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元悪魔、人間に生まれ変わったので神を皆殺しにします~世界をリセマラしようとする神を止めろ  作者: 犬型大


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44宝物庫もまた試練3

「自分が先に」


 宝物庫だと言われても信じ切ることはない。

 もしかしたら宝物庫ではないかもしれないし、宝物庫だから安全とも言い切れない。


 この警戒心の高さもまた暗天の教育の賜物。

 コウヤがリスクを負って自ら先に降りることを提案したので、ヨルは任せることにした。


 一段ずつ慎重に降りていく音が小さく聞こえてくる。


「大丈夫です!」


 ほどなくして下からコウヤの声が聞こえてきた。


『宝物庫は簡単ではないぞ』


「えっ……」


 まだ警戒を続けてタクマが次に降りていく。

 そんな様子を眺めていると、すぐ耳元で声が聞こえてヨルはハッとしたように顔を上げる。


 今の声はトウジンのものだった。

 だけどトウジンは少し離れたところにいる。


 目が合うとトウジンは目を細めて笑った。


『耳に聞こえる音に惑わされないことだな』


 トウジンの口元がわずかに動いて、また耳元で声が聞こえてきた。

 レオナやロウキにはトウジンの声が聞こえておらず、ヨルにだけ聞こえているようだった。


「どうかしたの?」


「いや……なんでもない」


 どんな方法を使ったのかは知らないが、ただからかってきたということはないだろう。

 ロウキはさっさとハシゴを滑り降りてしまったので、レオナとヨルも同じように降りていった。


「……トウジン様は彼がお気に入りなのですか?」


「ヨル、とかいう子のことなら気に入っているぞ。毒を扱うには残虐性が必要だ。命を命とも思わないような強力なものが、な。あの子にはその素質がある」


「そうですか。ですが中に入ってまで手助けはできませんよ?」


「そこまで過保護にするつもりはない。自ら乗り越えねばならないものだからな」


「アドバイスを送っておきながら何を言っているのですか」


 ーーーーー


「ここが宝物庫……」

 

 宝物庫は細長く白い部屋が伸びている。

 壁沿いにテーブルがあったり物をかけられるようになっていて、色々なものが置いてある。


「なんか変な感じがするな」


 降りてきたヨルは妙な違和感を感じていた。

 少しの耳鳴りがして、そこにいるだけで具合が悪くなるような嫌な雰囲気があった。


「おい、大丈夫か?」


「なんだか苦しいですね……」


 ヨルはピリピリとした感じを受けるだけだが、タクマは少し顔色が悪い。

 タクマに声をかけたロウキも平気そう。


 この中で具合が悪そうなのはタクマだけである。


「先に進めばいいもんあるんだな?」


 置いてある物を軽く眺めながらヨルたちは奥に進んでいく。

 物の横には軽くアーティファクトなんかのことが書いてある説明書きが置いてあった。


「くっ……」


「あんまり無理はするなよ」


 タクマの顔色がかなり悪くなってきた。


「進むほどに気持ち悪く……」


「なるほどな。これが上で言ってたやつだろな」


「奥に行くのは簡単じゃないってやつ?」


「ああ、こういうことなんだろ」


 何かが宝物庫に待ち受けているだろうことは予想していた。

 何が起きているのか謎だが、力のないものは宝物庫の奥に進むことすらできないようだ。


「お前はここで脱落だな」


 無理をして進むとどうなるのか分からない。

 タクマはこれ以上進むことを諦めて、宝物庫の手前でアーティファクトを探すことにした。


 ヨルたちはさらに奥に進む。

 耳鳴りのような音が強くなっていき、体に重さを感じる。


 頭が締め付けられるような感覚にヨルも顔をしかめる。


「まだ下に降りられるようだな」


 奥まで進むと下に向かう階段があった。

 できるだけいい物を持ち帰りたいので、ヨルはさっさと階段を降りていく。


「ちょっと……キツくなってきたな」


 階段を降りると感じる違和感が強くなる。

 コウヤとロウキの顔色も悪くなり始めてきた。


 ヨルもレオナはまだ讃えられるが、二人の限界は近そうだった。


「くっ……諦めたらどうですか?」


「くそッ……お前こそ!」


 コウヤとロウキはどちらが先に脱落するのか競い合っている。

 二人は今や若干ライバルのようになっている。


 コウヤはあのままやっていたら負けていただろう戦いで仲間になったくせに、ロウキがあたかも対等であるかのようにヨルと接することを気に入らなかった。

 対してロウキは負けたつもりもないし、コウヤが年も下なヨルにヘコヘコしていることにムカついていた。


 表立って衝突することはこれまでなかったものの、互いに負けたくないと思い始めている。


「グゥ……」


「へっ、限界か?」


 ゆっくりとした足取りで一歩ずつ競い合っていた二人だったが、コウヤの足が止まる。

 二人して浅い呼吸を繰り返し、強い耳鳴りに互いの声すら遠くに聞こえるぐらいになっていた。


 コウヤよりも一歩前に出てロウキは勝ち誇った顔をする。


「お前らいい加減にしろ。競争じゃないんだぞ」


 ヨルもだいぶ辛くなってきていた。

 まだ耐えられるにしろ、最初の頃の余裕はもうない。


 宝物庫で重要なのはどこまで行けるかじゃない。

 何を持ち帰るかだ。


 ギリギリの位置の方がいい物はあるのだろうが、ギリギリの位置では物を正しく判断する余裕がないことになってしまう。

 限界よりも少し手前で良い物を判断する必要がある。


「…………ちくしょう」


 ヨルはまだ先に進んでいく。

 ロウキはその背中を悔しそうに見つめていた。

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