第210話 新たなナゾ
ヤクルスとか言うヘビの魔獣に、グルグル巻きにされたミメットさんとメロンちゃんは、そのまま連れ去られてしまいました。
一難去ってまた一難だ。
ヤバい、早く追わなくては!
「ねえラビエル、あのヤクルスってのは、魂や血を吸ったりするの?」
あたしはヤクルスの後を追いながら、ラビエルに尋ねました。
「奴にそんな習性は無かったはずだ、確か丸呑みにするんだっけか?」
「ああそうか、丸呑みか……って、それもヤバいよ!」
やはりヘビはふざけた生き物ですね、噛まずに飲み込むなど、お行儀が悪すぎです。
そのヘビはミメットさんとメロンちゃんを拉致ったまま、どんどん飛んで行って、大きな浮き島に降り立ちました。
こんな大きな島もあったんだ。
さっきと違って、幅が1kmぐらいあります。それに、真ん中に大きな山まである。ヤクルスが降りたのは、その山の頂上です。
「よし、あそこなら周りに邪魔な物は無いな。遠慮なく攻撃出来るぞ」
「それはいいけど、メロンちゃんには当てないでよ」
「……むろんだ」
オイ、今ちょっと間があったな?
どさくさ紛れにメロンちゃんに当てたら、耳に噛み付いてやるからな。
「いやいや、ちゃんとやるから!」
どうやら声に出さなくても、パートナーなら伝わるようです。
あたし達は山頂のヤクルスの前に降りました。
そして、信じられない光景を見る事に……
楕円形の風船のようだったメロンちゃんがしぼんで、するりと抜け出してしまいました。さらに細長い姿になり、スルスルとヤクルスの体を移動して、頭に着くと口から入って行ってしまいました。
え? 自ら食べられに行ったの?
メロンちゃんの思わぬ行動で、あたしが固まっていると、ヤクルスに異変が。
体のあちこちが膨らんで行き、一気に破裂してしまったよ!
そしてドバァ~~っと内臓が飛び散り、阿鼻叫喚の地獄絵図に……
「「うひゃ~~~!」」
あたしとミメットさんは、思わず悲鳴を上げたよ!
特にミメットさんは血まみれだ。
うげぇ~~~~!
メロンちゃんがヤクルスの体の中で分裂して、それぞれが風船のように膨らんで魔獣の体を内側から破ってしまったんだ!
「やっつけたなの~♪」
元に戻ったメロンちゃんが、可愛く言った。
「よ……よくやったね……」
どんな顔をすればよいのやら……
「我が輩なら、もっと爽やかに助けられたものを」
「ハイハイ、それはいいから、さっさとミメットさんを連れて帰りましょ」
そう言って、肩に乗っている影魔くんに帰りのお願いをしようとしました。
「ありゃ? ここに何かが埋まっているのなの」
メロンちゃんが、何かを見付けました。
それは山頂に埋まった『何か』でした。
表面を土が覆っており、そこにコケや雑草が生えていて、よく見る事が出来ません。大きさもかなりのもので、全長が30m以上ありそうでした。
所々見える場所があり、何だか生物のようにも見えます。
「これって、亜空間か異次元の魔物なのかな?」
「う~~む……、こんなの見た事ないな。魔物にしても、死んでいるみたいだな。何の魔力も無いみたいだ」
ラビエルがブレスレットで魔力を測定してますが、検出出来ないようです。
「死んでいるなら気にしなくていいか……」
「そうだな。これには係わらない方がいいな」
ラビエルに言われなくても、これがヤバい存在だというのは分かります。
ここはスルーしよう。
「うぅ~~……気持ち悪う~~」
ああそうだ、ミメットさんを早く洗ってあげなくては。
「おお~~い、見つけたか~~?」
そこにポチャリーヌがやって来ました。
「ナナミィちゃん、どうだ~~い!」
「見付けたでしょうね~~!」
ムート君も来ました。
ミミエルの奴は、相変わらず偉そうだな。
「当たり前でしょ。見付けたのは、あたしのメロンちゃんだよ。ひれ伏すがよいわ~~!」
って言ってやったが、ミミエルに「はぁっ?」って顔をされた。
そして血まみれのミメットさんを見て、一同仰天するのだった。
「ちょっと、この子ったら酷いけがしてんじゃないの?」
「うわぁ! 出血多量で死んじゃうよ!」
「妾は別にかまわんがな」
「コラそこ、酷いこと言わないの!」
一応みんなには、魔獣を倒して助け出した事を説明しました。
倒し方を聞いて、みんなはドン引きだったけど。
あたしが水の魔法で、空中から水を出してミメットさんに掛けてあげます。むろんミメットさんには、裸になってもらっています。
エルフという種族は美形揃いなのか、ミメットさんもスタイルがいいです。
(ふん、妾の本来の姿の方が胸がでかいぞ)
(人間の時のあたしの方が胸の形がいいよね。大きさは負けてるけど……)
などとポチャリーヌと二人で、ヒソヒソやってるけど、隣でミミエルが呆れています。
「そんな事はどうでもいいでしょ? さっさと帰るわよ。ホラ」
ミミエルがあたしの頭を蹴っ飛ばしながら言った。
あたしが振り返ると、素早くムート君の後ろに隠れやがった。そしてあっかんべ~。
なんだこのテンプレなのは? 萌えてまうやろ。
「ちょっ……アレ!」
ミミエルが突然叫びました。
え? なに?
ミミエルの指差す方を見れば、ポチャリーヌがペナンガランに捕まっていたよ!
あれはさっき、ラビエルがボコった奴だ。こんな所まで追ってきたのか?
みんなの注意がミメットさんに向いていたからか、ほんの少し気持ちに隙が出来ていたのかもしれません。それに、亜空間が魔力感知を妨害する事を忘れていたからか、魔獣の接近に気が付きませんでした。
「うぐっ、クソ……!」
ポチャリーヌは大きな手で押さえられて、身動きが出来ないようにされていた。
あたしとムート君は、左右からブレスで攻撃しようと、ペナンガランの横に移動しました。しかし奴はポチャリーヌを持ち上げて、自分の体に近付けたのです。
これでは、ブレスがポチャリーヌにも当たってしまう。
「魔獣のくせに、ポチャリーヌを盾にしてるの?」
「案外頭がいいなこいつ」
あたしとムート君が攻撃出来ないのを分かったペナンガランは、ポチャリーヌを持ったまま、その場を離れようとしました。
その時、ペナンガランの腕に何かが刺さった。
それは細長い針のような物だった。
誰が投げたの?と思ったら、ミメットさんだった。
彼女の手には20cmぐらいの針状の武器が握られていて、それを次々と投げていました。しかも百発百中だ。
さすがのペナンガランも、これにはたまらなくなって、ポチャリーヌを離しました。
あたしは急いで飛んで行って、ポチャリーヌを抱きとめて素早く離脱!
よかった~、怪我もなくて無事だったよ。
さあ、この腐れ魔獣をどうしてやろうか?
と思って振り返ってみたら……
ペナンガランがバラバラになっていくところでした。
どういうコト?
魔獣の体が、千切れ飛んでいくように消えて行ったよ。
誰の攻撃? あたしとポチャリーヌは何もしてないよ。
ラビエル達を見てもポカンとしてるし、この攻撃はどこから来たの?
そして……ペナンガランは何も残さず消滅してしまいました。
「どうなったの? アレはなに?」
「いや……我が輩らも、何が何やら……」
後から話を聞くと、魔物の死体があった島から何かが飛んできて、ペナンガランに当たったそうです。
まさか、死んだ魔物のしわざ?
あたしの言わんとした事が分かったのか、ラビエルは肩をすくめてみせた。
大きな謎を残しつつ、これで謎の魔獣騒動は終結しました。
後はハンターギルドとペギエル様に報告するだけですか。
あたし達は影魔に連れられて通常空間に戻って来ました。
「あ〜〜、ポチャリーヌは無事なんですか〜?」
戻って来た途端、リリエルちゃんがポチャリーヌに抱き付きました。
ちょっと嫉妬しちゃうよ。ああでも、あたしがメロンちゃんを抱いているから、リリエルちゃんが来れないのかな?
「リリエルは、ポチャリーヌが魔獣に捕まったのを知っていたのか?」
ラビエルが何気なく尋ねました。
そう言えばリリエルちゃんは、亜空間での事は分からないはずだよね。
「え? だってポチャリーヌだけが、ダメージありそうですし」
言われてみれば、最初に捕まったミメットさんは、それほど酷い目にあった風には見えないか。
……まあ、血まみれにはなったんだけどね。
「あれ? 何でメロンちゃんさんがいるのですか?」
リリエルちゃんが、メロンちゃんに気付いたみたいです。
「え〜と、亜空間内でミメットさんを探すためだよ。あたしやラビエルでは捜せなかったので、異次元から呼んだんだよ」
「ああ、そうなんですか〜」
リリエルちゃんは、素直に納得してくれました。
それにこれから報告するペギエル様には、メロンちゃんの事を含めて、本当の事を言わねばならないからです。メロンちゃんの証言も重要なのです。
逆にハンターギルドには、全てを報告するわけにはいきませんがね。特にあの死んだ魔物がいた浮き島に関する事は。
ラビエルとの打ち合わせで、ペナンガランはバハムートが倒した事にしました。
ラビエル曰く、あれは世間に出してはいけない物だそうです。
どういう事かと聞いたら、強大な魔物が封印されている可能性が高いからだって。そんな事を公表しても、世間にいらぬ混乱を起こすだけと言われれば、納得する他はありません。
ミメットさんも口封じ……じゃなくて、ペナンガランを倒した真の理由を、話さないようにお願いしておきます。
あと問題があるとすれば、ミメットさんのハンターギルドの規約違反だね。立ち入り禁止エリアに入って、採集活動をしてたのです。下手をしたら、ハンターライセンス剥奪かもしれません。
「はわわ……どうしましょう〜〜」
ミメットさんは事の重大さを思い出して、顔面蒼白になってます。
ホント、どうしましょ?




