14 - 悪夢
数日後、山のような書類がついに全て処理されました。
タイチはソファに寝そべり、しっかりとリラックスしています。
この週間中、タイチはずっと書類やコンピューターに向かって作業していましたが、仕事が終わった後は少し休憩することにしました。
(ただちょっと休憩するだけ、問題はないだろう…)
タイチは少し休憩した後、朱里に仕事が終わったことを知らせるつもりでした。
そんな思いでタイチはゆっくりと目を閉じ、知らぬ間に眠り込んでしまいました。
* * *
「これからは、私たちは5人で同じチームだよ」
タイチの前には、彼がかつて大切にしていた仲間たち4人がいます。
(ケンタ、ミコ、ユウト、隊長…)
タイチにとって、彼らを最後に見た時よりも彼らはもっと若く見えます。
(目の前の景色は…チーム結成直後の時期か…)
今の感覚がなんだか不思議だと感じ、自分が今夢の中にいることをはっきりと理解しています。
(明晰夢か…懐かしい思い出だな)
まばたきする間もなく、目の前の景色は一変し、山の中にいる環境に変わりました。
前方の視界は非常に低く、おそらく転んだ状況です。
「大丈夫か?もう少し頑張ろう」
目の前の隊長が手を差し伸べ、タイチはその手を掴んで引き上げられます。
(明らかに夢の中なのに、現実とあまり変わりがない感じだな…)
タイチはその場面を覚えており、おそらく訓練中の光景で、重い荷物を持って山を登る訓練をしていたようです。
隊長はタイチが怪我をしていないことを確認した後、ゴールに向かって進み始めました、タイチも彼に続きます。
走る間、周囲の環境はますます暗くなっていきました。
この状況に気づいたタイチは立ち止まり、周囲の環境が夜の建物群に変わっていくのを静かに見つめました。
「気をつけろ、今回は訓練ではなく実戦だ」
「了解」
隣の仲間が小さな声で答えました。
「安心しろ、私たちはこれまでたくさんの訓練を積んできた。このような任務は私たちには難しくない」
(これは…初めての任務か…)
タイチは手に持ったライフルを一瞥しました。この任務はテロ攻撃を企てる一団を逮捕することを覚えています。
「どうした、不安か?」
タイチは何か言おうとしたが、声が出ないことに気づきました。
「ちょっと緊張から、初めての実戦だからな。相手が反抗しなければいいんだけど」
その一方で、夢の中のタイチは自分の声が当時と同じように発せられるのを聞いていました。
「適度な緊張はいいことだが、自分に過度のプレッシャーをかけないように」
タイチは隊長の言葉を聞いた後、深呼吸して自分を落ち着かせました。
隊長は周囲のメンバーに合図を送り、彼らはそれぞれのポジションにつきました。
「任務開始」
隊長の言葉を聞いて一歩踏み出すと、周囲の景色は消え、一面真っ白な空間になりました。
(懐かしいな、あの時は順調だったな)
周囲を見回し、景色は徐々に整備室に変わっていきます。
目の前の開いたロッカーを見つめながら、タイチは任務が終わり寮に戻る準備をする時のことを思い出しました。
「賢者、今回の任務は君の計画のおかげで順調だったよ」
隣にいる隊長が嬉しそうにタイチに話しかけました。
「別に、ただこれは得意なことだけさ…」
タイチはゆっくりとロッカーを閉め、言葉からはあまり喜びを感じさせず、むしろため息のような感情が漂っていました。
「何だ、彼らの評価が気になるのか?」
隊長はタイチの表現を察し、向かって話します。
「他の人たちのことは気にしなくていいよ。君には君の長所があるんだろう?」
タイチは聞いて頭を少し下げます。
「でも…僕はただ意見を出すだけで、実際の実行は君たちのおかげで成功できるんだ。現場ではただの足手まといさ…」
隊長はタイチが悩んでいる様子を見て、どう言葉をかければいいかわかりませんでした。
「君はたくさんの任務をやり遂げてきた。もっと自信を持っていいんじゃないか?」
「でも、何度か危険に巻き込まれたこともあるじゃないか…もし僕もっと強くれば…」
タイチの言葉を聞いた隊長は、タイチの肩に手を置きます。
「それは偶然のことだよ。君の計画は完璧だし、現場の状況を把握する能力も優れている。私たちが見落としている部分に気づけることがあるんだ」
「それぞれの個性や得意なことは異なる。君は私たちの仲間だから、周りの関係ない人たちの評価にあまり気にしなくていいんだよ」
「何よりも重要なのは、君が真剣に取り組んでいること。君の努力は報われるさ」
隊長の言葉を聞いたタイチは少し元気を取り戻した。
(そう、こんな自分でも、誰かに必要とされているんだ。本当に…そうなんだ…か?)
再度目を開けた瞬間、目の前は雪が降っており、周囲の木々は雪に覆われていました。
(また…この光景か…)
タイチはこの光景に慣れ親しんでおり、過去に何度も夢を見たことがありました。
心の中で、もし夢が過去に戻るのならば、この場面は絶対に現れるだろうと理解していました。
(本当に…悪夢だ…)
タイチは白い地面を見つめながら、激しい運動をした後のように力強く息を吹きました。
(これは…抵抗をする時だったのか…)
「…もう私たち二人だけなのか…」
通信機から発せられる音に耳を傾けながら、タイチは木の後ろに隠れている隊長を見つめました。
再び前方を見上げ、自分に近づいてくる敵を目にしました。
一歩、一歩、大きな歩幅はなく、ゆっくりと近づいてくる敵です。
(死んでしまうのか…)
当時のタイチは感覚だけで理解しました、目の前の敵と自分の差は、どれだけ努力し、抵抗しようとも勝てない相手だということを。
(ただの記憶だとわかっていても、やっぱり気持ち悪いな…)
フードをかぶった敵を見つめながら、夢の中でも吐き気を感じました。
(なぜ…まだよく見えないんだ…)
目の前の人物はフードをかぶっていますが、タイチは彼の顔を正面から見たことがあるはずです。
しかし、現実でどれほど思い出しても、夢の中でも何度見たとしても。
彼……
顔はない…
記憶の中の彼の顔は、黒い影に包まれており、まったく見えません。
(思い出したくなかったのかな...あの人..しんてきがいしょうごストレス障害か…)
(呼吸が…つらい…)
(当時の自分もこんな感じだったな…息苦しくて、手が震えて銃もまともに握れなかった)
「くそっ、なめやがて!」
隊長は大声で叫び、銃を手にして敵に向かって反撃します。
しかし、相手はわずかな動きですべての弾丸を避けてしまった。
(何度見ても、それは同じ…最小限の動きですべての弾丸を避ける…目の前のすべてがまるで幻のようだ…でも、あれは…ライフルだったはずなのに…)
銃撃されても相手の速度は変わらず、一歩ずつ近づいてきますが、ただ方向はタイチから隊長へと変わりました。
(そうだ…まるでゲームのように…彼の目には、私たちはただのおもちゃにすぎないのかもしれない…)
その後、隊長はこの行動が意味を持たないことに気づき、位置を変えて再び身を隠しました。
「早く行って、賢者…」
その時、タイチの通信機から隊長の命令が届きました。声は小さかったが、その中に覚悟が感じられました。
「でも…隊長は…」
タイチの声を聞いた隊長はすぐに答えず、一息ついてからゆっくりと話しました。
「お前は撤退し、ここで見たことを報告しろ」
「やめてください、僕はここで戦いたいんです」
「仕方ない…私たちの力だけでは…」
「お前が死んでしまえば、ここで起きたことを誰もわからなくなる」
「相手の目標は当分私だ、お前はこっそりここから離れろ」
「状況を報告してくれれば、組織も事態の深刻さを理解するだろう」
「でも…」
「これは隊長の命令だ…多分は最後の命令だろう…」
同時に、タイチから離れた場所で銃声が響きました。
「行け、早く行け!賢者!」
タイチはその命令を聞いて驚いて目を覚ました、ソファーからゆっくりと身を起こし、服がびしょぬれであることに気づきました。
窓の外を見て初めて、もう朝になっていることに気づきました。
(ソファーで一晩眠っていたのか…)
「隊長…」
目を手で触れてみると、湿った感触がしました。
(こんなに時間が経っても、僕はまだ…)
タイチは手で目を覆い、涙が止まらない。
(悲しいな…)




