48孤独な戦い1
「次の試験の話をする」
第三段階の試験が終わり、ヨルたちはまた集められた。
子供たちの数はおよそ半分以下に減った。
ヨルたち以降の戦いはさらに激化をしていた。
旗を持って他の旗を奪いにいく組もあれば、逆に旗を持って逃げ回るなんて組もあった。
互いに旗を取り合って、失格になったもののアーティファクトを一個ずつゲットしたなんてグループもあった。
協力、裏切り、奪い合い、そして猿の乱入もあって、計画通りに二時間を過ごした人の方が少ない。
旗を全て奪ったところも猿のせいでほとんどいなかった。
「次で第四段階……ここではお前ら個人の力を見せてもらう。相手はモンスターだ」
後ろで手を組んだセキイシはモンスターという言葉の反応を確かめるように、ゆっくりと子供たちのことを見回す。
多少動揺している子もいるが、多くの子は平然としている。
もはやただモンスターと戦うというだけでは揺さぶることも難しくなっていて、セキイシは当然のことだと少し目を細める。
これでみんなが動揺していたら一喝していたところだ。
「第四段階では三種類のモンスターと戦ってもらう。三種類全てを倒したものが合格だ。戦いは個人で行われる」
ここまででもモンスターはチラチラと出ていた。
ただそれらを倒せと言われたことは一度もない。
しかし、とうとうモンスターを倒すことが試練の内容となった。
さらに次は個人戦らしい。
「期間は、半年」
「……おっと、結構長いな」
「途中でリタイアは無しだが、挑まないということはできる。逆に期間内なら何度でも挑むことができる」
「……なんでそんな顔してるんだ?」
ふと横を見るとレオナがショックを受けたような顔をしている。
こんな顔をするのは珍しいとヨルは思った。
けれども今の説明のどこにショックを受ける要素があったのかは謎である。
「だって半年もヨルと離れることになるのよ!」
「あぁ……そういうことか」
何を心配しているのかと思ったら、少し予想外のことだった。
第四段階の試験が始まるとヨルとは離れ離れになる。
そのことがレオナにとってショックだったようだ。
「もちろん試験を早く通過すれば早く出られる」
続くセキイシの言葉にレオナの目が光る。
「なら最速でクリアね」
「……そう簡単にはいかないだろ」
「ヨルは私といられなくて寂しくないの?」
パッとレオナの目から光が消える。
答えを間違えると今ここで死んでしまいそうな圧を感じる。
「………………最速を目指すよ」
気の利いた言葉は浮かばなかった。
なので出来る限りのことをするという程度に留めるしかない。
「本当?」
「もちろん……報酬もあるだろうしな」
レオナに詰め寄られてヨルは目を逸らす。
こんなふうに押されることなど悪魔の時を含めてもほとんどない。
「じゃあ……お願いがあるんだけど……」
レオナはそっとヨルの裾を掴んで頬を赤らめる。
こうすると普通の美人のなのだけど、とヨルは思ってしまう。
「お願いってなんだ?」
もはや断るという選択肢はない。
とんでもない無茶でもない限りは叶えてやるしかなかった。
「下着……ちょうだい?」
「………………はい?」
ヨルは怪訝というか驚いたというか、複雑な表情をする。
こんな顔をさせるのもまたレオナぐらいのものだった。
「できれば今日一日中履いたやつ。長かったら半年も離れるんだから」
「何するつもりだ?」
「ナニするのよ。ジップロックに入れて保管して使うわ」
「…………………………好きにしろ」
渡したくない。
そんな思いを飲み込むのにずいぶんと時間がかかった。
しかしそれでレオナが大人しくしているのなら、むしろ安い代償なのかもしれないと考えることにした。
「ありがとう。大切にするね」
これから婚約指輪でも貰えるのか、というような笑顔をレオナは浮かべる。
周りの男どもは滅多に見られないレオナの笑顔に顔を赤くしているが、何を得られて笑顔になっているのか知っている奴は一人もいないのだった。
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「食事は毎日三食、服は月一度支給してやる。必要なものは下にあるはずだ。ただし怪我をしてもあるのは簡易的な救急箱だけだから気をつけろ」
研究所のさらに地下には無数の部屋が用意されている。
どうやってこんなもの作ったのか知らないが、こうした試験のためだとしたら結構狂った組織だなと改めて思う。
その部屋の一つにヨルは案内された。
「……そこそこの広さはあるな?」
部屋の中は一人暮らしの部屋ぐらい。
天井は高めに作られていて武器を振り回すぐらいは出来る。
部屋の隅には布団が畳んで置いてあり、別の隅には服なんかが入った箱がある。
外側から施錠されて開かなくなったドアの横には簡易的な水道があった。
水を飲むぐらいは出来るようだった。
そして出入り口とは反対側にもドアがある。
その向こうには試験の相手となるモンスターが待ち構えているのだ。
「ここに半年もいたらおかしくなりそうだな……」
何もない。
娯楽も他の人も音もなく、ただ一人だけの空間。
もしかしたら孤独に耐えることそのものも試験なのかもしれない。




