか、『知る』ところから始まる』って言っていたでしょう」
「あ!」
「その人が『そういう前提』でお話をされるなら、そういうことでまずは話を聴くのがいいんだよ。きっと」
「なるほど!先生、勉強になります!」
偉そうに言えるのは、やはり経験値「1」あるからだろう。
「城石さんも相談に立ち会っていいか、オーランさんに確認してみようか」
「はい!お願いします」




