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東京共喰-PARASITE SITY-  作者: 波浪


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第五話「暴食」

夜の街が、歪んでいた。


ネオンが揺れる。

空気が重い。

呼吸するだけで、喉がざらつく。


「……ここか」


榊 悠斗は足を止めた。


目の前——廃ビル。


だがただの廃墟じゃない。


壁が“脈打っている”。


「気をつけて」


九条 澪が銃を構える。


「中はもう、巣になってる」


悠斗は舌打ちする。


「ほんと趣味悪いな……」


中に入った瞬間。


——ぐちゃっ


足元が嫌な音を立てた。


床一面に広がる黒い液体。


そして——


「……いるな」


無数の気配。


四方から、見られている。


「雑魚は任せて」


澪が前に出る。


「本命は奥」


「了解……って言いたいとこだけど」


悠斗は苦笑する。


「全部来そうだぞ」


その直後——


一斉に“それ”は現れた。


天井、壁、床。


人の形をした共喰体が、這い出てくる。


「ッ!!」


澪が撃つ。


連続する銃声。


正確に頭を撃ち抜く。


だが——数が多すぎる。


「キリがない!」


「だろうな!」


悠斗が前に出る。


「まとめて来いよ!」


その瞬間。


ドクン


黒が溢れる。


腕から、背中から、影のように広がる。


「……いい加減慣れてきた」


一歩踏み込む。


——ドンッ!!


触手が一斉に放たれる。


数体をまとめて貫く。


引き裂く。


潰す。


「……ッ」


澪が一瞬、目を細める。


「制御、上がってる……?」


だが——


「まだ甘い」


背後。


死角から一体。


「危ねぇな」


振り向きざま、噛み砕くように潰す。


黒が“喰う”。


悠斗の中に、熱が広がる。


「……これ」


違和感。


「力、増えてる?」


「喰った分だけ強くなる」


澪が言う。


「それがあんたの特性」


悠斗は一瞬黙る。


「……最悪な仕様だな」


そのとき。


——ズズズ……


奥から、重い音。


すべての共喰体が、ピタリと動きを止める。


「……来る」


澪の声が低くなる。


空気が変わる。


圧。


本能が叫ぶ。


——ヤバい


壁が崩れる。


そこから現れたのは——


「……でけぇな、おい」


暴食グラトニー


それは、もはや人の形をしていなかった。


肥大化した肉塊。


無数の口。


腕の代わりに、牙のような器官が蠢く。


床に落ちた共喰体の残骸を——


バリ、ボリ、グシャ


“喰っている”。


「……あれが、親玉か」


「変異種」


澪が構える。


「しかも捕食特化」


グラトニーが、ゆっくりと顔らしき部分を向けた。


そして——


「……アァァァァ」


声。


いや、“飢え”そのもの。


次の瞬間、消えた。


「ッ!?」


速い。


巨大な体なのに、異常な速度。


「上!!」


澪の叫び。


振り上げられる“顎”。


「チッ!!」


悠斗は咄嗟に受け止める。


——バキィ!!


骨が軋む。


「重っ……!」


押し潰される。


「離れろ!」


澪が撃つ。


だが——


弾が“喰われた”。


「は?」


グラトニーの口が弾丸を噛み砕く。


「マジかよ……」


その隙に、悠斗は弾き飛ばされる。


壁に激突。


「がっ……!」


血の味。


だが——


「……いいじゃん」


ゆっくり立ち上がる。


「やっと“まともに戦える相手”だ」


笑う。


危険な笑み。


「来いよ、化け物」


挑発。


グラトニーが咆哮する。


突進。


悠斗も走る。


真正面から衝突。


——ドンッ!!!


衝撃で空気が弾ける。


黒と肉塊がぶつかり合う。


「ッ!!」


触手が突き刺さる。


だが、再生される。


「再生持ちかよ……!」


グラトニーの口が、悠斗の腕に食いつく。


「ぐっ……!」


肉が裂ける。


だがその瞬間。


「……喰うのは、こっちだ」


黒が逆流する。


グラトニーの口の中に侵入。


内部から、破壊。


「ガァァァァ!!」


悲鳴。


距離を取る。


悠斗の腕は——再生していた。


「……は?」


自分でも驚く。


「再生……?」


澪が呟く。


「そこまで……」


「いいねぇ」


悠斗の目が光る。


「どんどんバケモンになってく」


そのとき。


頭の奥で、声。


——もっと喰え


——全部、奪え


「……うるせぇな」


だが、止まらない。


黒がさらに膨れ上がる。


「悠斗!!」


澪が叫ぶ。


「それ以上は——!」


「分かってるよ」


だが、その声は——


もう半分、別のものだった。


「だからさ」


一歩踏み出す。


「ここで終わらせる」


一瞬で距離を詰める。


グラトニーが迎撃。


無数の口が開く。


だが——


「遅ぇ」


すべてを上回る速度。


黒が一点に収束する。


「喰え」


——ドンッ!!!


巨大な一撃。


グラトニーの核を、貫いた。


沈黙。


ゆっくりと、崩れる巨体。


ドサァ……


完全停止。


「……終わり、か」


悠斗が息を吐く。


だが——


「ッ……」


膝をつく。


黒が暴れる。


「やば……これ……」


止まらない。


「悠斗!!」


澪が駆け寄る。


「離れろ……!」


悠斗が叫ぶ。


「今……マジで、喰う……!」


目が完全に赤く染まる。


理性が崩れる。


そのとき——


——パンッ


銃声。


額すれすれを弾がかすめる。


「戻れ」


澪の声。


「ここで終わるな」


一瞬の静寂。


悠斗の呼吸が荒い。


「……チッ」


黒が、ゆっくりと引いていく。


「はぁ……はぁ……」


崩れ落ちる。


しばらくして。


「……勝ったね」


澪が静かに言う。


悠斗は苦笑する。


「代償デカすぎだろ……」


澪は少しだけ視線を落とす。


「それでも」


小さく呟く。


「あんたは、生きてる」


その頃——


管理局。


神代がモニターを見ていた。


「……やはり」


データが跳ね上がる。


「捕食による進化、再生能力の発現……」


静かに笑う。


「危険だが——」


画面の中の悠斗を見つめる。


「最高だ」

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