漢の生き様
帰るとそこにはフェンリルコンバットの士官が集合していた。
「勝人か、よう戻って来たな。」
「隊長は、無事なんですか?」
なんだか部屋がタバコ臭い、旺田少佐はタバコを吸うが臭いが少し違う。
「やっぱりいつものタバコが一番美味いな。」
みんなに囲まれていたベッドの上には隊長が横たわっていた。
「隊長、容体はいかがです。」
「結構な重症だ、骨が10本近くやられてるよ、ハハッ」
なんで笑ってるんだろ、やっぱりこの人はおかしい。
「佐々木兵曹長はまだ意識ないんですか?」
「いや、意識はある。しばらく1人にしてくれと言われてな。」
どうやら隊長とのタッグでやられたのがショックだったんだろう。
佐々木兵曹長と隊長は2人で30人規模の軍隊と互角以上に戦える。
1人に負けたらそりゃショックだ。
あれ?めぐみは?
あ、そう言えば軍の影響が及ばないところに避難してるんだった。
気晴らしに少し無線繋げてみるか。
「もしもし?めぐみ?」
「勝人!!生きてたのね?よかった〜、ニュース見たら死んじゃったと思ったじゃない!」
無線機の向こうからめぐみの涙声が聞こえる。
「ニュース大変なことになってたわよ?死傷者が2000人に及ぶって。」
「俺が簡単に死ぬと思うか?俺はそんな弱くないよ。」
向こうではめぐみが笑ってる。
しばらくするとめぐみが何か問いかけてきた。
「勝人?聞きたいことがあるの。」
「ん?どうしたんだ?」
「勝人は、私のことど…もっ……る…ズザザザッ」
「どうした?めぐみ〜、お〜いめぐみ〜?」
無線に変なノイズが入って来た。
「ズザザザッ…ザッザッ…こ…が……デターの拠点と思われます。よし!戦闘準備!」
この無線、まさか…
「19:00より突入を開始する。」
間違いない、これはハンブラビ帝国の追撃隊だ。
今の時間は18:54、マジか…
「みんな!戦闘準備だ!あと6分で追撃隊が突入してくる!!」
「そんな、なんでわかるんや。」
「無線を傍受しました。このままではみんな死にます!」
どうする、どうする、どうする、どうする、どうする。
「火虎忠影が命じる、諸君らはこの事務所を破棄、各々に退避せよ。」
「そんな馬鹿な、いくら隊長といえどあの数をその傷で相手にすれば死にます!」
「死んでもいい!今は役に立たない怪我人よりも行動可能な兵士達を優先しろ。」
「しかし…」
「黙れ!命令に従わないなら命令無視で首を吹き飛ばすぞ!」
「わかりました、旺田麾下残存兵力はただいまより離脱します。」
「よし、旺田、後は任せたぞ?」
「了解。
総員離脱始めー!」
離脱始めが発令されてから3分がたった。
すでに逃げるものは脱出路から脱出していた。
事務所には隊長と佐々木兵曹長が自らの意志で残っている。
「時間だ!総員、突撃ー!」
雪崩のように押し寄せてくる帝国軍に怯まずに隊長は佐々木兵曹長にいった。
「お前も残る必要はなかったんだぞ?」
「何を言うかと思えば、俺たちはパートナー同士ですよ?なら死に様も互いに讃え合うのが相場で決まってるんですよ。」
「まったく、誰がそんなこと決めたんだか、おかげで自慢の部下が死ぬところを見なきゃいけねえじゃねえか。」
ズドォォン!
隊長の手に持つ九九式狙撃銃が遠方の敵を倒す。
「ヘッドショット、次弾右敵をボディショット。」
ズドォォン!
「確認。」
相変わらず2人の相性は抜群だ。
しかし、近づく敵をなぎ倒していると、隊長の無線に回線が入った。
「君か、宮殿ではよく暴れていたね。しかしあの重傷でなぜそこまで戦闘できるのかな?不思議なこともあるものだ。」
「皇帝様か?よく俺しか知らない回線をキャッチしたな。褒めてやる。」
「その言い方、まるで悪者ですね。」
「ああ、日本があったときもなかったときも俺は完全な悪者で世界の敵役だ。」
「それが今回で憎き帝国に敵対する正義になれたわけだ。」
「ここで死ぬがな。」
「よくわかりましたね、そうです、貴方のライフルでは届かない武器がこちらにはある。」
「20センチ砲か?ミサイルか?それとも新型の衛星兵器か?なんでもいいから撃ってこいよ!」
「そうですか、では発砲します。」
事務所は海にさほど近いわけではない。
でも海は見える。
距離は7キロほどで夕方には綺麗な夕焼けがたまに見える。
すでに19時、この時期はちょうど日が沈む頃。
しかし夕焼けが見えるはずの海には巨大な艦影が浮かんでいた。
「そうか、消えた武蔵は帝国に渡ったのか。」
「これは面白いオモチャです。」
無線の向こうからは何やら叫び声が聞こえる。
「91式徹甲弾を装填しろ!」
「照準合わせ!右15度!」
「装填完了!」
この声は明らかに戦艦の中だ。
「なあ佐々木兵曹長、俺たち元々社会にも組み込まれなかった落ちこぼれだったよな。」
「そうでしたね、恐ろしいほど馬鹿にされて蔑まされていました。」
「そんな俺たちが今、あいつらのためにしてやれることはなんだ?」
「武蔵の速力は27ノット、射撃時は機関は動いていますが艦艇は止まります。ここから旺田少佐たちに無線をつなげて射撃時の位置から衛星でマークできます。」
「そうだ、俺たちにできるのはそれだけだ!さあ撃ってこいよ。手前らの位置だけでも掴ませてもらうぜ!」
隊長の死ぬ準備は整った。
「では、死ね!」
ずどぉぉぉぉぉぉぉぁぉん!!!
恐ろしい音が出た。
「ピー!」
「座標確認、旺田少佐のコンピューターに接続!」
「お前ら!見てろよ!これが俺たち二人の生き様だぁぁぁ!」
ドォォォォォォン!
徹甲弾が事務所に直撃した。
「おい、今の爆発まさか、隊長が…。」
桜木大尉が後ろを振り向いて嘆く。
「おい、桜木。隊長は死ぬのを覚悟しとったんや。ここで止まったったら隊長が浮かばれへん。前向いて歩かんかい。」
みんな気づいていた。
隊長と佐々木兵曹長が俺たちのために命を張ったのだと。




