46宝物庫もまた試練5
「だいぶ奥まで進まれたようですね」
「運が良かったんです」
「運だけでは進むことはできませんよ」
宝物庫を守る男の手が離れる。
「次はあなたです」
しかし宝物庫を守る男は見ていなかった。
手が離れた瞬間に、ヨルがニヤリと笑ったことを。
「触られるの嫌って言ったら?」
「それは困ります。では持ってきたものを見せていただくのとお手を拝借願っても?」
「……手ならしょうがないわね」
本来ならヨル以外の男には触られたくもない。
けれどもチェックが必要なことはレオナも理解している。
「本当に二個だけ……持ってきたのか?」
「何を言ってるんですか? 二個だけって約束ですし、調べられたじゃないですか?」
ヨルの横にトウジンが立つ。
ニヤリとした笑顔をトウジンは見逃さなかった。
しかしその笑顔の意味はヨルしか分からない。
もしかしてアーティファクトを多く持ってきたのか、とトウジンは予想した。
そんなわけないなだろうとさらりと答えるヨルのことを目を細めて見つめるが、ヨルの目には動揺のカケラもない。
「ううむ……」
確かに、レオナと違ってちゃんとボディーチェックまでされていた。
誤魔化して持ち出すことなどヨルには厳しい。
ただトウジンの予感は当たっていた。
ヨルは二個以上に物を持ち出している。
剣とバングルの他にもう一つ。
「まあ、色々あったのでお腹いっぱいですよ」
持ち出したのにどうしてバレなかったのか。
それはヨルが宝物庫の中でアーティファクトを食べてしまったから。
アーティファクトを食うなとは言われていない。
あまりたくさんなくなるとバレるだろうし、文字通り一個でお腹いっぱいになってしまったので他には手を出さなかった。
それでも規定以上の数を持ち出してもバレなかった。
バレなきゃいいだろう。
これもまた暗天が提示するルールの外のルールだ。
「全員の確認が終わりました。合計十個……持ち出しましたね。それではお引き取りください」
「冷たいものだな」
「私の仕事はここを守ることだけですので」
宝物庫を守る男は結局最後まで表情を崩すこともなければ、ほとんど無駄口を叩くこともなかった。
ヨルたちは来た道を引き返していく。
「また霧が……」
戻るとすぐにまた霧に包まれる。
「こわーい」
「…………そうか」
レオナがわざとらしくヨルの腕にしがみつく。
全く怖いと思っていないだろうとヨルは思うのだけど、一瞬迷いつつも口に出すことはなかった。
宝物庫においてヨルが限界だったところでも、まだレオナは先に進むことができそうだった。
まだもう少し力には差がある。
腕にレオナの胸の感触を感じるよりも、腕を折られないだろうかと思いながらヨルは歩いていく。
「不思議な霧でしたね……」
そのうちに霧は消えていき、気づいたら止めた車のところに出てきていた。
試練一回につき二時間かかる。
そのために数日に渡りながら試練は続き、早めに試験が終わったヨルたちはゆっくりと休むことができたのだった。




