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元悪魔、人間に生まれ変わったので神を皆殺しにします~世界をリセマラしようとする神を止めろ  作者: 犬型大


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9暗天3

「やっぱりな……」


 ヨルは悠々と山を降りていく。

 他でも旗の奪い合いが起きている。


 しかし奪い合っているのは動揺していない子供たちだけで、動揺している子供たちは旗の奪い合いを横目に必死に走っている。

 二つに分かれていた子供たちには何かの違いがある、とヨルは見ていた。


 少なくとも動揺していない子供たちは、この状況のことを知っているのだ。


「となると、あいつらは暗天側のガキなのか?」


 たとえ先に誘拐され何が起こるのか説明されていたとしても、あそこまで冷静ではいられない。

 そうであるならば、答えは一つ。


 動揺していないガキどもは最初から暗天側の存在だったのだろうと考えた。


「学校じゃ教えてくれない、世界の闇ってやつかな?」


 そろそろ他の子供たちも頂上に着く頃。

 旗がないこと、そして道中で奪い合いが起きていたことにも気づくだろう。


 後ろから追いつかれて側を狙われると面倒だ。

 傾斜も緩やかになってきたので、ヨルは再び走り出した。


「おっ、浜が見えてきたな」


 特に妨害もなく、監視の目を感じながらスタート地点となった浜辺に戻ってきた。


「おやっ?」


 浜辺にはヨルより前に走っていた子供たちが先に戻っていた。

 しかし、顔ぶれを見てヨルは少し驚いた。


 二人ほど違う奴になっている。


「旗奪われたのか……」


 どうやら他にも待ち伏せをしていたのだろう。

 側を奪われてしまったようだった。


「女二人……男三人」


 先に戻っているのは五人。

 どいつも油断ならない目をしている。


 うっすらと魔力を感じるので、五人とも覚醒しているのだろうとヨルは感じた。


「……ん?」


 先頭を走っていた紫がかった髪の女の子が、ヨルのことをじっと見つめている。

 正面から見ても綺麗な顔をしているな、と思いながらヨルは視線を返す。


 何となく見たことがある気がするという感じは相変わらず。

 こんな綺麗な顔しているなら、人に興味のないヨルであっても覚えていそうなものだが、どこで会ったのか思い出せない。


「あのガキが気になるようだな」


 シノヤマが目つきの悪い男に声をかける。

 目つきの悪い男はずっとヨルのことを見ている。


 何をそんなに気にしているのか気になっていた。


「ガキが覚醒したと聞いて、急遽誘拐することになったが……あいつはただのガキじゃない」


「マナベ……ガキはガキだろ」


「あいつの雰囲気はこちらの子供たちに似ている。首掴まれて蹴り返してくるのが普通なはずない。それに……」


 目つきの悪い男マナベはスッと袖をまくる。


「何だそれ?」


「あのガキにやられた」


 マナベの腕にはヨルが爪を突き刺した傷跡が痛々しく残っている。


「ガキにやられたのか?」


「ただやられたんじゃない。あのガキ……指に魔力を集中させて突き破りやがった。もっと握力と魔力があったら手首を折られていたかもな」


「お前が油断したんだろ」


 シノヤマはマナベのことをバカにしたように見ている。

 子供に怪我をさせられたマヌケと思っている。


「……これが油断だったかどうか、そのうち分かる」


 マナベとしては忠告のつもりだった。

 しかし真面目に聞くつもりがないのならそれまでだと袖を戻す。


「まあそうだな。これからだ。全部な」


「にしても……天主様の娘を参加させてもいいのか?」


「それも天の意思さ。あのお方は自分の娘だろうと甘い扱いはしない。使えないなら……使い捨てられるだけだ」


「あれだけの見た目なら使いようはいくらでもありそうだがな」


「まあ、あの子自身の希望もあるらしい。何にしてもだ、俺たちはあいつらを刃に磨き上げる。お前も甘やかすなよ?」


「同じセリフを返すよ」


 シノヤマとマナベは睨み合う。

 空は晴れ渡っているのに、空気はやたらと重たかった。


 ーーーーー


「今後も旗の奪い合いは行う。旗を得られなければその日のメシは抜きだ!」


 子供たちが全員戻ってきた。

 旗を持っているのはほとんどが暗天の子供たちで、ヨルももう一人ぐらいしか誘拐された子供で旗を確保できたのはいなかった。


 そして浜辺から移動して旅館のような建物にやってきた。

 そこでは食事が用意されていたけれど、食べられるのは旗を持って帰ってきた子供だけ。


 他の子供たちは目の前で食事をとる様子を見ていることしかできない。

 なかなか気まずいが、ヨルはおかわりまで飯を食べた。


 これから先、体力は必要そう。

 他の子供に遠慮なんかしている場合じゃないのだ。


「そして部屋も与えられる。個室は旗を持ってきたものだけ。残りのガキはここだ!」


 旗を持ってきた子供には個室が与えられた。

 ベッドぐらいしかないような場所だが、旗なしの子供の部屋を見たら遥かにマシだと思えた。


 旗なしの子供たちは十人ぐらいが同じ部屋に詰め込まれ、布団すらなく床に寝かされるのだ。


「徹底した差をつけてるな。競争を煽るつもりか」


 食事の様子を目の前で見せつけたり、部屋の違いもしっかり分からされた。

 これは子供たちの競争を煽るためだろう。


 旗を取らねばこれから生きられない。

 飯のため、寝るために否が応でも子供たちは争うことになる。


「なかなか……面白いことするじゃないか」


 ヨルは服を渡された。

 動きやすい黒ジャージで、個室で着替える。


 胸のところには戻ってきた順番の6と書いてある。

 もう二つぐらい6と書いてくれればいいのに、と思う。

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