第216話 お約束再び
「ちょっとナナミィ、魔物がいるよ!」
あたしの後ろにいたミメットさんが、両手に短剣をかまえて前に出て来ました。
「ハンターの前に出て来るなんて、迂闊な魔物ね!」
「なんですかいな、このお人は?」
「フン! 私はエルフにしてハンターよ!」
あ。まずい、事情を知らないミメットさんが、タケゾーを攻撃しようとしてるよ。
「待って待って、その子はあたしのお友達で、危険は無いのよ~!」
あたしは二人の間に割って入って、攻撃を止めようとしました。
しかし、間に合わず。
「これぐらいの魔物なら、私にだって倒せるんですよ」
ミメットさんは短剣で切り付けました。
その短剣が、止めようとしたあたしに当たってしまいました。
胸にグサリと……
「あっ、ゴメン! ナナミィ大丈夫?」
ミメットさんは慌てて短剣を引きました。
「あたた……大丈夫よ、これくらいの剣なら刺さったりしないから」
そうなのです、ドラゴンのウロコは頑丈で、短剣やナイフなど刺さったりしないのです。特にあたしは魔力が他のドラゴンより高いので、防御力の方も高くなっているのです。
「あ~~よかった~~」
ミメットさんは、あたしの体をペタペタ触って、無事を確認するのでした。
「なに? どうしたの?」
先に行っていたスピネルさんが戻って来ていました。
「いえ、ちょっとしたアクシデントです。それよりさっきの魔物はこの子でした」
「え? あら、確かタケゾーとか言ったかしら?」
「どうも~、お久しぶりです~」
知り合いの魔物と言う事で、一同ひと安心するのでした。
「彼が報告にあった魔物なんですね?」
タイラントさんが興味深そうにタケゾーを見てました。
「そうですよ、彼に洞窟の中を案内してもらったんです」
「それは素晴らしい! ならば、未調査の場所も教えてもらえそうですね!」
あたしの言葉に、タイラントさんは興奮していました。
「前に調査していないのは……魔晶石鉱山かなぁ?」
「そこは一応、調査をしたと聞いています。でも、我々には見つけられない場所が、まだあるのかもしれませんね」
「なるほど、じゃあ行ってみますか?」
「そこに行くならこっちじゃなくて、反対側の道になりまっせ」
と言ってタケゾーは、あたし達が来た道を指しました。
向こうは、コッソリと入って行ったルートだ。
「ではそちらに行ってみましょう」
タイラントさんの一言で、進路変更となりました。
クルリと回れ右で戻って来ました。
この通路は未調査区域でしたが、後に軽く調査された区域です。
それほど重要な施設は無かったのと、ドロイドがいるかもしれず、あまり深い場所まで調べられなかったそうです。
まだドロイドっているのかな?
タイヤが3つも4つも付いた、ロボットのような物でした。こちらじゃゴーレムって言われる物です。
「ドロイドとか言う、ゴーレムはもう出ないよね?」
ムート君が心配そうに、キョロキョロしていました。
「あ。ヤバい、そう言う発言はフラグになるよ」
「え? なに?」
その時、ウィ~~ンという音が近づいて来た。
まさかの、もう伏線回収なの?
「む! こいつがドロイドか?」
ポチャリーヌが警戒しながら言った。
「大丈夫なのだ、我が輩がぶっ壊してやるのだ!」
「ちょっとラビエル、こんな狭い場所で攻撃したら危ないよ」
目の前にいるのは、レーザーで攻撃する4輪の奴ですよ。
こちらから手を出さなければ大丈夫のはず。
「……向こうに行ってくれないかな……」
思わずポロっと言ってしまいました。
相手は機械で、こちらの言う事を聞くはずもないのにね。
すると、なんという事でしょう。
ドロイドが向きを変えて離れて行きました。そして壁の穴に入ると、フタが閉じてしまいました。
え? どういう事? この前は攻撃されたのに。
今日は言う事を聞いてくれたの?
「なんだか知らないけど、なんとかなったの?」
ミメットさんが恐る恐る聞いた。
「みたいですね……では行きましょうか」
タイラントさんは動じないようで、さっさと先頭に立って行ってしまいました。
「あ! ちょっと待って~。先に行かないで~」
スピネルさんが慌てて走って行きました。
っていうか、あたしも行かなくちゃです。
あ。ラビエルもだ。
しばらく坑道を歩くと、広い空間に出ました。
今まではきれいに整えられた坑道でしたが、ここは荒々しく削った跡がそこらじゅうに残っています。あちこちに出ている赤い石は、魔晶石と言う魔力を蓄えておける鉱石です。魔道具を動かすために使われる物で、いわゆる燃料タンクみたいな物ですね。それにこの鉱山には、魔晶石を食べるロックイーターと言う魔獣が住んでいて、今も壁の上を動き回っています。
タイラントさんはタケゾーと共に鉱山の見て回り、ポチャリーヌは小さなロックイーターをつついていました。
ロックイーターの子供は足をたたんで、丸い玉のようになっていた。
「ポチャリーヌ、あんまりその子達をいじめちゃダメよ」
「妾をあなどるでないぞ、ロックイーターの生態ぐらい把握しておるわ」
ポチャリーヌは自信満々に言いますが、そう言う時が一番危ないのです。
「それよりどうだ? 新しい発見はあったか?」
「う~~ん、特に無いみたいだけど」
「あ。ボールで遊んでるんですかぁ?」
あたしとポチャリーヌが話している所に、リリエルちゃんがやって来ました。
そしてとんでもない事に。
「え~~い! よく跳ぶですぅ」
リリエルちゃんが、ロックイーターの子供を蹴った。
いやそれ、ボールじゃないから。
リリエルちゃんはピューっと走って行って、サッカーのようにドリブルしてた。
「あぁ~~! リリエルちゃんやめてぇ~~!」
そんな事をしたら、怒った親が転がって来ちゃう~~!
お約束再びよぉ~~。
「きゃあ~~! 何か転がって来た~~!」
「あれは魔獣か?」
「まずい! 退避だぁ~~!」
ミメットさんや研究員さんは大慌て。
鉱山の奥から、大きなボールが二個転がって来ます。
相変わらず、某映画のシーンみたいだ!
解説終わり。
さっさと逃げます。
あたしは横のポチャリーヌを抱え、リリエルちゃんの尻尾を掴んで走って逃げます。
「ナナミィちゃん、上に逃げて!」
「あぁそうだった、あたし飛べたんだ!」
ヤバい、飛び上がる前にぶつかる。
でも、がんばる!
「オイ! 早く飛ばんと」
「わかったる!」
ぶつかる~~~!
と思ったら、何かが飛び出して来て、ロックイーターの前に立ちふさがったよ。
そしてドスンとぶつかって、ブンっと放り投げてしまった。ロックイーターは壁に激突して動きが止まりました。
「そらっ、子供は返してやるぞ」
ポチャリーヌがさっきの子供を、親の所に転がしてあげました。
親は足で子供をつかむと、鉱山の奥に帰って行きました。
「大丈夫かい? ナナミィ」
ロックイーターを止めたモノから声を掛けられました。
それは、アースドラゴンのマルスとアテナでした。
「マルス! アテナ! 久しぶり~~! 元気だった?」
「「会いたかった~」」
二匹はあたしの所に来ると、顔をすり寄せて来ました。
さすがにアースドラゴンの顔はでっかいので、押されて尻餅をついてしまった。なんといっても、アースドラゴンは5mぐらいありますからね。普通のドラゴンのあたしとは、体重が違いすぎて支えるのは無理。
「ま……まあ、元気そうでなにより」
「なんだい? また遺跡の調査かい?」
「それなら手伝うぞ」
「ありがとう、心強いよ!」
と言うわけで、アースドラゴン夫婦が、お手伝いしてくれる事になりました。
「あれ? 地竜が助けてくれたの?」
転がるロックイーターには勝てないと思ったのか、ミメットさんは岩かげに逃げていました。研究員さん達も逃していたので、ハンターとしてキッチリ仕事をしたわけです。
「これって報告にあったアースドラゴンですか?」
「本当に言葉が話せるんだ」
タイラントさん達は、アースドラゴンに興味津々でした。
仕切り直しです。
今回の調査にアースドラゴンは関係無いので、魔道具の調査を再開します。
「う〜〜ん、特に何も無かったですね……」
無かったのです。
鉱山跡にあるのは、採掘に使われていた道具ばかりです。魔道具もありましたが、魔力でドリルを回して岩を削る物でした。
量産品なのか、たくさん置いてありました。
放置してあるとも言いますが……
「この辺りには、隠された坑道とかはありませんか?」
「無いねぇ、あってもオイラ達が掘った穴ぐらいだよ」
「では、この先に行きましょうか」
と言うわけで、鉱山跡の調査を終えて先に進みます。
この先には、例のアレが住んでいるのです。
そう、あたしの一番の目的の、洞窟ウナギの住処がある所です。
今回はラビエルとポチャリーヌがいるので、一匹ぐらいなら倒す事は出来るでしょう。そして、夢のうな丼だあ〜〜!
「この先に進むと下の階層に行くけど、ケイブイールが居て危ないよ」
「じゃあ違うルートを通りますか」
マジかぁ〜〜〜〜〜〜っ!
「わかったる!」
決して誤字ではなく、「わかってる」と「わかった」をたして二で割ったのです。




