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第212話 エルドランテ王国へワープだ!

 あたしとポチャリーヌは、ハンターギルドの規則違反で懲罰をくらってるミメットさんに会いに来ました。

 なんでも、ポチャリーヌがミメットさんに用があるんだって。


 ギルドの建物に入って、受付のお姉さんにミメットさんの事を尋ねてみます。


「ああ彼女なら、2階で掃除をしてますよ」

 どうやらちゃんと奉仕活動をしてるようです。

 あたし達はお姉さんにお礼を言って、2階に上がりました。


「おおっ、ちゃんと着ておるな」

 ポチャリーヌが言ってる事が分からなかったけど、ミメットさんを見たら理由が分かった。

 彼女はメイド服を着ていました。

 しかも、ほうきを持って掃除している姿は、まさにメイドさん。


「なぜにメイド服?」

「うむ、奉仕と言えばメイドだろう? ミメットに我が家で使っているメイド服を着せたのだ」

「……まさか、あんたの趣味じゃあ?」

「む、そんなわけあるか、ギルマスの奴に頼まれたのだ」

「それって……ギルマスの趣味……とか?」

 この世界にもメイド萌えがあるのか?

 ……まあ、あたしもメイド服とか好きなんだけどね。


「あ~、二人共いらっしゃ~い」

 ミメットさんがあたし達に気付いて、ほうきを振っていました。

 エルフ・メイドも可愛いぞ。


「ちゃんと奉仕しておるな、結構結構」

「あんたは偉そうだな……」

「まあな」

 本当にイイ性格のお嬢様だ。


「今日は何かご用ですか? あ、それとも私に会いに来たとか~?」

 と言って、ミメットさんはクネクネしてた。

 ポチャリーヌは呆れていたけど、あたしは自分でもクネるので、親近感が湧くぞ。

「まあそうだが、今日はお主に依頼があるのだ」

「「へ?」」

 あたしとミメットさんは、揃って聞き返した。

「では、ギルマスの所に行くか」

 と言うわけで、3人揃ってギルマスの部屋へ。


 そこでポチャリーヌが、ギルマスの部屋の扉を開けて言い放った。

「ミメットとスピネルを連れて行くぞ!」

「ポチャリーヌ様、いきなりなんですかな?」

「依頼だ!」

「えぇっ?」

 ギルマスは、ポチャリーヌの突然すぎる依頼要請に戸惑っていました。


(わらわ)は今度エルドランテ王国に行くのでな、その護衛を二人に頼みたいのだ。ミメットはお仕置き中なので、勝手に連れて行けないだろ?」

「なるほど、そう言う事ですか。それなら手続きしておきますよ」

「うむ、頼んだぞ」

 それだけ言うと、ポチャリーヌはミメットさんを引っ張って行った。


 向かった先は会議室でした。

 そこには、スピネルさんがいました。

「ポチャリーヌさんからの依頼があると聞きましたけど、ミメットも同行するのですか?」

「そうだ、手は多い方がいいからな」

 と言ってポチャリーヌが、ミメットさんのお尻を叩いていた。

「それで、依頼内容はどういったものです?」

「まあ待て、ここで待ち合わせている者達が居るのだ。依頼に関係した協力者だな」


 どうやら協力者とやらと、ここで待ち合わせのようです。

 それはいったい誰なのか?

 使徒達ではなさそうだし、名前を言わないのは、あたしも知っている人物なんだろうか?



 それから1時間あまり、雑談をしながら待っていると、待ち人が現れました。


「お待たせしました」

「ご機嫌ようみなさん。あら? 今日はムート様はいらっしゃらないのですか?」


 そこにやって来たのは、お久しぶりのお二人。

 エルドランテ王国の第一皇子のアドリアス・ド・エルドランと、公爵家次女、シエステ・フォン・レクティンでした。

 シードラゴンのリップが偶然会って友達になった事で、あたし達とも知り合いになったのです。

 っていうか、何で他国の王侯貴族の二人を呼んだんだポチャリーヌ?


「今回の件にムートを連れて行くとまずい理由があるので、連れて来てないな」

「あらそうですの、残念ですわ」

 シエステさんは残念そうに、ほうっとため息をつきました。


 今回のポチャリーヌの行動は、色々怪しいぞ。


「ちょっと、何を企んでいるの?」

「それは今から説明する。まずはエルドランテ王国へ、アドリアスとシエステを送り届ける事だな。その後に博物館に見学に行くぞ」

 ポチャリーヌは説明してくれたけど、まったく納得できないよね?


「それはいいけど、何のためにアドリアス達を送ってくの?」

「恩を売る為だ!」

 うわぁ……、ぶっちゃけたよこの子。

「僕とシエステが国に帰るというんで、ポチャリーヌ様が連れて行ってくれるんだよ」

「その代わり、博物館の館長に紹介して差し上げるのですわ」


 つまり、二人をエルドランテ王国に連れて行って恩を売り、博物館の館長に紹介してもらうと。

 それってどういう事?


「なぜに博物館の館長なワケ?」

「まあそれは、向こうに着いてからのお楽しみだな」

 と言って、ポチャリーヌはウインクした。

「でも連れて行くって、どうやって? ラビエルやリリエルちゃんがいなくちゃ、転移魔法で行けないよ?」

「それは大丈夫だ。その為にエルフが二人居るのだ」

「ますます分からん!」

(わらわ)だけでは使えない魔法も、エルフ二人の魔力を合わせれば可能になるのだ。空間跳躍魔法がな!」


 空間跳躍魔法。ポチャリーヌの説明によると、出発地と目的地の間の空間をつなげて、距離をゼロにする移動方法だそうです。SFで言うところの『ワープ』ですね。ポチャリーヌの前世の世界であるクリスエラールでは、他の惑星に行く時に使っていたそうです。

 ちなみに、使徒の使う転移魔法は、似ているけど別物だそうな。


 そんな事より、なんで使徒に連れて行ってもらわないの?

 ポチャリーヌの行動が、ナゾすぎる。


 色々うやむやの内に出発となりました。



「では、ここで転移ポータルを開くぞ。スピネルとミメットは、(わらわ)に魔力を流すのだ」

 ポチャリーヌは会議室の壁を指差して言った。

「そんな事をして大丈夫なんですか?」

「かまわぬ、それぐらい問題無い」

「そう? それじゃあ」

 と言ってミメットさんが、両手でポチャリーヌの左手を掴んで魔力を流しました。

「え~~と、私はどこを持ちましょう?」

「ミメットと同じ所でいいぞ」

 スピネルさんも左手を掴みました。


「お~~、キタキタ~! これだけの魔力があれば、魔法が発動するぞ!」

 そう言ってポチャリーヌは、右手の指で壁に四角形を描いた。

「シュプルン・フルーリア!」

 ポチャリーヌが発したのは、なんかドイツ語っぽい呪文でした。

 呪文を唱えたあと、指で描いた四角形が光り、その中もぼんやり光り出しました。


「よしアドリアス、移動先を思い浮かべるのだ!」

「は、はい!」

 どうやら行き先を決めるためには、そこを知っている必要があるようだね。アドリアスは目を閉じて、一心に思い浮かべているようです。

「移動先は博物館の前です。繋がりましたか?」

「うむ、良い具合に繋がったようだな。ではポータルを開くぞ」


 ポチャリーヌがポータルに手をかざすと、光が一瞬強くなりました。

 光がおさまると、そこに見えたのは街中の景色でした。


「成功だ。さすがエルフだな、しっかりと魔法が発動したぞ。じゃあ行くぞ」

 と言ってポチャリーヌは、さっさと行ってしまいました。

「すごいねぇ~。個人の魔法で転移が出来るんだ」

 ミメットさんも、ポチャリーヌに付いて行きました。


 女神様や使徒の使う転移魔法と違い、人間の使う転移魔法は、魔法陣を使った設置型の転移陣と言われる物です。各地に設置してありますが、転移陣のある場所にしか行けないので、転移魔法と比べると不便なものかもしれません。

 そんな転移魔法を、個人で使うと言う事は凄い事なのです。

 まあ、元魔王なので、そんなに不思議な事じゃありませんけどね。


 あたしもミメットさんの後からポータルをくぐりました。

 目の前には大きくて立派な建物、これが博物館なの?

 それは、かの大英博物館を思わせる、いやそれ以上の規模の博物館でした。


「本当にサイレグ博物館に出て来た!」

「さすがは元魔王様ですわね!」

 アドリアスとシエステもこちらに来ました。

 ポチャリーヌがさっと手を振ると、ポータルが消えました。


「さあて、博物館に行って色々見聞を深めようではないか」

 などと言ってみんなを連れて行こうとするポチャリーヌですが、ちょっと待てよ。

 これってまずくない?


「待ってポチャリーヌ。転移をしたのはいいけど、あたし達って不法入国じゃないの?」

「うん? なるほど、そうなるか。まあ、気にするな」

「イヤ、まずいでしょ!」

 そう、国境で入国手続きをしないで来てしまったので、あたし達はただの不審者ですよ。


「そうか、国境門の前に出ればよかったのか」

「何をおっしゃいます、私の権力で問題ありませんわ!」

 アドリアスは常識人なのに、シエステは悪役令嬢みたいだよ。

「それもダメ〜〜! 今回は討伐隊の任務じゃないんだからね、ルールは守らなくちゃ」


 と言うわけで、国境門からのやり直しとなりました。

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