第454話 ペギエル様復活
「奴め、月なぞ壊さなくても直接惑星を破壊出来るくせに、回りくどい事をしようとするなど、なんていう性格の悪さだ!」
ラビエルが憤慨しています。
「そうですね。ナイアルラトテップっていうのは最悪の邪神ですね!」
「いや……それは我が輩もなのか?」
「ああっそうだった。そんな訳ありませんよ。ラビエル様は良い邪神です」
バハムートの不用意な一言が、ラビエルにクリーンヒットしたよ。
でも今は、じゃれあってる場合じゃありません。
「二人とも、ここからは全力で、全てを出し切って戦うよ!」
「「おおっ!」」
「ならば妾は援護に徹するとしよう。こういう時のために、秘密兵器を持ってきたのだからな」
そう言うとポチャリーヌは、足早に国境門に向かうのでした。
秘密兵器って……まさかさっきの攻撃は、ポチャリーヌがやったものなの?
何かを飛ばす武器って、レールガンしかないよね。あれを博物館から持ってきたっていうの? よく借りれたな。っていうか、よく使えたな。
「ポチャリーヌも退避したな。まず我が輩が突っ込むのだ! あとはバハムートが続け!」
「分かりました!」
ラビエルが駆け出し、バハムートがその後ろを付いて行きました。
勝算があるのか心配ですが、今は信じるしかないです。
「オラァ! 喰らうのだぁ!」
ラビエルが手の平の上に魔力を集めた球を作り、それを思い切り投げつけました!
しかも、相当な魔力を込められているようです。
『今さらそんな攻撃か?』
邪神ナイアは、飛んで来た魔力弾を片手で弾いた。
やっぱり、あの程度の攻撃じゃ通用しないか。
そう思った瞬間、魔力弾が爆発した!
邪神ナイアの近くでの爆発だったので、巨体が爆発に巻き込まれて飛ばされてしまいました。
もの凄い爆風と熱風で、周りの地面や森が消し飛んでしまったのです。
これは以前、ショゴスを海の上でやっつけた時と同じぐらいの爆発です。
ラビエルが咄嗟に張ったバリヤーで、あたしとバハムートは守られましたが、王都の方は大丈夫なんでしょうか?
分身ナイアがいなくなったので、バリヤーが消えているはずだよねぇ。こんな戦術核なみの爆発では、街にも被害が出ますよ。
煙と土埃で周りが見えなかったけど、風に吹かれて視界が開けて来ました。
上を見上げると、大量の煙がキノコ雲になっています。
「あっ! 街は大丈夫なの?」
慌てて振り返って王都の方を見てみれば、街は何事も無くそこにありました。
誰かが防いだのでしょうか?
で……その誰かは国境門の前にいました。
「あれって、黒いフレスベルクだよね?」
「そうだね。黒いフレスベルクといえば……」
暴虐のミスラと呼ばれた巨鳥の魔物、ペギエル様の前世の姿です。
つまりあれは、フレスベルクに変身してるペギエル様なわけです。
「もしかして、分身のナイアが消えたから、色々な結界も消えて使徒様が動けるようになったのでは」
「なるほど! さすがムート君」
「ムートさんの言う通りですが、私の方を見てるひまはありませんよ」
ああ、やっぱりペギエル様だ。
行方不明だったけど、無事なようで安心しました。
「おお、無事なのでしたかペギエル様」
ラビエルも気付いて声を掛けました。
「あなた達と別れてから空中神殿に戻ろうとした時に、ディアナ様との繋がりを妨害されて、ついさっきまで倒れていたのですよ。でも繋がりが回復したので、ナナミィさんのいる場所まで転移して来たのです。それであの4本足の魔物は何なのですか?」
ペギエル様ってば、相手の正体も知らずにバリヤーで街を守ってくれたんですね。
しかも、フレスベルクの姿になって。
「あれはギルマスのナイアの本体の邪神ですよ。ナイアは邪神の分身でしたが、さっき本体に消されてしまいました。そのおかげで結界が消えたのかと。ちなみに、ナイアルラトテップ一族だとか」
「さらに、ラビエル様の姉?にあたるとか」
あたしとバハムートの説明に、頭を押さえるペギエル様です。
「ラビエルさん……」
「いやいやいや! 一族って言っても、ほとんど付き合いも無かった奴ですぞ。こいつがトリエステに居たのも知らなかったのですし!」
ラビエルが全力で否定しています。
いつもの使徒のウサギ姿で言うと、言い訳がましく見えるのですが、大きな邪神姿で言うと本当に見えるのが不思議ですよ。
まあ、本当なんだろうけどね。
「……まあ、いいでしょう。それで、あれを倒せるのですか? 魔力値がとんでもない事になっていますが」
「大丈夫ですぞ。七美ならきっと倒してくれましょうぞ!」
「ずいぶん他力本願な事を言ってるけど……確かに、私達が居たところで、邪魔にしかならないでしょうね」
ペギエル様もそれ認めちゃう?
あたしだけで倒せるって、買い被りすぎですよ。
「それなら私はここでバリヤーを張って王都を守りましょう。後はナナミィさんに任せます」
「僕とラビエル様はバックアップに徹しましょう!」
「うむ、そうであるな!」
バハムートとラビエルにも頼まれたよ。
その時腕のブレスレットに着信があった。
『妾も影ながら応援するぞ。ちなみに、さっきの魔力弾の爆発は、超電磁誘導砲で撃ってやったからだ』
「あんたのせいか~~い!」
こっちまで吹っ飛びそうになったんだからね!
「ほう? アレを持ち出したのですか?」
と、ペギエル様。
いつの間にかあたしの横に来てた。
『事態が事態なので、しょうがなかったのですわ』
ポチャリーヌめ、お嬢様口調で誤魔化そうとしてるな。
「その事は後で、じっくりと聞かせてもらいましょうか」
『ブチッ』
あ。通信を切ったな。
「しょうがないですねぇ。それでナナミィさん、ここは私が守りますので、思いっきりおやりなさい」
「は、はい!」
ペギエル様はあたしに言ったあと、再び国境門の前まで戻って行かれました。
ちょっと心臓に悪かったぞ。
ペギエル様が下がると、ラビエルとバハムートがあたしの両隣に並びました。
「いくら魔力値が45万もあったとて、あの巨体の維持と防御にかなりの魔力を使っているはずだ。しかも今なら体の修復にも魔力を使っていて、攻撃に回せる魔力は少ないぞ!」
「そうですね、ならば奴が回復する前に……」
しかし、バハムートは最後までしゃべる事は出来ませんでした。
突然何かが飛んで来て、両隣の二人を弾き飛ばしてしまったからです。
飛んで来た何かは、大きな腕でした。
いや、飛んで来たのじゃなくて、伸びて来たと言った方がいいでしょう。むろん、攻撃したのは邪神ナイアです。
つまり、邪神ナイアが腕を伸ばして、ラビエルとバハムートを殴り飛ばしたわけです。
急いで振り返ると、二人はペギエル様のいる場所まで飛んで行って、地面を転がっているところでした。
攻撃に魔力を使うとか以前に、力技でやってくれたわけですよ。
『よそ見をしていていいのか?』
頭の上から邪神ナイアの声がした。
あたしは嫌な魔力を感じて、すぐにその場を飛びのきました。その直後に、さっきまでいた場所が円形に陥没しました!
これは重力攻撃です。
しかも、最初の攻撃より威力が増して、穴が深くなってる。穴の底が見ません。
『さあさあ、反撃しないとお仲間や王都が消えて無くなるぞ。このようにな』
邪神ナイアが手をかざすと、ラビエル達が倒れている地面が盛り上がって来た。
その範囲は直径300mほどで、土砂が噴き出すように飛び出しました。
これは逆に重力を掛けたの? 反重力か?
「うわっ!なんだぁ!」
「地面が爆発した?」
地面の異常に慌てるも、立つ事も出来ずに巻き込まれてしまった。
ラビエルとバハムートは土砂と一緒に飛ばされてしまい、ペギエル様の所に土砂と共に降り注ぐことになったのです。
ドタドタと落ちてくる土砂に、ペギエル様は大きな翼で口元を隠して煙たそうにしています。
もともと怖い顔が、もっと怖くなってるよ。
フレスベルクの大きな足のつめで、ひっくり返ってるラビエルの頭をつかんでポイッと投げてしまいました。
ああっ……気持ちは分かるけど、もう少し手加減してあげて。




