第219話 王都防衛
サマルタント洞窟遺跡は、標高400mぐらいの山の中腹にあったけど、今は山ごと消し飛んでしまいました。
それをやったのは、エンシェントドラゴンのダンテ。以前バハムートがブレスで岩山をぶっ飛ばしたけど、それの比ではありません。
そんな事より、あたしが気になるのは……
「あの山には、いったいどれぐらいの生き物がいたんだろう?」
「そうさの、魔物や魔獣に普通の動物など、ざっと見積もって1500という所だろうな。これに昆虫まで含めたら、数万匹ぐらいにはなるだろうて」
やはり、それぐらいいたようだ。
さっきのブレスで、それ程の多くの生き物が殺されたんだ。
あたしも人の事をとやかく言えないけど、いくら何でもこれは酷すぎる。
「ちょっとあんた! なんてヒドイ事してんのよ! この山にはたくさんの生き物が暮らしていたのよ!」
あたしは文句を言ってやるのだった。
どうせコイツは聞きゃしないだろうけど、あたしの気が済まないからね。
『ここにあった技術を悪用されたら、破壊されるのは山一つでは済まぬぞ。世界を守る為になら、安い犠牲だ』
ダンテは事も無げに言った。
なんだそれ?
安い犠牲って、そんなに簡単に言っちゃうの?
『フン、女神のしもべがその様な事も理解出来ぬとは、今の女神にはまともな部下はいないのか? 先代の女神に比べて、今の女神は無能なようだな』
女神様を無能呼ばわりとは、なんという不敬!
コイツは絶対許せない!
「ポチャリーヌ、やっておしまい!」
「何を言っておる、今の妾には無理だぞ」
「いや、そうでもないよ。さっきのブレスで、かなり魔力を使ったみたいだから、今は魔力がかなり減っているはず」
ああ、確かに。あんな無茶なブレスを使えば、魔力を大量消費するよね。
今なら、Sランク並みのパワーしか出せないはずよ。
「じゃあ、あたし達全員でかかれば、勝てるというわけね! 今なら例の力も使えそうだよ!」
「ほう、それならここでケリを付けるか?」
ポチャリーヌもやる気だ。
一斉攻撃だ。
『そこに気付いたか。だがお前らと遊ぶのはここまでだ。今の魔力でも負けはせんだろうが、先に済まさねばならん用もあるからな』
そう言ってダンテは、大きく羽ばたいて高度を上げて行きました。
『我はこれから王都に向かう、続きがしたければ来るがよい』
そして向きを変えると、王都の方角に飛んで行きました。
あんなに大きな体なのに、そのスピードはジェット機なみだ!
ドーーンと加速して行ったよ。
「クソッ! 奴め、まだ魔力に余裕があったんだな?」
ポチャリーヌは忌々しそうに言った。
「いや、どうだろう、魔力はかなり使ったはずだよ。たぶん、ここから移動する為に、けっこう残していたみたいだ」
「成る程な、あれでも全力じゃなかったのか」
「え? そんな事より、アレ追わなくていいの?」
ムート君とポチャリーヌがのんびりしてるので、あたしは心配になってしまいます。
だって、もう見えなくなってるよ。
今から追っても、追いつかないかも?
「正直に飛んで行く事はないだろ。こちらには転移魔法があるではないか」
「あ、そうか。じゃあラビエルを呼ばなきゃ。ラー……」
「呼ばれて飛び出てなのだ~」
あたしが呼び出すよりも早く、ラビエルがポンっと現れました。
「おおっ、早かったじゃない。……あれ? リリエルちゃんは?」
「リリエルなら、アースドラゴン達や他の魔獣を、安全な場所に連れて行ってるのだ」
ラビエルに話を聞けば、洞窟内にいたケイブイールやロックイーターたちも逃したそうです。
「それに、あんなに大きな魔力を持ったエンシェントドラゴンが近付けば、山に住む動物や魔物達も事前に逃げ出しただろうな。なので、七美が気に病む事はないぞ」
「そうか……、それならよかったよ」
それを聞いて安心しました。
「……ラビエルの奴め余計な事を教えよって、ナナミィの怒りが解けてしまったではないか……」
ポチャリーヌがボソッと言った。
「ああそうか、あたしが怒らないと、例の力は使えないんだった」
「しょうがないよ、ナナミィちゃんは笑っている方が可愛いし……。あ、いや、急いで王都に行きましょう!」
ムート君がどさくさにまぎれて、あたしを口説きに来た?
「七美が可愛いのに異論は無いな。では行くぞ!」
ラビエルがそう言うと、周りの風景が変わりました。
到着したのは、サイレグ博物館の前です。
ダンテより先に王都に到着しました。
当たり前ですが、ダンテが超音速で飛んでも、転移魔法にはかないません。何と言っても、移動時間がほぼゼロなんですからね。
「奴を迎え撃つには、こんな街中ではまずいんじゃないのか?」
「そうだな、ここじゃ被害が大きくなるな」
「あ、じゃあこの前ドラゴン達を避難させた、郊外の広場がいいんじゃないの?」
「おお! 七美の言う通りだな。それに王都の警備隊にも教えておこう」
「では僕達は先に行って来ます」
「うむ、早く行った方が良いな。周りが少々騒がしくなって来たしな」
そうなのです。ポチャリーヌが言う通り、博物館の前にでっかいバハムートが現れたので、たくさん人が集まってしまいました。
このままだと、警備隊に通報されてしまいそうです。
ラビエルには、早く知らせに行ってもらわなくては。
さて、あたしも急ぐかな。やはり人間の姿になった方がいいだろうか?
なんて考えていたら、バハムートに掴まれて抱えられてしまったよ!
横を見たら、ポチャリーヌも抱えられていました。
「ななな、なにやってんのムート君」
「この方が速く移動出来るんでね」
と言うやいなや、バハムートは空中に飛び上がって、一気に加速して行きました。
うわ~~~! 速い速い!
はや~~~~~~い!
着いた。
王都より10kmぐらい離れた場所だけど、バハムートが本気で飛んだら、あっという間に着いたよ。
「ちょっと待って、こんなに速く飛べるなら、さっき追いつけたんじゃないの?」
「いや、今の僕じゃ長い時間の高速飛行は無理なんだよ」
「ああ、そうなんだ」
「面目無い……」
バハムートは申し訳なさそうにして、頭を掻いていました。
「それより、ダンテは今どこらへんだろう?」
「う〜〜む……さすがに妾でも分からんな。お主はどうだ?」
「ダンテに悪意が無いのか、ぼんやりとしか分からないよ」
「こう言う時の為に、人工衛星があれば空の上から探せるのだがな。とは言え、この世界の技術では、衛星軌道に物体を投入出来んだろうしな……」
ポチャリーヌが難しい事を言ってるけど、ダンテの位置を調べる事が出来ないって事だよね。
「まあいい、奴がやって来る前に迎撃の準備だ」
「「おぉ〜〜!」」
あたし達3人は、迎え撃つための準備をするのでした。
「いやいや、準備ってナニするの?」
「ふむ、お主は人間の姿になっておいた方がいいな。変身して服を着るのに時間が掛かるだろ? 妾と違って」
あ、いまサラッと自慢したな?
そりゃあ、あんたみたいに一瞬で早着替え出来ませんよ〜〜だ。
ともかく魔法少女に変身だ!
「リゲイル!」
スポポ〜〜ンと、人間の女の子の姿になりました。むろん裸ですよ。
さて、何を着ようかな。
ゆっくり考えている時間は無いので、パパッと決めましょう。
今日はコレ、黒いゴスロリ服だ!
近頃はハンター風の衣装ばかりだったので、たまには可愛いドレスを着たいぞ。可愛いと言っても、戦いの邪魔になるような、ヒラヒラなレースやリボンなどは付いていませんがね。見た目よりも実用性重視なのです。
なので、急いでお着替え。
「来たっ!」
バハムートが叫びました。
「あぁ〜〜、ちょっと待って、まだ下着しか着ていな〜い!」
タイミングが悪いのよ!
あたしは大急ぎでドレスを着ました。
遠くに点のように見えていたものが、どんどん大きくなって来ました。
あれ? このままじゃ通過しちゃうんじゃないの?
「ここで止まってもらおうか」
ポチャリーヌが魔力弾を発射すると、ダンテに向かって一直線に飛んで行きました。
ダンテも魔法弾も凄い速度なので、相対速度はマッハを超えてるんじゃないだろうか? つまりダンテから見たら、魔法弾が超音速で迫って来るわけです。
『うおっ!』
ダンテは魔法弾に気付くと、体をよじってかわしてしまいました。
魔法弾はダンテの横を通過した直後に爆発した。
「チッ、かわしたか」
残念そうなポチャリーヌ。
でも、歯をむき出して笑ってるよ。
これはアレだ、お主やるな的なやつだ。
そして始まる、第二ラウンド。




