第209話 メロンちゃんを呼ぼう
「あれは亜空間に住む魔獣で、ソウルイーターと言うものだ」
ラビエルが向こうに飛んでいる、凧のような魔獣の説明をしてくれます。
「ふ~~ん、でもなんか、物騒な名前だね?」
「そうだな、名が体を表すと言うか、あれは生物の魂を喰うのだ」
「えっ? それってやばくね?」
「まあ、我らなら負けはしないだろ」
ラビエルは気楽に言うけど、あたしらよりも、ミメットさんが心配です。
ペナンガランから逃げれても、まだ他にあんな危険な魔獣がいるなんて。
「早くミメットさんを見つけなきゃ!」
あたしはラビエルを引っ張って行って、近くに浮かんでいる、木の生えた岩に向かうのでした。
むろん、さっきのソウルイーターを警戒しながら……ですが。
浮かぶ岩に辿り着きました。
生えている木は、特に危険な感じは無い普通の木でした。しかし、岩そのものはかなりの大きさでした。直径30mぐらいあります。単独で浮かんでいると思ったのですが、反対側にいくつも岩がくっつき、100mぐらいの長さがありました。
そこに着地すると、足元から何かが飛んで逃げて行きました。
よく見たら、虫のような生物でした。と言う事は……
「ここには、いないみたいね」
「うん? どうして分かる?」
「だってペナンガランが来てたら、さっきの虫はもっと前に逃げていたはずでしょ? つまり、あたし達が来るまでは誰も来てないんだよ」
「なるほど、じゃあ他を探さなくてはな」
そしてあたしとラビエルは、また別の岩に向かいました。
少し離れた所には、ムート君とミミエルが飛んでいるのが見えた。あっちもまだ見付けて無いようです。
「ミミエルの奴は、まだ見付けてないようだな。頑張って我らで見付けるのだ!」
なんかラビエルが、ミミエルに対抗意識を燃やしてるよ。
まあ、やる気があるのはイイ事だ。
あたし達は目指す岩に着きました。
ここはさっきと違って、木じゃなくてツタ植物が茂っています。しかも凄く大きくて、まるで触手のようです。
「大きな植物だねぇ、アレ動いたりしてね」
「ははは~、まさかな~」
「ねぇ~~~」
動いた。
しかも、見ていたツタじゃなくて、その下からヌメっとした触手が出て来たのです!
ムチのように激しくしなって、こっちに向かって来ましたよ。
「うわっ、こいつはノッケンだ! 岩に張り付いていたんだな!」
「なにそれ~~?」
つまり、魔獣が浮かぶ岩にくっ付いていたってわけ?
よく見ると、ツタや触手の間から目がのぞいてる。植物に擬態していたんだ。
大きな触手があたし達を狙って、ビューンと伸びて来ました!
うわっヤバっ。
「やらせないのだっ!」
ラビエルが魔力弾を撃って、触手を攻撃してるけど、いまいち効果が薄い。
これはいつまでやっていても、決着が付かないやつだ。
「こんな魔獣が住んでる所にはいないよ。さっさと逃げよう!」
「そ、そうだな」
あたしはラビエルを抱えて、ダッシュで逃げるのでした。
「そう言えば、ノッケンの魔力を感じなかったよ」
「なに? やはりこの亜空間は、魔力感知を妨害するのだな」
「じゃあ、どうやってミメットさんを捜そう?」
「やはり目で見て捜すしか……」
ペナンガランの魔力を捜せば、楽勝で見付かるかも?って思ってたのに、ポチャリーヌの悪い予想が当たってしまいました。
「あなたは分かったりしない?」
あたしは自分の肩に乗っている影魔くんに尋ねました。この子なら亜空間でも動けるし、魔獣の探知が出来るかも?
影魔くんは足を振ってから、頭をかしげました。どうやら分からないようです。
さあどうしよう?
どうやって捜そう?
亜空間の事をよく知っている人はいないかな?
……あ、いた。
今こそあの子を呼ぼう!
「メロンちゃ~ん! 聞こえてる~~! 助けて~~~!」
あたしは異次元に帰った、メロンちゃんに呼び掛けてみました。
使い魔として繋がっているので、これで伝わったはず。
「な……! 奴を呼ぶのか?」
「ハ~~イ七美ちゃん。なにか困ってるの? わたしにお任せよ~~」
やって来ましたメロンちゃん♪
あたしの肩の影魔くんの影から、メロンちゃんが飛び出して来ました。
邪神アブホースの分身にして、あたしの使い魔の可愛いウサギ姿の魔物です。おかげでラビエルとリリエルちゃんがライバル視してます。
「ひさしぶり~~メロンちゃん、寂しかったよ~~」
あたしはメロンちゃんを抱きしめました。
あ~~~かわいい~~~。
「え? つい昨日じゃないの?」
ああ、さすが異次元の魔物は、時間感覚が違いますね。
「クッ……七美のやつ、デレデレしおって……」
ラビエルがブツブツ言ってるけど無視だ。
取り敢えず今までの事を説明して、メロンちゃんの力を貸してもらいます。
「……と言うわけで、いま困ってるのよ」
「うん、分かった、まかせて♪」
メロンちゃんはあたしの腕から浮かぶと、すぅーっと上昇して行きました。
そして耳をピコピコ動かしているのは、周りの気配とか魔力とかを探っているのでしょう。時折小首をかしげてるのが可愛いです。
「分かったなの、向こうに人間と魔獣のマナを感じるの」
と言ってメロンちゃんが指差す方を見ると、空に浮かぶ島がありました。
凄い! ファンタジーの定番の浮かぶ島!
島と言っても、大きさは全長200m位で、上が平らで下がでこぼこになってます。平らな面には、背の低い木がまばらに生えており、高い木が数本ある程度です。
これなら簡単に見付けられそうだね。
あたし達3人は浮かぶ島に向かいました。
上空にはソウルイーターが飛んでいるし、他にもヤバい奴がいるそうなので、素早く移動します。
それにしても、この亜空間は不思議な場所です。見上げれば星空で、それなのに暗くありません。見下ろせば地面が見えず、代わりに薄い雲のような物が広がっております。いちおう重力があるので、上下感覚を失う事はありませんが、通常空間より小さめのようです。
と言う事は、下の方には地球より小さい惑星でもあるのでしょうか?
いや、もしかしたら、ブラックホールのような巨大質量があるのかも? だとしたら、下に行くのは危険だよ。
なんて考えているうちに、島に到着しました。
島の上から捜すと、いた、いました。ペナンガランとミメットさんです。
ペナンガランが血を吸おうとしているのを、ミメットさんが抵抗しています。ハンターなだけあって、剣で攻撃しています。
「無事みたいだよ。でも、早く助けないと!」
あれを無事と言えるのかは疑問ですが、ミメットさんはかなりボロボロになってますよ。
「よし! ソッコー助けるのだ!」
ラビエルは突撃して行きました。
やはりライバルの存在は、やる気が20%増しになるのかな?
「ミメットさ~~ん! 助けに来たよぉ~~!」
ラビエルが魔力弾を発射するのと同時に、ミメットさんに声を掛けました。
ハンターなら、この隙に逃げられるはず。
ミメットさんは、ラビエルの魔力弾がペナンガランに着弾する寸前に、横っ飛びでかわしました。
魔力弾はペナンガランの体にヒット!
ズドーンと当たった魔力弾は、張り切りすぎたラビエルのおかげで、普段の200%増し、つまり2倍の威力があった。
ペナンガランの体は『くの字』に曲がって、転がって行きました。魔力弾はそのまま地面にぶつかって埋まって行ってしまいました。
「大丈夫ですか~?」
「な、なんとか……」
どうやら無事のようです。
「捜してくれたの? ありがと~」
これで安心だ。
しかし、ミメットさんの足元が突然崩れました。
「きゅあ~~!」
島の地面がひび割れて、彼女は島の崩落に巻き込まれてしまったのです!
「えぇっ? なぜぇ~?」
あ。さっきのラビエルの魔力弾だ。
島の裏側まで貫通したんだな?
200%増量の威力だ!
「ちょっとラビエル、早くミメットさんを助けて……」
ラビエルはペナンガランをボコってる最中だった。
「ラビィ~~~!」
「え? ああっ、大変なのだ!」
ラビエルが気が付いたけど、間に合いそうもない。
あたしが飛び込んで助けなきゃ。
急いで飛んで行きますが、崩れる方が早く、ミメットさんは空中に放り出されてしまいました。
いや待って、エルフなんだから飛行魔法とか持ってるかも?
「ミメットさん飛んで~~!」
「む~~り~~~」
……ですよねぇ!
「わたしにお任せなのよ~~」
メロンちゃんがピュ~っと行って、ミメットさんにしがみ付きました。
まさかミメットさんを持ち上げる程に、パワーがあるの?
「それ~~」
掛け声と共にメロンちゃんの体が膨らんで行きました!
しかも、ウサギの姿じゃ無くなり、楕円形の風船になったよ!
「えぇっ~~~~?」
ビックリしたけど、風船なのでちゃんと浮かびました。
これで一安心だ。
そう言えばメロンちゃんって、元々不定形な魔物だったんだよね。
「あっ! あれは何なのだ?」
ラビエルの指差す方を見れば、さっき見た螺旋の魔獣がいた。
そしてミメットさんとメロンちゃんに巻き付いてしまったよ!
「思い出したのだ、あれはヤクルスと言う、ヘビの魔獣なのだ」
「ぎゃ~~~~! ヘビ!」
亜空間にもヘビがいた!
ヘビに襲われるウサギを助けるドラゴン。ドラゴンと言えばタツだ。
十二支? 十二支なのかな?
向こういるポチャリーヌはイヌだし、十二支だな?
……なんて現実逃避しても、ミメットさんとメロンちゃんは助けられないのだった。




