42宝物庫もまた試練1
「旗四本……ですよ?」
自分たちの旗を含めると五本。
奪い取った旗は四本。
試験の最初に説明されたものでは、旗を三本奪い取ればアーティファクトが五つもらえる予定だった。
ヨルたちは試験の内容を飛び越えて旗を奪い取った。
わざとらしく一人一本の旗をと持たせ、ヨルはセキイシの前でヒラヒラと見せつけるように旗を振る。
「こんなこと前代未聞だな」
セキイシは渋い顔をする。
モンスターを撃退したのみならず、旗まで追加で奪い取ってしまうことは全く想定していなかった。
「優れた功績にはそれなりの報酬がつくはずですよ?」
ゴールドラインウルフの時と同じく、目覚ましい結果を残したのなら何かの褒美はあって然るべき。
ヨルは期待したように軽く笑顔を浮かべる。
ヨルもレオナ以外の三人は地位の高いセキイシに緊張したような面持ちであった。
「それは分かっている。こちらとしてもただで終わらせるつもりはないが、何をやるべきか……」
実質的にはサルを倒した。
このことだけでも何かプラスアルファで報酬を与えるべきことである。
しかし加えて旗も確保した。
相手の旗を奪い取ることが目的の試験で、より多くの旗を確保したのにも報酬が必要だ。
想定を超えた功績に何を与えるべきかセキイシは悩んでいた。
「より多くのアーティファクトを与えるのはどうだ?」
「トウジン様」
次のグループの試験も始まっているが、そんなものを機にする余裕もない。
正しい報酬を与えることは次へのやる気にも繋がるし、逆に頑張っても報酬がもらえないとなると今後の積極性に関わる。
そんな時に口を挟んできたのはトウジンだった。
「面白いものを見せてもらった。その前の連中はチマチマとしてつまらんかったが、お前ら知略に力に、相手の再起を妨げる残虐性まで見せた。あの小憎たらしいサルもお前らには敵わなかった」
トウジンは朗らかに笑う。
暇な観戦だったが、自ら打って出たヨルたちはなかなか面白かった。
ヨルにとっては知らん爺さんだけど、相手が何者なのかを知っているコウヤやロウキはグッと背筋を伸ばす。
「しっかりとした活躍、功績。アーティファクトを倍の十にしてもいいのではないか?」
「……まあ確かにそうかもしれませんね」
「彼らの功績に報いるべきだからな」
トウジンはチラリとヨルのことを見る。
上手く話を誘導できたとトウジンは内心で満足している。
何もヨルたちの実力に感動したからと口を出したわけではなく、優秀な若者に唾をつけ、軽く恩を売る。
トウジンなりの打算があった。
こうなるとトウジンの口添えでいい報酬を引き出せたようにヨルたちには映る。
「彼らを宝物庫に」
セキイシは試験の監督者なので、その場を離れられない。
軽く手を上げて部下を呼んでヨルたちを案内させる。
「俺も行こうかね……少し興味がある」
トウジンはニヤリと笑い、ヨルたちの後をついていく。
「……毒蛇が目をつけたか。まあ初日の騒動もあるし、可能性はあると思っていたがな」
施設内での動きはセキイシに全て筒抜けだ。
ヨルが初日から暴れていたことはもちろん知っている。
今回の試験でも何かやってくれるかもしれないと思っていたし、実際に前二つのグループとは全く違う動きを見せた。
見学していたトウジンもヨルが相手の足を折って反撃できないようにしていたのを見て、興味を持っていた。
このことがヨルにとって良いことなのか、悪いことなのかはセキイシにも分からない。
「何をなされるつもりなのか……」
セキイシは小さくため息をついて、次のグループ戦いが映し出されるモニターに視線を向ける。
「まあ、あいつらのおかげで一つやり方は変わったな」
自ら旗を持って移動する。
この行動が許されると知って、ただ生き残りだけを目的とした二時間の様子見は無くなりそうだった。
「宝物庫……彼らは何を手にするだろうな」
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「お前たちは宝物庫を知っているか?」
ヨルたちは車に乗せられて移動している。
そこにヌッとトウジンも乗り込んできた。
ヨルもなんだこの爺さんとは思うのだけど、口には出さない。
見た目に反して強いことは肌に感じていた。
「俺は何も知らないですね」
「宝物庫……存在は聞いたことがあります。暗天の中でも最重要の警備が敷かれているとか」
「その通り。アーティファクト、とは言っていたが、宝物庫にはアーティファクトの他に霊薬や武器、防具、それに貴重なモンスターの素材なんかも置いてある」
助手席に乗ったトウジンはミラー越しにヨルを見ている。
いちいちリアクションを確かめるような、そんな目をしていた。
「アーティファクト以外でも気になるものがあるならそれを選ぶといい。ただし、一人二個だがな」
「良いものが置いてあるんですか?」
「暗天がさまざまなところから集めたものが置いてある。良いも悪いもある。ただスキルブックだけは別に保管してあるがな」
「……それと、あなたは何者なんですか? 名前も聞いていないのですが」
運転している暗天の人も緊張しているのが伝わってくる。
いまだに名前も何も自己紹介していないので、ヨルはトウジンの正体を知らないままだった。




