33小隊戦6
「あと一日か。どうするかな」
初日の騒ぎのせいか、他に突っかかってくるような奴はいなくなった。
代わりに近づいてくるような奴もいない。
初日を除いて三日の猶予が与えられている。
なので一日目はレオナたちの霊薬の吸収に集中した。
二個同時に吸収するのは危険と分かったので、見張りを交代する形で時間を空けて吸収した。
そして二日目ももう夕食の時間。
周りにいる奴らのことを見ながらヨルは残りの一人をどうするか頭を悩ませる。
最悪の場合力で脅して一人引き込んでもいい。
ただそんな奴が使えるとも思えないし、信頼できる仲間にもなれない。
最初にある程度力を見せつけたので、誰か来るだろうと思って悠長に構えていたところはある。
しかしあまりにも誰も近付いてこない。
「タカミヤのせいかもね」
レオナは小さくため息をつく。
「そういえばあいつ何者なんだ? 偉そうにしてたけど」
「タカミヤは幹部の息子よ。天主の座を狙う雷鳴鬼剣鷹宮祐悟……暗天の中でも天を支える柱の一人である三柱よ」
「雷鳴鬼剣とか三柱とかいちいちそんな小っ恥ずかしいもんなんだよ?」
「二つ名は実力がある証、そして三柱ってのは身分の上下のためよ。私が決めたわけじゃないんだから文句言われても知らないわよ」
せっかく説明してあげているのに、とレオナは拗ねた顔をする。
「コウヤの父親だって鉄甲拳と呼ばれてるのよ」
「そうなのか? 幹部の息子なのか?」
「天支柱のような重要な幹部ではありませんが、自慢の父です」
「ふーん、やっぱり幹部の子供の方が強いのか?」
「才能は人それぞれですが、子供のうちから投資してもらう差は多かれ少なかれあると思います」
暗天の子供だからと全員が強いわけじゃない。
それは才能の部分もあるが、やはり暗天の中でも身分の差があって、身分の高い人ほど早いうちから子供に強くなるための投資を行なってきている。
「ちなみにアーティファクトは?」
ここまでに投資してきたものを奪うことは難しい。
けれどもアーティファクトならば奪える。
「親から良いアーティファクトをもらえることもありますが、ここには持ち込めませんでした」
「あー、そうか」
誰もアーティファクトを持っていないのでコウヤの返事は予想していた。
霊薬なんかよりもアーティファクトが欲しいなとヨルは思っている。
「幹部クラスの子はすでにグループを作っているようですね」
力のある子は自分をリーダーとして人を集めている。
能力のある子はどこかのグループに入っている可能性が高い。
もう、というか最初からあまり高望みはできなかったのだ。
「こうなれば誰か引きずりこむか。誰かいい奴知らないか?」
余ってる奴を引き込むのは最終手段だ。
少しでも能力が高い奴の方がいいのはもちろんである。
どんなところにでもグループに所属していない一匹狼タイプのやつはいるもので、そうした性質の奴はまだ残っているだろうと思った。
「いい奴……モンローはどうですか?」
「モンロー? 外人か?」
「門狼規って奴なんですけど門と狼でモンロー……というあだ名なんです。それで呼ぶとすごく怒るんですけどね」
「名前はどうでもいいが、強いのか?」
「八柱である門雅人様のご子息です。双子で兄の方はいけすかない奴なんですが、弟のモンローは一匹狼タイプ。まだどこかに入っていない……」
コウヤは食堂を見回す。
ザワザワとした食堂には多くの人がいて、グループで固まっているのがほとんどだった。
「あっ、いた。あいつがモンローです」
壁際の席、一人で食事をとっている少年がいた。
歳はヨルと同じか少し上ぐらいだろう。
黒髪短髪、ややヤンチャそうな顔つきをしている。
「そうか」
「あっ……どこに」
「声かけてみんだよ」
何事もまず行動。
ヨルは残ってた野菜をタクマのトレーに移して、立ち上がる。
「よう、モンロー」
ヨルはロウキに声をかける。
しかしヨルの言葉に周りの空気が凍りついていることに、本人は気づいていない。
「お前、もうどこに入るのか……」
「その名前で呼ぶんじゃねえよ!」
「……おいおい、いきなりだな?」
ロウキは怖い目をして握りしめていたフォークをヨルに向かって突き出した。
ヨルがロウキの手を掴まなかったら、目にフォークがブッ刺さっていたところだった。
「そう怒るなよ、モンロー」
「この野郎! ぶっ殺してやる!」
なんで怒ったかは分かっている。
わざとらしくあだ名を強調してやると、ロウキは顔を赤くして怒り狂う。
「またアイツかよ……」
「どんだけトラブル起こすんだよ」
周りの奴らはサッと離れていく。
ヨルの顔を見てヒソヒソと話している奴らがいる。
ヨルが恰幅のいい青年を返り討ちにしたり、タカミヤとやり合ったりしたことはもう噂になって広まっている。
孤島で三番と呼ばれていた奴も意外と幹部系の息子だったらしくて、ヨルの悪名は高まっていた。
またしてもヨルが問題を起こしているとみんなは話していた。
ただヨルとして平和的に会話して平和的に仲間になってほしいだけだった。
モンローと呼んだら本当に怒るのかな、というのは単なる興味でしかなかった。




