第217話 大物が現れた
「なんでナナミィは落ち込んでいるの?」
ミメットさんがあたしを見て、不思議そうにしていました。
あたしはガックリしています。
ウナギが獲れないから。
「ナナミィは、ケイブイールを食べたいんだってさ」
「えぇ? あれって、血に毒があるんじゃないですか?」
「そうよねぇ、何で食べようなんて思ったのか」
スピネルさんとミメットが呆れてあたしを見てるよ。
「うう……」
追加ダメージをもらって、さらにガックリ。
「まあまあ、そんなに落ち込むでない七美。川にはウナギと似た様な魚がいるし、今度みんなで捕まえに行こう」
ラビエルがあたしの尻尾を撫でて慰めてくれます。
「そうね、落ち込んでばかりじゃダメよね。まだ希望はある!」
「そうなのですぅ、ウナギが何だか知らないけど、希望は大事なのですぅ」
「だよね~~」
リリエルちゃんにも慰めてもらい、なんとか復活を果たしました。
ケイブイールの巣穴のある坑道を避けて、一行は別ルートで下の階層に下りました。
途中には横穴がいくつもあり、研究員さん達が調査していました。なのであたしやポチャリーヌはここで一休みです。
「ここには碌な魔道具は無いな。どれも朽ちておる」
と言ってポチャリーヌは、埋まっていた何かを持ち上げた。
それはボロボロと崩れてしまいました。
「これは掘削機の本体か? 案外小さいものだな」
「ああ~、岩を砕くのに使うヤツだね」
「あそこの棒が、ドリルとかのアタッチメントだな」
「ここは金属鉱山なんだ」
あたしとポチャリーヌが何気なく話していたら、研究員さんがメモをしてました。
「参考になります!」
「うむ、精進せいよ」
……まあ、役に立ったようで、なによりです。
ここで調査を始めて、30分ぐらい経ちました。
「もう飽きちゃったですぅ」
リリエルちゃんが退屈してた。
一緒に来てたアースドラゴンの二匹も寝ていますよ。タケゾーの奴は、研究員さんの発掘の手伝いをしてました。
「ここにはリストにあった魔道具は無いようです。次に行きますか」
発掘をしている研究員さん達と、護衛のスピネルさんを残して、他のメンバーは先に進む事になりました。
やって来た場所は、見覚えのある所でした。
あちこちの壁に大きな爪痕がある、地竜の住処だった場所です。つまりアースドラゴンの住処ですね。
この先には、古代の魔道具が大量に保管されていた、ドーム天井の部屋があります。マルスとアテナには、そこで出会ったのでした。
そして再びドーム天井の広場に来ました。
「ここはすでに、調べたのであろう?」
ここに初めて来たポチャリーヌは、興味津々で見回しながら言いました。
「そのようですね。私は初めて来たので、自分の目で調べてみたいと思います」
「うむ、妾も初めて来たので、一緒に見て回ろうぞ」
ポチャリーヌも調べてみるそうです。
何かあったら、コッソリ持ち帰るつもりだな?
……あたしも何かないか探してみようっと。
もしかしたら、この前タケゾーにもらった、ティアドロップ型の宝石みたいなのがあるかもしれないからね。あれは穴を掘ったら出て来た物だそうだから、他にも埋まっているかも?
なので、地面を掘ってみました。
こういう時は、ドラゴンの鉤爪は便利ですよ、ザクザク掘れて行きます。
出て来た物は、焼き物の欠片ぐらいでした。
それも、お椀やコップや皿などの破片ばかりです。固まって出て来たので、どうやらごみ捨て場みたいですね。
まあ……こういうのも貴重な遺物だろうから、このまま置いておきましょう。
ポチャリーヌも、新たな魔道具は発見出来ないみたいです。
そんなにウマイ話は無いって事ですよ。
そして、この緩んだ空気に油断しておりました。
大きな魔力が出現したからです。
それはバハムートやワイバーンを超える、EXランクはあろうかという程の魔力値なのです。
それが下に向かって移動して行きます。
まさか、例の縦坑から入って来たの?
だとしたら、レーザー砲が置いてあった部屋に辿り着くかも。
なんにしてもヤバい!
「ポチャリーヌまずいよ! EXランクはありそうな魔物が侵入して来た!」
「なな、なんだと?」
「この向こう側の、最下層に続いてる縦坑の所だよ!」
「あそこには、何も残っていないはずですが?」
タイラントさんも魔力は感じられないものの、あたしのただならぬ雰囲気に慌てています。っていうか、EXランクの魔物を倒すには、Sランクハンターが十人以上も必要なレベルなんですよ。
「ナナミィちゃん、巨大な力を持ったドラゴン種が近付いて来たよ!」
ムート君が急いでやって来ました。
ムート君は魔力を感知出来ないはずですが、同族の魔力は感じられるようです。
「まさか……エンシェントドラゴンなんでしょうか?」
タイラントさんが青い顔で言った。
エンシェントドラゴンと言えば、博物館に骨格標本が展示してあった、古代竜の事ですね。今でも生きていると噂されているそうだけど。
そんな、生きた化石が現れたというの?
「ワイバーンじゃないのか?」
「でも、千年生きているレオンだって、Sランクぐらいの魔力なんだよ」
レオンは千年も生きているワイバーンです。使徒フワエル様の恋人で、あたし達の仲間なんです。
「もし本当にエンシェントドラゴンなら、確認せねばならんな!」
「そうですね!」
あれ? なんかポチャリーヌとタイラントさんが、やる気なんですけど?
「なんでそう、テンションが高いの?」
「エンシェントドラゴンなど、珍しいだろうが。ムートがうまくやれば、仲間にする事も可能だろう」
「え? 僕ですか?」
「うむ、お主の出番だろうが」
「いや……どうだろう?」
ポチャリーヌのムチャ振りに、ムート君も困っているよ。
「そんな事より、そもそも魔物の正体も分かってないんだよ。まずは下に行って確認してみなくちゃ」
「そ……そうだよね」
またもやムート君は困っていたけど、あたしもそのドラゴンに会ってみたいぞ。
ここから最下層に行くには、以前の調査の時に開けた通路を使います。
鉱山跡を調べていた研究員さん達やアースドラゴンも合流したので、みんなで降りて行く事にしました。
最下層までは、長い下り坂になっています。
他の人達には分からないでしょうが、どんどん魔力が強くなってきて、相当なプレッシャーを感じます。
最下層に着いて、通路からそっと顔を出してみた。
縦坑を塞いでいた扉は開けたままになっているので、ここまで光が届いています。
その光がスポットライトのように、一頭の魔物を浮かび上がらせていたのです。
それは4本足のドラゴンでした。
4本足と言っても、アースドラゴンと違い、足が真下に伸びていました。
その姿は、まるで恐竜のようだった。竜脚類ってヤツ?
これぞまさしく、エンシェントドラゴンという姿です。
大きさも、全長20mぐらいありそうだ。バハムートよりもずっと大きいです。
顔もごっつい。
ドラゴンだからね。
背中の翼もでっかい。
ドラゴンだからね。
このドラゴンは、なぜこんな場所にやって来たんだろうか?
『契約に従い来てみれば、これはどうした事か?』
ドラゴンがしゃべった~~!
いや、ワイバーンだってしゃべれるんだから、不思議じゃないけど、こんな古代竜が話せるなんて、想像が出来なかったよ。
『む! 人間に魔物か? そこの小さいのはドラゴン族だな。どうやらお前らの仕業らしいな……』
そう言った途端に、エンシェントドラゴンの魔力がヤバい感じになった。
殺気が一気に増大したよ!
研究員さん達は普通の人なので、殺気のこもった魔力に当てられて気絶してしまいました。あたしも吹き飛ばされそうだ。
「何なのだお前は? なぜこんな事をするのだ?」
ラビエルがあたしの前に出て、エンシェントドラゴンを睨み付けました。
『うん? 今の女神の使徒か? なぜだと言うのか、ならば教えてやろう。我はオリスとの契約により、この遺跡に関わった者達を抹殺しに来たのだよ!』
とんでもない事になりました!
あたし、抹殺されちゃうの?




