38小隊戦11
「おい、お前がこれ持ってろ」
「あ、はい」
ヨルは旗をタクマに渡した。
先端についている布は大きく、風を受けると大きくはためく。
風を受けると結構引っ張られて邪魔。
これならタクマにでも持たせておこうと思った。
「命懸けで守れ」
「わ、分かりました!」
奪われたら奪い返せばいい。
だから旗持ちぐらいはやってもらう。
「おっ、あったな」
拠点が見えてきた。
できれば71組なら楽なのになと思いながら目を凝らす。
「んん? 六人……」
「一人多いですね」
拠点にいる人数を数えると五人ではなく六人いる。
「……はぁ……またくだらないことしようとしてるな? いくぞ、全員倒す」
「旗を要求すれば……」
「馬鹿言え。二時間の制限時間内なら奪い返すこともできるんだ。優しくしてつけ上がると、団結して襲いかかってくるぞ」
目指すは旗の全確保である。
旗を要求して奪うだけなら話は簡単なように思えるかもしれないが、後々面倒なことになる。
奪われた旗を取り戻そうと他の三つのグループが団結するかもしれないのだ。
「殺せとは言わない。だが手足の一本、反撃の意思は叩き折っておけ」
「本当にこいつ暗天じゃなかったのか?」
「あっ? 見て分かるだろ。暗天で育ってこんな純粋無垢なイケメンになるわけがない」
「そうだな。暗天じゃその最悪な言葉選びは教えないもんな」
「ともかくあいつらは今手を組もうとしてる。あいつも逃すな。やるぞ!」
ヨルたちは走り出す。
五人組の方は運良く71組。
一人の方は18組であった。
「あいつら……6組だ!」
「こんなに早く攻めてきたのか……! まずい、早くこのことを伝えなきゃ!」
走ってくるヨルたちを見て六人は動揺する。
これまでの二回の試験では動き出しはかなり遅かった。
こんなに早く攻め込んでくるとは思いもしなかった。
18組グループの青年はヨルたちを見て、すぐに逃げ出した。
「逃すか!」
ロウキは小型のナイフに魔力を込めて投げる。
狙いは逃げる18組グループの青年だ。
「チッ!」
18組グループの青年は舌打ちしながら剣を抜く。
振り向きながら飛んでくるナイフを弾き飛ばす。
「なっ……!」
弾かれて空中を回転するナイフが、パッとロウキに替わる。
「暗天のくせに随分と生温いことすんじゃねえか!」
ロウキが大型のナイフを振り下ろす。
剣で防御すると、木製の武器同士がぶつかり合う音が鳴り響く。
「あ、あっちは四人だ! た、倒すんだ!」
旗を守らねばならない以上は逃げることもできない。
ロウキが18組グループの青年と戦い始めたので、ヨルたちは四人しかいない。
一人の優位。
71組グループの子たちもヨルたちと戦う覚悟を決めた。
「女を狙え!」
ロウキがスキルを使ったのを見て、ロウキが一組強いと考えた。
さらには6組グループ紅一点のレオナを一組弱いだろうと二人で狙う。
「任せて」
二人に狙われてもレオナは動じない。
全ての要素を無視してただ表面上だけで物事を判断したら、レオナを狙うのは正解だったかもしれない。
けれどもレオナは弱くない。
むしろグループの中で一組強いかもしれないのだ。
「任せたぞ」
ヨルは少しの心配もすることなく、女を狙えと指示を出した青年を狙う。
指示を出すということは、有象無象の中でもマトモなやつということ。
「ひっ……うわっ!?」
「チッ!」
ヨルが魔力を込めて剣を振り下ろす。
乱雑な一撃はレオナやコウヤだったらあっさりかわしてしまうものだろう。
けれども71組リーダーの青年はヨルの剣を自分の剣で受け止めた。
それでもよかったのだけど、71組リーダーの青年の剣はそのまま叩き折れてしまった。
弱い。
ヨルは思わず盛大に舌打ちしてしまった。
「ガハッ……!」
ヨルは71組リーダーの青年の腹を蹴る。
肋骨を折れる音が聞こえ、ぶっ飛んでいく。
拠点となっている土壁に衝突して止まり、白目を剥いて地面に倒れてしまう。
「何してんだ、タクマ」
「こ、こっちは旗持ってるんですよ!」
レオナも二人をあっさり倒し、コウヤも一人を制圧していた。
残りの一人はタクマの方に向かっていたのだけど、まだ倒せずにいた。
流石にヨルたち三人が規格外すぎるのである。
「こ、降参しないか? 今なら気絶させるだけで済ませてやるから」
ロウキの方も18組グループの青年を倒して、残り一人になった71組グループの少年は青い顔をしている。
「み、見逃してはくれないのか……?」
「敵になるかもしれないから、ごめん」
こうなったらもう降参するしかないと71組グループの少年も思うのだけど、ただ見逃すわけにはいかなかった。
「……あんまり、痛くは……しないでくれよ」
後ろではヨルが気を失った71組グループの他の子の足首をへし折っている。
少なくとも二時間で治る怪我ではない。
タクマに任せればまだ気絶で済む。
71組グループの少年は泣きそうな顔をして剣を投げ捨てた。
「……ごめん!」
タクマは71組グループの少年の頭を槍で思い切り殴る。
「……甘いな、お前は」
「す、すいません……」
「まあ、いいさ」
気絶だって二時間いっぱいぐらいは持つだろう。
それに起きたところでタクマと同等ならそんなに強くない、とヨルは見逃してやることにした。




