第十一話 マーベラス突入作戦 前編-4
そして4人の隊長格は
六刃花隊 隊舎に隣接する飛行場へと向かった。
先んじて魔進の準備をしていたリナリアに歩み寄り、アキレイが声を掛ける。
「リナリア、待たせたな」
「兄さん!! おっそーい!!
次遅かったら、ぶん殴っ──あっ! ラナンキュラス隊長……
ゴホン。お兄様? 次遅れるようなことがあれば、文房具をお貸し致しかねますわ!」
「文房具……借りたか?」
「リナリー……君は優しい子だね」
「はいっ、お兄様に私はいつもいつっ」
「で?どれですか?」
「うるさっ──あっ、お静かに願います!」
「無理しないで。僕は普段のリナリーが好きなんだ」
リナリアは淑女然とした振る舞いを意識するも、所々でボロが出る。
意識的な振る舞いである事を見通して声を掛けるラナンキュラスの言葉を受けると、我に返って手配した魔進の報告に移る。
「し、失礼しました!
一番奥にあるのが六刃花隊専用 移動用飛行魔進
"亜那魂蛇"です!!
100……あっ1000人でした!
1000人を丸呑みに運べます!!」
「1000って……乗り込むの何人と思うとんねん」
「え? 六刃花隊500人と八刃花隊500人かと」
「え? 僕の隊もいくの?」
「待て待て乗りすぎだ! 当初の予定は
六刃花隊500人のつもりだったんだ」
「だって亜那魂蛇を準備しろって言うから。
もうみんな乗ってるよ?」
目的にそぐわない大型の魔進と大規模な編成に皆が驚き、更には搭乗済みであるという妹の言葉にアキレイは頭を抱え、溜息混じりに指示内容を再度告げる。
「リナリア……亜那魂蛇ではなく、小型機の亜那魂蛇Iだ……」
「えーー!」
「そんな大勢で乗り込むなんて
戦争しにいくようなもんやないか」
「4人で250人ずつ率いればいい。少数精鋭には変わりないからな。
組み分けは船内で行う」
伝達事項の食い違いで魔進や人員数の変更こそあったものの、それを踏まえて今後の流れを決めていく中、アキレイがリナリア以外の面子に向けて話を進めている事に気付いたキキョウは、彼に尋ねる。
「リナリア副隊長は行かれないのですか?」
「あぁ。リナリアには、二刃花隊と一緒に
今晩行われる隊葬の準備をしてもらう」
「僕の隊の女の子達からも
準備を手伝いたいと沢山申し出があった。
キスツス隊長は全女性隊士の憧れだったからね。
本当に惜しい人を亡くした」
「せやな。移動要塞を派手にぶっ壊して
キっちゃんを盛大に弔おうや。なぁ、キキ」
「……そうですね」
先の事件にて亡くなった二刃花隊 隊長キスツスの葬儀を行う旨の発言に、ラナンキュラスも自分の隊の反応を語り
皆に慕われた隊長の死を改めて認識したキキョウは、その表情に悲しみの色を浮かべて小さく頷いた。
それを見たジニアは 事を進める為に用いる大型魔進を見上げながら思案する。
「ほんで、この大きすぎる移動用飛行魔進を
どうやって見つからんくするか」
「任せて」
『剋刃四十七・天遣曲法』
ジニアに声をかけて一歩前に出るラナンキュラスが魔進に手をかざして刃術の詠唱を行うと
機体が受ける光が歪み、周囲の風景と同化していく。
「凄い……四十番後半の超高等 刃術
こんなに大きな船体が一瞬で見えなくなった」
「まだだよ」
『剋刃の三・走疾』
感嘆の声を漏らすキキョウにそう告げると、ラナンキュラスは更に刃術を行使すると
詠唱と共に巻き起こる旋風が機体を包み、その質量が激減したかの様に浮き上がる。
「キャッ! 風が……周囲を!!
下級刃術なのに、この風圧!!」
『剋刃四十一・五角羅生門』
強い風に目を閉じるリナリアを横目に、更に詠唱を行い
五角形の光り輝く障壁が多面体を形成し、魔進を包み込む。
立て続けに行われる詠唱。その高度な技術に感心した様にジニアが評する。
「三重詠唱か。やるやないか」
「これで仕上げさ」
『滅刃の三・波雷』
「熱気……いえ、微弱な電気?
五角羅生門の障壁の周りに電気が渦巻いてる!!
こんな使い方……見たことがない……」
四つ目の刃術の障壁は電気を纏い、その並外れた技量と発想を目の当たりにしたキキョウは驚きを隠せずにいた。
刃術に秀でた隊のトップに相応しい離れ業に、アキレイは賞賛の言葉と共に その目的を察して問う。
「見事だ。機体を見えなくして軽くし
周りを囲む障壁の上を更に電気で覆うか。
マーベラスの索敵レーダーから探知されないためだな」
「そういうこと」
「しゃーっ!ほな、行くで!!
ふざけたオモチャをぶっ壊しにな!!!!」
千刃花〜帝国特務戦闘部隊〜
移動要塞マーベラス 突入作戦 前編(完)




