28小隊戦1
「第二段階を合格したお前らには霊薬をくれてやる。ただ部屋には他のやつもいるから……気をつけることだな」
霊薬が配られる。
これまでは液体のものだったが、今度はペットボトルのキャップぐらいの大きさがある丸薬であった。
部屋割りも孤島では成績優秀なら個室が与えられていたが、ここでは十人で一部屋の大部屋だった。
霊薬を集中して吸収するのに他人の邪魔が入ると危険だ。
だからといって危なくないように乱雑に吸収してしまうと勿体無い。
それを分かっていてセキイシは意地の悪い笑顔を浮かべる。
「次の第三段階の試験の話をしよう。第三段階の試験は……旗取りだ」
「また旗取りか?」
「また、と思ったものもいるだろう。しかしこの旗取りはこれまでのものと違う」
旗取りというとこの一年半毎日にやっていた朝の競争のことを思い浮かべてしまう。
雨の日も風の日も、逃げたゴールドラインウルフが再び現れても旗を持って帰った奴が飯にありつける楽しいひと時だった。
しかし第三段階の試験はそんな甘いものではない。
「これから三日、時間をやる。その間に五人のチームを作れ。そして四つのチームで旗を取り合ってもらう。もっと詳細は試験当日に話そう」
「今度はチームでやるのか」
「今から自由時間だ。何をするにも好きにしろ。ただし、自己責任でな」
セキイシは簡単な説明だけするともう一人の天主専任護衛の女と共に部屋を出て行ってしまった。
「ヨールー。ヨルは私と一緒よね?」
レオナがヨルの腕に抱きつく。
天主が出てから少し暗い雰囲気だったけれど、いつの間にか元に戻ってる。
「ああ、もちろん」
実力でいえばレオナはピカイチだ。
たとえ転生前の情があっても弱ければ仲間にしないが、強いのだから文句はない。
「コウヤ、お前も来い」
「はい。分かりました!」
ヨルの知る中でコウヤも実力は高い。
頭も悪くないし下僕一号という扱いやすさもある。
「これで三人。あと二人か」
「あ、あの!」
「あ? なんだ?」
三日あるし、そう焦ってメンバーを決めることはない。
使えそうな奴は同じところにもいたし、他のところからきたのにも強そうな奴はいる。
ジッと周りの連中を品定めしていると、タクマがヨルに声をかけてきた。
「お、俺も加えてくれませんか!」
「あっ?」
ヨルは思い切り怪訝そうな顔をする。
「えっ……あっ、こ、これを!」
コウヤは実力があるから誘った。
しかしヨルはタクマを誘わなかった。
もちろんそれは実力が伴わないから。
助けてはやったが、それはタクマの方から助けを求めてきて、ヨルに余裕があったから助けてやったに過ぎない。
何かを期待してのことではない。
試験において目立つ成績を収めれば何かもらえるかもしれない。
そのためにはやはり強い奴を集める必要があった。
ヨルの眼中にない。
そのことを瞬時に察したタクマは霊薬が入った箱を差し出す。
「そんなに仲間に入りたいのか?」
「は、はい!」
タクマは誘拐された子供である。
能力があまり高くなく、他のグループにも入ることができなかった。
ただ立ち回りの賢さはある。
他の子供が旗の奪い合いをしているところで盗んだり、ヨルに分けてもらったり、組み手ではほんのわずかな相手の隙をついて勝利をもぎ取ったりと能力の範囲で最大限の結果を残してきた。
ある種、その場においてどう行動すべきかの勘が鋭い。
そんなタクマは思った。
ヨルならば、と。
決して守ってくれる人ではないけれども、たった一人でも困難を乗り越える人だ。
ついていけばきっとこの地獄の先に行くことができる可能性を持っていると感じていた。
「ふーん、これはいらない」
「えっ……」
「それ飲んで少しは強くなれ。足手まといはいらないんだ」
「じゃ、じゃあ……」
「四人目。ついてこられなきゃ見捨てるからな」
「は、はい!」
霊薬は同じ同じ種類のものを飲み続けても効果が落ちていく。
効果が落ちる二個目の霊薬を飲むよりも、タクマが飲んだ方が効果は高い。
「いいの?」
「他のやつ入れたところで、盾一枚なのに変わりはないからな」
毒薬の時に悪魔の契約も交わした。
この中で誰がいきなり裏切るのかも分からない。
強さも大事だが、裏切られるのは面倒だし嫌いだ。
ヨルが裏切る分にはいいが、裏切られるなんてことがあれば相手を殺さなければ気が済まない。
タクマなら今の所のそのリスクは低い。
「あと一人か……バランスを考えると女……」
「嫌よ」
「別にいいだろ? この先も女だからって仲間にしないなんて……」
「ダメ。許さない。そこらへんの豚を仲間に入れるぐらいなら雑魚の猿でも仲間にした方がいいわ。あなたのそばにいるのは私だけでいいの」
レオナの目は笑っていない。
一言も冗談ではなかった。
「……まあ、三日あるしな」
女を仲間に引き入れたらまずレオナにぶち殺されてしまいそう。
引き入れるなら殺されないようなやつじゃなきゃダメだなと思った。
「とりあえず部屋に戻って霊薬いただくか。誰かに盗まれるかもしれないしな」
盗まれたって自分の管理不足だと文句も言えない。
ならさっさと飲んでしまうのがいい。
「他のやつの盗んでもいいかもな」
わざわざタクマからもらうこともなく、奪い取ることもありの世界だ。
おそらくそれも込みでこんなふうに放置しているのだろうとヨルは思った。




