13旧知の仲2
「俺を見つけてさらったわけじゃなさそうだな」
「そうね。あなたは想定していた子じゃないと聞いているわ」
猫のように擦りついたままレオナは話を続ける。
「暗天とはなんだ? 目的はなんだ? それに……お前は何に生まれ変わった?」
「質問たくさんだね。質問の数だけキスしてくれたら……ん……!」
「……これ一度で、全部答えろ」
「……はい」
ヨルはレオナのアゴを掴むようにして固定すると、自ら唇を重ねた。
長めのキスにレオナは顔を赤くし、少しトロンとした目をする。
「まず私は暗天のトップ……天主とか呼ばれる人の娘として産まれたの。最初は訳が分からなかった……人になったこともあなたがいないこともとんでもない苦痛だった」
「関わりがあるどころか、がっつりと中心に近い存在だったんだな」
「でもあの人は私のことなんて何とも思ってないはずよ。悪魔のような人……目的は世界を力で支配すること」
「なかなか良い目的じゃないか」
「そう。そのために秘密裏に組織を育て、暗天として活動してるのよ」
ヨルもやっていることから暗天の目的を何となく予想はしていたが、大きく想像からは外れていない。
「今やってるのは選別……強い人をスカウトするだけじゃなく、一から育ててより覚醒者を作り上げようとしてる」
「天主の娘であるお前も使って?」
「ええ、家族の情なんてないもの。それに……私も自分でやると言ったの」
「なんで?」
「外に出るため。あなたを……探したくて」
レオナの大きな瞳がヨルを見つめる。
よく見ると黒目の縁もうっすら紫になっている。
ほんのりと光宿る夜のよう。
「あなたに会えたのは予想外だった……たまたま誘拐計画の途中で、覚醒した子供がいると聞きつけてさらった子がいて、それがあなただった」
「……なるほどな」
「人間が語る運命なんてくだらない妄言に過ぎないと思っていたけれど、今なら私とあなたの間には赤い糸があるのだと信じられる」
赤い糸どころか血に塗れた鎖の間違いではないか、とヨルは思う。
「これから選別はより激しさを増す。ついていけなければ死ぬだけよ……」
「この選抜ってやつ……お前はどう思う?」
「私? 私は……すごくくだらなくて……面白いと思うわ」
レオナが冷徹な笑顔を浮かべる。
「他人の命を踏み台にして強くしてくれるのでしょう? ステキ。あなたにも会えたし、言うこともないわ」
「俺も同じ意見だ。つまらない場所なら皆殺しにしても帰ろうかと思っていたが、ここにいてやってもいいと今は思ってる」
ヨルも笑う。
互いに出会うことが時を戻した目的ではない。
神を止める。
神を殺す。
これがヨルとレオナの目的だ。
今目の前には、普通じゃ得られないような強くなる機会が転がっている。
美味しくいただかずして、無視なんてできるものじゃない。
「何があっても二人なら乗り越えられるわ。私……けっこう強いもの」
「そういえば何でそんなに強い?」
ヨルとレオナは同じ年頃に見える。
なのに明らかにレオナの方が魔力が多くて強い。
「天主の娘だから」
レオナは目を細めて妖艶に笑う。
「体に良いもの、魔力に良いもの、たくさん食べてきたの。他にも暗天出身の子供がいて、そうした子たちは普通の子とは違うものを与えられてきているわ」
「アーティファクトもあるのか?」
「……もしかして、それは変わらないのかしら?」
「ああ、これがあればお前にもすぐに追いついて見せるさ」
「ステキね……流石、私のヨル」
暗天には感謝しなきゃなとヨルは思った。
良い環境、それに出会いたかった仲間とも会えた。
これから神をも食らおうとしている。
「その前には天を喰らって強くなろうか」
順風満帆。
他のガキに比べればなかなか良い人生の滑り出しだろうとヨルは顔を歪ませて笑うのだった。




