第218話 エンシェントドラゴン
サマルタント洞窟遺跡にやって来た大きな魔力の主は、古代竜・エンシェントドラゴンでした。
しかも、遺跡に関わった者を抹殺なんて言ってるし。
どういう事?
「オリスと言うのは、ジャハ・オリスの事だな? お主は彼とはどのような関係なのだ?」
そう聞いたポチャリーヌの声には、緊迫したイントネーションが混じっていた。
『今から殺されるお前らに話しても無駄な事だが、知らないままでは哀れだな。いいだろう、冥土の土産に教えてやろう』
言う事がいちいち怖いな。
それに、殺す事は決定事項なんだ。
だからって、素直に殺されてやるなんて事はないけどね!
あたしら討伐隊は、邪神すら倒したんだ!
『我が名はダンテ。我は今より1500年前に、オリスと従魔の契約を結んでいたのだ。そして500年あまり経ち、オリスが身罷る時に、我に一つの願いを託したのだ。それはオリス達が作った魔導兵器を壊す事と、その兵器を使おとする者を殺す事だ。ここにあった魔導兵器が無いという事は、お前らが持ち出したのだろうて』
と、一気にしゃべるエンシェントドラゴンのダンテ。
従魔契約って、魔物が人間に仕えるって契約ですよね? 古代竜が従魔って、オリスさんの作る料理に目がくらんだのかな?
……そんなわけないか。
「500年も生きていたのか、そのオリスとやらは?」
「ああ、ジャハ・オリスはエルフなんですよ」
「おお、なるほど。だからあんなに高性能な魔道具が作れた訳だな」
ポチャリーヌと気が付いたタイラントさんが話しているけど、今そこにある危機は無視ですか?
『さて、もういいか?』
「ちょっと待ってもらえますか? 兵器が使えなくなれば、壊さなくてもいいんじゃないですか?」
さすがに元竜王のムート君だ、ダンテに意見してるよ。
『どういう事だ?』
「あの古代兵器は、王都の博物館の地下に封印されている。女神様の言い付けで、古代兵器は研究すら禁止されているので、もう誰も使う事はできません」
『すでに使われたのではないのか?』
「そんな事は……」
「あれって全然役に立たなかったですよ~」
「え?」
いつの間にか、ムート君の足元にリリエルちゃんがいました。
「女神様の神殿が、あの程度の攻撃に壊されるワケないのですぅ!」
『ほう、すでに使われたのだな?』
リリエルちゃんの余計な一言で、古代兵器を使ったのがバレた!
『まずはここの洞窟の破壊と、お前らの抹殺だな。そして王都にある兵器の始末だ』
しかも、余計にまずい事態になったよ!
これじゃ博物館ごと壊されちゃう!
イヤそれどころか、王都に甚大な被害が出かねないよ!
なんとかここで止めないと。
……それに。
「ダメよ、ここにはたくさんの魔獣や魔物が住んでるのよ! 関係無い彼らまで巻き込まないで!」
あたしはダンテに抗議してみました。
こういう頭が固そうな相手には意味が無いだろうけど、言わないよりはましでしょう。
『兵器を封印したと言っても、使おうとする者は必ず現れるからな。それにこの洞窟も残してはおけぬ』
「そんな酷い!」
『ささやかな犠牲だ』
ダメだ、話が通じない。
言葉が通じるのに、話が通じないとは厄介な。
これはなんとかしないと。タケゾー達が殺されちゃう。
『我も鬼では無い、少し待ってやるから、逃げられるだけ逃げてみよ』
ヒドイ!
鬼じゃなかったら悪魔だ!
待つって言っても、どうせ1分ぐらいしか待たないんだよ。
時間切れだーって言って、みんな殺しちゃうんだよ。
「ナナミィちゃん、ここで倒そう。僕はバハムートになるけど、君はそのままの方がいい」
「そうだな、お主は人間になっても着替えるひまが無いであろう?」
「確かに」
ムート君とポチャリーヌが前世の姿になって、エンシェントドラゴンの討伐です。
討伐隊の任務じゃないけど、これは無視出来ません。
「そうだ! ペギエル様には後で言っておくから、我らで倒そうぞ!」
「そうですぅ! こんな奴はやっつけるのですぅ!」
使徒組もやる気だ。
「ラビエルはスピネルやタイラント達を、安全な場所まで連れて行ってやれ」
「うむ、分かったのだ」
ラビエルはスピネルさん達を、リリエルちゃんはアースドラゴンとタケゾーを連れて転移魔法で脱出しました。
これで心置きなく戦えます。
「「リゲイル!」」
二人は叫ぶと、変身が始まりました。
ムート君は体が一瞬で大きくなり、翼が広がりバハムートに変身。
ポチャリーヌは子供服と大人用の服がさっと入れ替わり、グラマーな魔王姿になりました。
バハムートは地面を蹴ってダンテに襲い掛かりました!
『ぬおっ! ドラゴンに変身しただと?』
バハムートは魔力を手に集めて、魔力弾にしてダンテに叩きつけました。
バハムートの方が体が小さいので、下からぶちかますようにして。
しかも連続で発射した魔力弾が、ダンテの体を上に吹っ飛ばしています。
スゴイ!
ポチャリーヌも指から魔力光を発射して、ダンテの体を焼いていた。さらにバハムートは炎の塊のドラゴンブレス、火炎弾を打ち出した。
火炎弾は大爆発を起こして、ダンテをさらにぶっ飛ばしてしまいました。
『ぐっ! なかなかやるな。ここは狭い、外に出るがよい』
そう言うとダンテは、縦坑を上昇して行きました。
負け惜しみだ。
でも、バハムートのあの攻撃を喰らって平気だなんて、EXランクもだてじゃないな。
バハムートとポチャリーヌは、ダンテを追って縦坑を上がって行きました。
あたしも慌てて後を追ったよ。
地上の扉を抜けると、バハムートとポチャリーヌが空を見上げていた。
その視線の先には、空中に浮かぶダンテが……
『不思議なものだな、姿が変わり魔力が大きく上がったぞ。だがそれでも、我には勝てないだろうがな』
ダンテが偉そうにしゃべっていた。
『そこの小さなドラゴンは弱いままか』
余計なお世話だよ!
あたしは可愛いのがウリなんだよ!
「フン。ナナミィを舐めておると酷い目に遭うぞ」
「そうだそうだ!」
「もっと言ってやって!」
「訳の分からない事を言って、周りを困惑させるのだからな」
「そうだそうだ」
「ちょっとマテ。それは褒めてないぞ」
ポチャリーヌの奴に酷い事言われた!
あたしがまるで、雑魚キャラみたいな言い方だよ。
まあ、確かに~、あたしの前世の世界でしか通用しない事を言いますけどね~。
こんな所で言わなくてもいいじゃないの~。
『現代のドラゴンは、すっかり腑抜けておるの。街に住むようになって、雑魚に成り下がったようだ』
このドラゴンってば、あたしに対してマウントを取ってくるけど、余計な事を言うのがEXランクなんか?
雑魚雑魚って、雑魚に失礼だろ?
って! それはあたしかっ!
あたしが雑魚ってか?
「これで奴は、ナナミィを単なるオマケと侮って、警戒しないだろう。それにナナミィは良い具合に腹を立てておるから、対消滅の力が使えるだろう」
ポチャリーヌがムート君とあたしに、小さな声で言いました。
なんと、そんな深謀遠慮な感じだったのか。さすが元魔王だ。
「妾が奴をバリヤーに閉じ込めるので、ナナミィが反物質のボールをぶつけてやれ。それまでバハムートはブレスで攻撃して時間稼ぎだ」
「「分かった!」」
方針が決まりました。
これなら、EXランクのエンシェントドラゴンでも倒せるぞ。
『さて、もうおしゃべりは終わりだな。消えるがよい』
そう言ったダンテの口の中に、光が充満して行きました。
あ、ヤバい。
あのブレスは、あかんやつだ。
ポチャリーヌは、慌ててバリヤーを張ったけど、間にあって!
あっという間に、光に包まれてしまった。
これはダンテのドラゴンブレスなのか?
お腹に響くような振動が伝わって来ました。
ポチャリーヌのバリヤーのおかげで、爆発音が小さくなっているはずなのに、大きな音が聞こえて来ます。
足元からも振動が……
ブレスの光がおさまると、周りの状況が分かりました。
足元から地面が無くなっていた。
それだけじゃない、少し離れた場所に見えていた山もありません。
「クソ……まさか山ごと洞窟遺跡を吹き飛ばすとは……な」
ポチャリーヌが忌々しそうに言った。
「え? 山ごと?」
下を見れば、巨大なクレーターが出来ていたよ!
しかも表面がドロドロに溶けていて、まるで溶岩のようだ。
「あそこにはまだ、調べていない場所もあったのだがな」
ポチャリーヌが残念そうに言うけど、そんな場合じゃないよ。
『ほう? あれを耐えるのか?』
ダンテが愉快そうに言ってるよ。
これは早く逃げねば死ぬヤツですよ。




