第214話 探検隊再結成?
「そう言えば、例のアレはここには置いてないよね?」
あたしはポチャリーヌに尋ねてみた。
例のアレと言えば、空中神殿を攻撃した時に使ったアレの事だ。
「アレか。アレはここより下の階に封印してあるそうだぞ。何と言っても危険な代物だからな」
「え~? レイ君は危険じゃないよ。可愛いよ」
「そっちか!」
サマルタント洞窟遺跡の最下層では、古代兵器レーザー砲が発見されました。その兵器をコントロールするOSがレイ君です。タマゴ型のコントローラーで、前世で見たゲーム機みたいです。
レイ君はとっても可愛いケモ耳キャラなんですよ。
あ~~~、また会いたいな~~~。
「今日の目的はカメラと受像機だからな、封印された兵器なぞ見せてもらえないぞ」
「だよねぇ~~……」
「そんな事より次に行くぞ」
あたしはポチャリーヌに手を引かれて行くのでした。
「これかな?」
あたしが手に取ったのは、取手の付いた円筒型でした。
「これはあれだ、筒から温風が出て来て髪を乾かす道具だな」
「ドライヤーか!」
まあ、髪の無いあたしには使えない物なのですがね。
「これは髪の毛のある人族用だな。獣人向きではないな」
と言ってポイッと捨てた。
「おっとっと」
研究員さんが慌ててキャッチしてた。
「お嬢様達は魔道具に詳しいですね。これは分かりますか?」
今の研究員さんが話し掛けてきました。
そして差し出したのは、なんか複雑な機械だった。分厚い円盤で、表側には時計の針みたいな物や、丸い部品がたくさん並んでいました。ナニコレ?
「う~ん、ここは回るのか? この針は時計かな? これはやはりアストロラビウムだな」
「それはどういう物です?」
「アストロラビウムとは天文時計の事だ。この丸い部品が、惑星の運行を表しているのだろう。ここは永久カレンダーかな? これほどの機能を魔力回路のみで成立させるなど、まさにオーバーテクノロジーの固まりだな」
「そんなに凄い物なのですか?」
「金貨2万枚ぐらいの価値はあるんじゃないか?」
金貨2万枚って言ったら、日本円では20億円ぐらいですよ!
そんなに高価なのコレ?
「今でも月の運行を表す時計はありますが、これはどんな時に使われていたんでしょう?」
研究員さんは時計を受け取りながら言いました。
「さあな、この世界じゃ装飾品ぐらいにしかならないんじゃないか?」
「うわ~、金貨2万枚の贅沢品だ」
あたしは呆れるばかりだけど、貴族にして元魔王のポチャリーヌには、特に変な事には思えないようです。
「お金持ちの感覚は理解出来ない」
「ねぇ~~~」
あたしとミメットさんは頷きあうのでした。
「それより、目的の物を探さねば」
ポチャリーヌは思い出したように言った。
「そう言えば、パソコンに魔道具のリストが入ってたね。あれを見れば探せるんじゃないの?」
「おおっ! そうであったな。そこのお前、パソコンを持って来るのだ」
ポチャリーヌが先ほどの研究員さんに言いました。
「パソコン……って何ですか?」
「ほら、三角形の台座の上に、長方形の板がくっ付いた物だよ」
研究員さんはあたしの説明を聞いて、しばし考えていました。
そして思い出したのか、部屋の奥に取りに行ってくれました。
「お目当の物は見付かりましたか?」
「まだだが、間もなく見つかるであろう」
と言ってポチャリーヌとあたしはウキウキした。
アドリアスやシエステとおしゃべりしながら待っていると、研究員さんが戻って来ました。手には例のパソコンを持って。
「これですか?」
「それそれ。ではさっそく起動だ」
あたしがスイッチに魔力を流して起動しました。
「そうやって動かすのですか!」
研究員さんは知らなかったのかな? めっちゃメモを取っているよ。
カメラや受像機の情報を探すために、ポチャリーヌが画面をスクロールさせています。それを研究員さんが、興味深そうに覗き込んでいました。
「これか?」
一つの名前をポチッとすると、新しいウインドウが開いて、カメラらしき物が。
「「見付けた!」」
あたしとポチャリーヌは、思わずハモるのでした。
それは確かにカメラだった。
四角い箱に、レンズが付いているのだから。
「後は受像機を探すだけか」
と言ってポチャリーヌは、再び画面をスクロールさせていました。
結果、それらしい物が見付かりましたが、3つもあった。
これは、3つとも調べてみないといけませんね。
「この4個の魔道具を借りられないだろうか?」
ポチャリーヌは、戻って来たエズモンド館長に聞いた。
「すみませんが、これらの物を館外に持ち出すのは禁じられておりまして、私の一存ではなんとも……」
「む、ダメか?」
「洞窟遺跡から出た遺物は、貴重かつ危険な物もあり、国の管理となっておりますので……」
そうですよねぇ、確か1100年前のオリス魔導研究所の遺跡だそうで、今じゃご法度の兵器がたくさんありましたからね。
そこから出た訳の分からない物を貸せと言われても、困ってしまうでしょう。
相手がいくら貴族でも!
ポチャリーヌはちらっとアドリアスの方を見ました。
アドリアスはポチャリーヌと目が合うと、彼女の意図を理解したようです。
「どうだろう、少しの間でもだめだろうか? それにこの国から出さなければいいのじゃないかな?」
アドリアスったら、ポチャリーヌのために説得してくれています。
「いやぁ……そう言われましても、国王陛下のご裁可が無ければ、博物館から出す事は出来ないのですよ」
王子にまでお願いされて、エズモンド館長も辛い立場だ。
「館長、よろしいのではないですか?」
と言って来たのは、先ほどの研究員さんです。
「このお嬢様は我々より魔道具に詳しいですし、例の場所の調査のお手伝いをお願いしてみては?」
そしてスピネルさんとミメットさんを見ました。
なぜにこの二人を? 調査の手伝いならポチャリーヌじゃないの?
「え? わたし?」
突然のご指名に戸惑うミメットさん。
「実はリストと洞窟で見付かった魔道具の数が合わなくて、まだ洞窟遺跡に残っている可能性があるのです。そこで再調査の為の護衛をハンターギルドに依頼しようと思っていたのですよ。なので、このお二人にお願い出来たらと思いまして」
「お主、妾と取引をしようと申すか」
ポチャリーヌは研究員さんをジロリと見た。
「ええ、新しく発掘された魔道具を調べるのに、外部の人に協力してもらうのは問題ないでしょうから。それが外国の貴族のお嬢様でも」
「面白い、その話乗った! その調査には妾も行くぞ!」
ポチャリーヌ、即決。
「「「「えぇっっ?」」」」
一同ビックリ。
「ナナミィだけ遺跡に行って、ずるいからな!」
そう言えば、洞窟遺跡探検の時に、ポチャリーヌを誘わなかったんだ。
しょうがないよね、貴族のお嬢様を探検に誘う訳にはいかないから。
「ええと……大丈夫なんですか?」
研究員さんが心配そうに、アドリアス王子に聞きました。王子様の友人という触れ込みですしね。
「ああ、ポチャリーヌ様なら大丈夫だよ。見た目と違い、凄く強いからね」
「そうですわね、そこらの魔物などには負けませんわ」
アドリアス達のポチャリーヌに対する評価が高いけど、元魔王って知っているからですね。
まあ、あそこの洞窟遺跡にいる魔物は、タケゾーとアースドラゴン夫婦なんですが。他にも洞窟ウナギとかいたなぁ。
まてまて、今度こそウナギを捕まえるチャンスじゃない?
「あたしも行く~~!」
「よ~~し、ナナミィも行くか。でもその前に、準備の為に家に戻るぞ!」
「えぇ~~?」
「そいつがハンターギルドに指名依頼を出してからじゃないと、スピネル達が行けないからな。それに我らも学校があるだろう?」
「ああそうか」
そうなのだ、学校を勝手に休む訳にはいかないのだ。
「ではハンターギルドに依頼を出しておきますね。ああそれと、僕はここで研究所主任をしております、タイラントという者です。どうぞお見知りおきを」
と言う訳で、アドリアスとシエステとはここでお別れです。あたしとポチャリーヌは、いったん帰宅となりました。
お家に帰るにもスピネルさん達の協力が必要なので、二人にはいっしょに来てもらい、次の土曜日に、再びエルドランテに行く事になりました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
エルドランテ王国の某所。
その男は世間の目を逃れる為に、地方の町の片隅にひっそりと隠れていた。
「リヒテル様、ターゲットに接触しました」
簡易通信機からは、かすれたような声がした。
「そうですか、それは重畳。怪しまれてはいませんか?」
「それは大丈夫です。あの子は呑気にしてますよ」
その男は、女神の神殿に攻撃を加えた、エルフのリヒテルだった。
あの事件の後、追及の手を掻い潜り、地方の小さな町に潜伏しているのである。
そして今は、協力者と連絡を取っていた。
「そのまま彼女の側に居て監視していて下さい。くれぐれも正体を悟られないように」
「分かっております」
「そして頃合いを見計らって始末して下さい。ああ、出来るだけ事故を装ってもらえるとありがたいです」
「今度洞窟遺跡に行くので、そこで決行しましょう」
「それはいいですねぇ。あそこならピッタリだ」
「では、朗報をお待ち下さい」
リヒテルは通信機のスイッチを切り、窓を開けて外を見た。
「これでトロナ様が女神に一歩近づくというものです。あのドラゴン娘さえ居なくなればいいのですから」
リヒテルは妄執に囚われていた、エルフから女神を誕生させるという。
それが彼の心を蝕んでいたのだ。
彼は知らなかった、例えナナミィが居なくなっても、トロナが女神にはならない事に……




