第208話 ペナンガラン捕獲作戦
ムート君とミミエルが戻って来たので、全員で情報共有する事になりました。
「謎の魔獣の正体が判明した、ペナンガランと言う名前だそうだ。主に隣国のエルドランテ王国に住み、獲物を狩る時は亜空間に潜んで、腕だけ通常空間に出して捕まえるのだな。それに魔力隠蔽の能力もあるらしい」
ポチャリーヌの説明を聞いて、みんなは渋い顔をしてました。
「それか……亜空間自体に、魔力の探知を妨害するような効果があるのかもしれんな……」
「うわ、それ厄介!」
「じゃあ、どうやって探すのよ~!」
あたしとミミエルに言われて、ポチャリーヌはしばし黙考。
「目で見て探すしかないだろうな、幸い奴に姿を消す能力は無いようだし」
ポチャリーヌに言われて、みんなは脱力してしまいました。
いつ現れるのか分からない奴を、常に警戒しなくちゃならないからです。今までの姿の見えない魔獣や魔物ですら、魔力を感じる事が出来たので、居場所を探すのは難しくありませんでした。
ああでも、レイスぐらい弱いと分かり辛いかも?
だとすると、こちらに出て来る瞬間に攻撃しなくちゃなりません。
あれ? そう言えば、ペナンガランからはどうやって獲物を見付けてるんだ? 向こうからだって、こちらは見えないはずだし。
ああ、そんな事を言ったら、影魔達もどうやって影の位置が分かるんだろう?
「それじゃあ、ペナンガランをこっちにおびき出せばいいんじゃありませんか?」
ミメットさんの一言に、みんなが注目した。
「誰かが囮になるの? 私はいやよ。それより、あんた誰?」
ミミエルがジロリとミメットさんを睨んだ。
そう言えば、ムート君達は知らなかったんだ。
「そいつは、ナナミィがどこぞで拾った、エルフのハンターだな」
「言い方! こっそり入り込んでいたのを、保護したんだよ」
「つまり、ハンターギルドの通達を無視して、立入り禁止エリアで活動していたのね。アンタ分かってんの、ハンターライセンス剥奪ものの違反行為なのよ!」
「ひぃ~~」
ミメットさんは、ミミエルにズバリと言われて涙目だ。
自業自得なので、擁護のしようもない。
「ま、まあ今はいいでしょ? 彼女はDランクハンターのミメットさんよ」
「ふ~~~ん、Dランクねぇ。ここで見付かったのが運の尽きよ」
「ひぃ~~~」
相変わらずミミエルは意地悪だな。
「お主らもういいか? おびき出すと言うのは良い案だと思うぞ。そこで妾が囮になってやろう」
と、ポチャリーヌ。
「ちょっ……あんたがそんな事を言うなんて珍しいね。いつもならあたしやムート君に押し付けるのに」
「人聞きの悪い事を言うな、妾はいつも寛大なのだよ」
ドヤ顔で言うポチャリーヌはうざいからスルーしよう。
「では、ポチャリーヌを囮にして奴をおびき出します。そして亜空間から現れた所を、バハムートに引っ張り出してもらうのです。そこを全員でボコる!」
うん、完璧な作戦ですね。
「「「分かった」」」
「じゃあ作戦スタート!」
あたし達はそれぞれ分かれて、配置に着くのでした。
ミメットさんには、離れた所に待機してもらいます。
「リゲイル!」
ムート君が唱えると、アリコーンの姿が大きなドラゴンへと変わって行きます。
「えぇっ? ドドド……ドラゴンになったぁ!」
ドーンと変身したムート君を見て、ミメットさんは超ビビっていたよ。
そりゃあ、普通のドラゴンは1~4mぐらいの体長しかないのに、バハムートは8mはあるからね。顔も、優しいドラゴン族とは違って、かなり厳ついし。
「奴は空の上から、目で見て獲物を確認しているはずだ。だから空中に顔を出す確率が高く、その後に手だけを出して襲うのだろう。バハムートは奴が手を出すタイミングを見計らって、腕を掴んで亜空間から引っ張り出してやれ!」
「分かった!」
ポチャリーヌの説明を聞いて、バハムートが少し離れた木陰に隠れました。
大きな体のバハムートなので、完全には隠れないけど、そこらの木を抜いて来て体を隠してました。
そしてリリエルちゃんは、魔獣から転移魔法で逃げるために、ポチャリーヌの足元にいます。
「準備オーケーなのですぅ」
「頑張ってねリリエルちゃん。あと、ポチャリーヌも」
「妾をついでみたいに言うなよ!」
各人配置に着いて、ペナンガランが現れるのを待ちます。
緊張して待つ事10分あまり、ポチャリーヌがいる真上にの空中に、すーっと線が現れました。
それが上下に広がると、中から爬虫類のような顔が出てきました。
間違いない、奴がペナンガランだ。
そして下を確認すると、また空中の割れ目に入って行きました。
次はポチャリーヌのすぐ上から出て来るはず!
バハムートも、木陰から飛び出す準備をしてます。
……
おや? 出て来ない?
少し待ってみましたが、なかなか出て来ないよ。
ポチャリーヌも疑問に思ったのか、上を見てペナンガランを探してる。
まさか、待ち伏せがバレたの?
そう思った時……
「きゃあ~~~~!」
誰かの悲鳴が聞こえた!
それはミメットさんの悲鳴だった。
彼女が隠れていた場所を見たら、ペナンガランの手に掴まれて、空中に持ち上げられて行くところだったのです!
「え? なんで?」
「クソッ! 奴め、選り好みをしやがったな!」
そう言ってポチャリーヌは、リリエルちゃんを抱えて、ミメットさんの所に向かって走って行きました。
あたしも隠れていた場所から飛び出して、急行します。間に合え!
ミメットさんが、ペナンガランの手から逃れようと抵抗していますが、奴の力が強くて振り払う事が出来ないようです。
このままじゃまずい!
かと言ってブレスで攻撃も出来ません。ミメットさんが近すぎます。
リリエルちゃんが飛んで行って、触って転移させようと手を伸ばしています。
しかし、リリエルちゃんの手が短いからか、あとちょっとの所で間に合わなかったのです。
ミメットさんは、空間の割れ目に引っ張り込まれてしまった!
「奴はどこ行った? ミメットは無事か?」
ポチャリーヌが自分の肩に乗っている影魔に手を置いて、亜空間にいる影魔と連絡を取っているようです。
「居たっ! まだ無事なようだぞ。だが、4本の腕に掴まれて運ばれている。早く追わないと血を吸われるぞ!」
「大変なのだ! 早く向こうに行かないと! なのだ!」
「そうよそうよ!」
「まず、誰が亜空間に入れるのだ? 影魔は一度に一人しか運べないぞ。使徒組はどうだ?」
ポチャリーヌに言われて、ラビエルとミミエルが顔を見合わせた。
「通常空間での転移は出来るが、亜空間への転移は、特別な条件を満たさなければ無理なのだ」
「うん、そうそう」
ラビエルの説明に、ミミエルが頷いていた。
「そう言えば、ムートは転移ポータルが使えるんじゃないの?」
ミミエルが思い出したように言った。
「まだ母上のように、自在には使えないんだよ。つながる場所が安定しないしね」
バハムートからアリコーンに戻ったムート君が言いました。
転移ポータルとは、ディアナ様がたまに使っている、移動のための出入り口の事ですね。
「何にせよ間に合わないって事だな。しょうがない、一人ずつ亜空間に入るぞ」
「私はここで待ってますぅ。ミメットさんが自分で戻るかもですし」
ポチャリーヌが影魔に指示を出そうとするのを、リリエルちゃんが止めました。
「ふむ……エルフだし、空間系の魔法が使えるのかもしれんな。ならばリリエルはここで待機だ」
「ハイですぅ」
リリエルちゃんはお留守番になりました。
あたし達は影魔に連れられて、亜空間に入ります。それと影魔が連れて行けるのは、せいぜい人間サイズだと言うので、ムート君は人間の姿になっています。
亜空間に入ってからは、すぐにアリコーンに戻ります。そうしないと空中で動けないからです。ほとんど地面が無い場所なので。
ちなみに影魔は、亜空間に限り、空中を浮かんで移動が出来るそうです。
そして、影魔と一緒に亜空間に突入です。
あたしとラビエルは足元の影から、スルリと入ってしまいます。この感覚は、くせになりそう。
入った先には、巨大な木が浮かんでいた。
しかも木の両側に葉が茂っていて、根っ子がありません。周りにも似たような小さな木が浮かんでいて、こちらは根っ子があります。
でも根っ子って動きましたかね? ウネウネ動いてるよ。
そんでもって飛び回ってる。
向こうを見れば、丸い岩が一列に並んで、岩が交互に上下してる。
何だかどこかのゲームの画面みたいだ。
こんな所にも生き物がいました。
フワフワと空を飛んでいます。体の両側から長いひものような物を伸ばした、まるで凧のような姿だ。
他にも凄いスピードで飛んでる者もいます。
あたしの飛んでる高度より下には、螺旋状の長細い生き物が、回転しながら飛んでいます。
おっと、不思議な景色に目を奪われてる暇はないです。
早くミメットさんを探さなくては。




