36小隊戦9
「どの四組が争うかはこれからくじ引きで決めてもらう」
旗の防衛か、奪取かで大きく行動は変わる。
そして対戦相手となる他の組によっても変わってくるだろう。
次の試験に残る子供の数も戦略によっては大きく違ってくることになる。
「6組……第三グループだ」
代表してヨルがくじを引く。
三と書いてあったので、ヨルたちは三番目のグループで戦うことになる。
くじ引きが進んでいき、対戦相手が決まった。
第三グループはヨルたち6組を含めて、18組、34組、71組となった。
「あちらに71組がいますね」
どんな奴らが対戦相手なのかと探してみる。
71の名札をつけた五人組はすぐに見つかった。
「あいつらは寄せ集めだな」
強い奴を中心にして集められたグループは他の奴らも自信があるように見える。
対して必要に迫られて結成されたグループには中心となる人物がおらず、不安げで心配が顔に出ている。
もう一つ、グループに与えられた番号は三日目にグループを申請した順に与えられている。
早く申請すれば早い番号となっていて、遅ければ番号も大きくなっていた。
余裕を持って申請すれば遅い番号になることもあるが、基本的に大きな番号ほどグループを作るのが遅れた奴らということにもなる。
71番は誘われなかった子たちがなんとか五人見つけて作ったグループだろう。
「敵じゃなさそうだな」
正面から戦っても負けるような奴らじゃない。
少し眺めてヨルは興味を失った。
「まずは第一グループからだ」
四つのグループがそれぞれ別の拠点に連れて行かれる。
ヨルたちはその場に残され、目の前にいくつものモニターが並べられた。
「おぉ……」
モニターにはこれから試験の場となる森の中が映し出される。
監視カメラ、ドローンなどを使ってつぶさに戦いの様子を見ることができるようだった。
孤島ではスマホも許されない生活だったのに、ここにきてやたらと文明的なところを見せてくる。
「時間は二時間。木製の武器を与えてやる」
四つの拠点の様子が映し出された。
拠点はそれぞれ旗を中心として、周りを人の胸ほどの高さの土を固めて作られた壁が立っている。
銃撃戦でもするなら壁は役に立ちそうだけど、今はあんまり役に立たなそう。
ただ拠点には木で作られた武器が並べられていたり、水や食料もある。
まさしく拠点として使えるようになっていた。
「相手を殺してもいい。それも戦略の一つだ」
人を殺してもいいということは、言ってしまえばルール無用ということである。
こちらは次に進むことだけを考えているのに、相手は自分を殺すかもしれない。
疑心暗鬼も加速しそうだった。
「それでは開始する」
モニターの一つに時間が表示される。
タイムリミットは二時間。
「どうなるかな?」
よかったらポップコーンとコーラでもくれればいいのに。
ヨルはそう思いながら他の子と同じくモニターを見つめる。
まずやるのは武器をどうするか。
並べられた武器はオーソドックスな剣を始めとして大きさも複数種類ある。
さらには孤島で習ったように他の武器も色々と用意されている。
選び放題だ。
「今のうちから何使うか決めておいた方がいいな」
しかし武器を選んだからとどこもすぐには動かない。
お互いの状況が読めない。
動いて旗を取られることを恐れてみんな防御に回ってしまっている。
「つまんねー戦いだな」
動きがないモニターを眺めていてもしょうがない。
ヨルは周りにいる暗天の覚醒者たちのことを見る。
みんな同じような黒い格好していて、何回か見たことがあるような人もいる。
マナベもモニターを見ていて、ヨルの視線に気づくと軽く一瞬目があった。
今でもぶん殴られた時のことは忘れていない。
現在の力なら一発ぐらい殴れるだろうかと思う。
ただ気になるのは普段は見ないような人たちもいくらかいることだった。
その筆頭はトウジンなのだが、トウジン以外にも記憶にないような人がいる。
この試験は見られている。
ヨルはそう感じたのだった。
「動き出したか」
およそ一時間何も動かない時間が過ぎて、堪えきれなくなった一組が動き出した。
二人ほど旗のところに残して、三人が別の旗のところに向かう。
どこのグループのところに向かうことになるのかは、位置関係が明かされていないのでまだ分からない。
ただ他のグループは完全に気を抜いている。
一時間も動きがないのだから、もう自然と試験だけは突破する合意がなされたものだと思い込んでいる。
好きに食料なんかを食べながら談笑していた。
「呆れた様子で見られていることに気づいてないな」
見慣れない暗天の覚醒者たちはすっかり呆れた様子だった。
何かの評価をされているなら、動かないという選択肢はないとヨルは見ている。
「……なんだ?」
拠点のうちの一つに動きがあった。
『なんだこいつ!』
『うわっ!』
『旗が!』
森から何かが飛び出してきた。
旗を奪い、守ろうとした少年の頭を掴んで潰したそれはモンスターだった。
サルのような姿をしたモンスターが現れて、戦いの様子を見ていた子供たちは一気にざわついた。
けれどもセキイシを始めとして誰も動かない。
つまりこれは、最初から試験に組み込まれているアクシデントなのだ。
「旗が一つ奪われた。他の奴らも気をつけろよ」
セキイシがマイクを手に取った。
森の中にはスピーカーがあるのか、セキイシの声は試験中の子どもたちにも伝わった。
「意地悪いなぁ」
モンスターが現れたことも、モンスターが旗を取ったことも言わなかった。
ただ旗が取られた。
これを聞いて状況を分かっていない連中は、どこかのグループが動いたのだと感じるはずだ。
争いが加熱しようしていた。




