第211話 ミメット、罰を受ける
謎の魔獣こと、ペナンガランは討伐されて任務完了です。
翌日になり、あたし達はムート君のお家に集まりました。
そしてペギエル様やアウルエル様を交えて、リリエルちゃんが撮影して来た画像を見ながら、みんなで色々調べてみました。
そこで分かったのは、ペナンガランというのは元々亜空間に住んでいる魔獣で、エルドランテ王国で目撃例があったために、そこに住んでいると思われたのでした。
亜空間の魔獣や魔物が、こちらの世界に現れないのは、彼らに次元の壁を越える能力が無いからですって。ペナンガランのように、次元間移動が出来る者は少ないようです。
「異次元と亜空間と影空間は、同じものなんだよ。言い方の違いだけなの」
メロンちゃんの解説によると、アブホースが住んでいる場所も、あたし達が入った場所も、影魔が出入りしている場所も、みんな同じ亜空間なんだそうです。
メロンちゃんが亜空間で魔力感知出来たのも、そこで生まれたからです。
「亜空間というのは、世界と世界の狭間にある場所なんですよ。なので、亜空間からは他の世界に行く事が出来ます。ナナミィさんが住んでいたアースにも、亜空間を通れば行けるのですよ」
と、ペギエル様が教えてくれました。
「そうなのだ、妾の使い魔の影魔も、転生後に亜空間を通じてクリスエラールから呼び寄せたのだぞ」
ポチャリーヌが得意げに言いました。
「そんなに簡単に、行き来出来るものなの?」
「簡単ではありませんね。影魔は亜空間に住んでいた魔物なので、次元間の行き来が出来るのです。使徒も亜空間を通って異世界に行けますが、それには女神様の承認が必要なのです。私だって勝手に出入り出来ないのですよ」
つまりディアナ様が認めなければ、ペギエル様とて亜空間を通って異世界には行けないようです。
「あれ? あたしらは何で亜空間に行けたの?」
「それは、影魔が連れて行ったからだな。次元間移動能力を持った、妾の使い魔は優秀なのだよ」
ポチャリーヌはドヤ顏で言った。
「そうですね。でも、無許可で亜空間に入るのは控えて下さいね。今回は任務上、必要な事として黙認しますけど……」
「あはは、そ……そうですわね」
ペギエル様に釘を刺されて、ポチャリーヌが焦っていたよ。
そう言えば、以前にミケなんかも亜空間から運ばせていたよね? ポチャリーヌの事だから、今までも影魔を使って亜空間に出入りしてそうだけど。
あたしがポチャリーヌをじっと見たら、さっと顏をそらされた。
うん、やってるな。
「それでペギエル様、亜空間内で見付けた魔物の死骸なのですが、放っておいていいのですか?」
ラビエルがペギエル様に尋ねました。これも重要な件だよね。
「大きな浮き島で見付けたと言う、死んだ魔物のことですか? どんなものでしょか?」
「ちょっと待って下さい。ええと……これですね」
ラビエルがブレスレットを操作して、撮影して来た画像を空中に映し出しました。
それは土砂や雑草に埋もれた、何かの生物の遺体でした。
すでにどんな魔物なのか分かりませんが、この大きさはヤバい、30mもあります。もう動かないので心配する必要はありませんが、復活なんて事になったらヤバいです。
「……ふ~~む……これですか? これは触らなくても大丈夫でしょう」
「あれ? いいのですかな?」
ペギエル様の予想外の答えに、ラビエルは戸惑いました。
あたしやポチャリーヌもビックリ、こんなヤバげなものを放っておくなんて。ペギエル様が真っ先に、破壊してしまえと言うと思ったのに。
「これはディアナ様の決定でもあります。いいですね?」
「いや……これって、邪神では……」
「い・い・で・す・ね!」
どーーん!
ペギエル様に怖い顏で迫られて、ラビエルはタジタジです。
「ハイィッ!」
「そしてポチャリーヌさんも、勝手に調べたりしないで下さい。これはお願いではありませんので」
「まさか! そんなコトはしませんことよ?」
ポチャリーヌの返事が怪しいぞ。
調べるつもりだったな。でも、ペギエル様にはお見通しだったようです。
お願いではありませんって、つまり『調べるな』と言う命令なんですよね。
「そうですよ、ポチャリーヌは余計な事をしてはダメなのですぅ」
「いやさすがに、ここまで禁止されては何も出来ないぞ」
珍しくリリエルちゃんが強く言っていました。
「それと問題が一つ残っています。ミメットとやらも、例の魔物を見たのでしたね?」
「え~~と……たぶん見てます」
これにはあたしが答えました。
「まさか、ミメットさんを口封じで……」
「いえいえ、そんな事はしませんよ。彼女には他所で話さないように、言っておいて下さいね」
ペギエル様はラビエルに言い付けました。
むろんこれも『お願い』じゃなくて、もし話してしまったら、恐ろしい制裁がありそうです。いや、確実にある!
あれやこれや報告しつつ、今日はおひらきになりました。
後はミメットさんの処遇か……
こちらの事より、ハンターギルドの処分の方が重そうだ。
そしてあたし達は、魔獣討伐の報告のために、ハンターギルドにやって来ました。
報告する相手は、ギルドマスターのドライクさんです。
「謎の魔獣の討伐をして頂いて感謝しております。それに魔獣の正体も分かったとかで?」
「うむ、ペナンガランと言う異次元の魔獣で、獲物の血を吸う吸血魔獣だ。次元の壁を越えてハンターを襲ったのだ。まあたいした奴じゃなかったので、サクッと倒してやったがな!」
ラビエルが得意満面に報告してますが、倒したのは正体不明の攻撃だからね。
とは言え、そんな事は公には出来ませんので、当たり障りのないウソを混ぜておきます。
例の浮き島の魔物の事は、ハンターギルドにも秘密なのです。
どのみち亜空間には誰も行けないので、関係無い事なのですが。
「異次元から突然現れるとなると、我々ハンターでは対処出来ませんか……」
「そう心配する事は無い、ペナンガランは奴だけのようだし、もう現れる事はないだろう。それにもし現れても、すぐに分かるようにしておいたぞ」
「おお! それはありがたいです!」
分かるようにって、それをしたのは異次元に住む邪神のアブホースさんのおかげなのにね。あたしがお願いして、新しい分身を送ってくれました。
その子に亜空間の監視をしてもらうのですが、今度もあたしが姿をあげました。
名前は『シロンくん』。長いたれ耳が可愛い、ワンコの男の子だよ。
長い耳をパタパタさせて空を飛び回り、ペナンガランを始め、危険な魔獣や魔物がこちらにやって来ないか監視しているのです。
あたしが前世で好きだったキャラクターをイメージしてます。
これにて報告はお終い。
それで問題は、規則違反のミメットさんです。
いま別室で待たされてるようなので、後で会いに行きましょう。
ギルドマスターと共に。
「君はフニクラ平原が、魔獣の為に立ち入り禁止なのを、知っていただろう?」
「はっ、それはモチロン……」
ギルマスに咎められて、ミメットさんはタジタジだ。
「じゃあなぜ?」
「実は故郷にはお腹を空かせた弟や妹がいまして、私の稼ぎだけが頼りなんです」
そして涙をぬぐうのでした。
「そうだったのか……」
ギルマスも、彼女の事情に同情したようです。
思わず韻を踏んでしまいました。
「おや? ミメットさんのご兄弟は、お姉様だけじゃありませんか?」
「「「え?」」」
「この資料にはそう書いてありますが」
と言ってギルドの職員のお姉さんが、書類を見せました。
「これはエルドランテ王国から取り寄せた、正式なハンターの登録書類ですよ」
一同ミメットさんを見た。
彼女はペロッと舌を出したのでした。
「てへペロ♪」
「「「ウソかぁ~~!」」」
余計な事を言って、余計に怒られたミメットさんは、上級のハンターの監視のもと、奉仕活動をする事になりました。奉仕活動とは、無報酬でギルドの雑用をしたり、依頼を受ける事ですね。
「本当ならライセンス取り消しなのだが、君が魔獣討伐の際に役に立ったと言うので、特例で軽い罰だけですませるのだぞ」
「は……反省してます~」
こってり説教喰らったミメットさんは、すっかりへこんでしまいました。
で、監視するハンターは、スピネルさんだった。
同じエルフが不始末を起こしたという事で、スピネルさん自ら協力してくれる事になったのです。
ミメットさんは、エルフの国の領主様のご令嬢に監視される事になって、超ビビっていたよ。
まあスピネルさんなら、優しく見守ってくれるよね。
「このエルフの面汚しが! 私がビシビシと鍛えてやるぞ!」
「ひぇ~~~~!」
なんか、修行するみたいになってるけど……
うん、きっと優しく指導してくれるさ。




