第452話 古代兵器、起動!
すでにボロボロだった邪神ナイアが、正体不明の攻撃を受けてダウンしてしまいました。
胸の真ん中、ちょうど二つの胸の膨らみの間を撃ち抜いたのです。
「なに、今の?」
「分からない。僕の目でも追いきれない程の速さで、何かが飛んで来たみたいだよ」
さっきのアレは、バハムートの目でも見る事が出来なかったみたいです。あたしも何かがしゅんっと、飛んで来たようにしか見えませんでした。
どうやら発射されたのは、王都の中からのようです。
いったい、何が起こってるの?
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邪神ナイアが攻撃を受ける少し前。
王都のサイレグ博物館では、ポチャリーヌが有能ぶりを発揮していた。
「しかしアレは、使うどころか研究さえ禁止されているのですよ?」
「女神様の討伐隊のメンバーである妾が良いと言っておるのだ。それに今度の事は、エルドランテ王国だけじゃなく、この世界の危機でもあるのだぞ。アレを使わずして、ラビエルやバハムートでさえ敵わない相手に、どうやって勝つというのか」
「い……いえ。しかし……」
「お主らもアレが動いている所を見たいだろう?」
その一言で決まるのだった。
研究者ならば、稼働している場面を見たいと思うのものだ。
「さすがですわポチャリーヌ様」
「だてに女王をやってはおらんからな」
シエステに褒められて、まんざらでも無いポチャリーヌだ。
そうして博物館の奥から出されたのは、封印されし古代兵器の超電磁誘導砲。
かつて存在した、サマルタント洞窟遺跡から回収された物だ。千年以上前に作られた超兵器である。
「出せはしましたけど、どうやって使うのか分かりません」
博物館の学芸員が、なさけなさそうに言った。
「それは大丈夫だ、前の世界にも同じような物はあったからな。まずは起動させなくては」
ポチャリーヌは超電磁誘導砲のコントロールパネルを探したが、どこにも見当たらなかった。一通り探した後、ある事を思い出した。
「そう言えばレーザー砲には、外付けのオペレーションシステムがあったな。こいつも同じか? しまったな、もっとよく調べてみればよかった」
そう言いつつ、超電磁誘導砲のあちこちを調べるポチャリーヌ。
「おや? これか?」
そこで見付けたのは、横にはまっていた丸い板状の物だった。
裏側にあった突起部分に魔力を流すと、表側のスクリーンが明るくなったのだ。
「おっ、これで起動したな。あとは発射プログラムを探して……」
『はじめまして、超電磁誘導砲のオペレーションシステムの『マグネ』です。各種設定やナビゲーションを担当します』
画面に現れたのは、光子収束砲のOSの『レイ』と同様の、可愛い動物キャラクターだった。しかもこちらは女の子だ。
『ユーザーの設定が必要ですが、あなたは有資格者でしょうか? このシステムの使用には女神様の許可が必要になります』
「やはりそうきたか。妾は女神様の討伐隊のメンバーだ。これが証明になるだろう」
と言ってポチャリーヌは、腕のブレスレットを見せた。
この中には女神ディアナの魔力が封じられているのである。
『その腕輪を、タブレットのスイッチに近づけてください。情報を読み取ります』
ポチャリーヌは言われるままにタブレットにブレスレットを近付けた。
待つ事10秒余り。
『あなたは女神様の代理人と確認しました。操作権限を認めます』
「うむ、よろしく頼む。それでさっそくだが、発射方法を教えてくれんか」
『標的に向かって砲口を向けてください。そしてタブレットの画面で標的を指定すれば、後は自動で調整・発射します」
「なんと! 光子収束砲の『レイ』より簡単ではないか」
『はい。私の方が新しいシステムですので、時代遅れのレイには負けません』
そう言って、にっこりと微笑むマグネ。
たかがOSなのに、ライバル心むき出しのマグネを見て、力なく笑うポチャリーヌだった。
「ナナミィなら可愛いとか言い出しそうだな。まあいい。それで、弾丸が見当たらないのだが、どこにあるのだ? 無ければ制作は可能なのか?」
『それは心配ありません。弾丸は砲身上部のカートリッジの中にあります。現在5発の弾丸がセットされています』
「おおっ、それは重畳。すぐに発射態勢に入ってくれ」
そしてポチャリーヌは、超電磁誘導砲の設置場所を探した。
国境門の外まで弾丸を飛ばさなくてはならないので、出来るだけ高い場所が望ましいのだ。
「やはり一番高い場所といえば、王宮のタワーであるな」
「そうですが……どうやってあそこまで運ぶのですの?」
「問題無い。妾の収納空間に入れて行くからな」
そう言うとポチャリーヌは、自分のブレスレットの収納空間に超電磁誘導砲を入れた。そして背中に飛行魔法の羽を付けて、タワーに向けて飛んで行ったのだ。
博物館の屋根を越える高さまで上昇すると、国境門の様子が見えるようになった。
身長50mもあると、王都の中心地からもよく見えた。
「あれか。ナイアの本体などと言っておったが、やはり邪神であったか。だがあの図体なら狙いやすいな」
ポチャリーヌは収納空間から超電磁誘導砲とタブレットを出した。
「あそこに見える巨大な魔物がターゲットだ」
『では、タブレットの画面の中央に標的を入れてください。着弾ポイントの微調整は可能です。発射は自動で行いますが、手動でも可能です』
「それなら手動でやろう」
『了解しました。次は魔力をチャージしてください』
ポチャリーヌは超電磁誘導砲の魔力供給装置に触れて、魔力を流した。
こちらは光子収束砲と違い、消費魔力が少ない分、供給装置は簡易な物であった。
「こんな事なら、ケットシー三姉妹も連れて来ればよかったかな。ほら、これでいいか?」
『はい。十分に充填されました。では照準を合わせた後に、トリガーを渡します』
「うむ、こうか? もうちょっと画像を拡大してくれ。よし、ここだ!」
画面には邪神ナイアの上半身が映っており、十字のカーソルを胸の真ん中に合わせた。すると、ただちに距離と角度が計算されて発射準備が完了した。
「発射だ!」
ポチャリーヌは画面の発射ボタンを指で叩いた。
充填された魔力は電力に変換し磁界を発生させ、弾丸はローレンツ力により前方に弾き出された。
ボシュン!という音と共に、弾丸がマッハ7という極超音速で飛んで行ったのだ。
弾丸は数秒後には、邪神ナイアの胸を貫いた。
「命中だ。だが奴が一発で倒れたおかげで、ナナミィが射線に入ってしまった。どうせあれしきでは死なないであろうから、後は現場に持って行って使うか」
そう言うとポチャリーヌは、再び超電磁誘導砲を収納空間に入れた。そして飛行魔法で国境門に向かって飛び立った。
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どこからともなく飛んで来た何かによって、邪神ナイアは倒されてしまいました。
いや、まだ死んではいないんだけどね。
あたしどころかバハムートの目でも正体の分からない攻撃は、敵か味方か?
『まいったな、攻撃がまったく見えなかった。王宮のタワーから打ち出されたようだが、今は居なくなっているな』
むくりと起き上がった邪神ナイアは、胸を撫でながら言いました。
よく見たら、胸の傷が無くなってる。腕や足がそのままなので、胸の傷の方がダメージが大きかったんだ。
あれでどのくらいの魔力が減ったんだろうか?
少しは弱体化してるといいな……。




