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第18話 美月!消えた少女の謎!

星月寺の境内に、夕暮れの風が吹いていた。


山小屋で見つかった美月さんと少女・サクラは、無事に星月寺へ戻ってきた。


「本当に、ありがとうございました」


サクラの母親が、深々と頭を下げる。


「いえいえ。無事でよかったです」


美月さんは、優しく微笑んだ。


その隣で、コウタは美月の袖をぎゅっと握っている。


「美月さん……もう、どこにも行かないでね」


「えっ?」


「だって、何日も無心寺に来なかったから……。僕、心配だったんだよ」


コウタはうつむき、小さな声で続けた。


美月は一瞬、驚いたように目を見開く。


そして、コウタの頭にそっと手を置いた。


「ごめんね、コウタ。心配かけちゃったね」


「……約束だよ」


「うん。約束」


美月が微笑むと、コウタはようやく顔を上げた。


その様子を見ていた茶助は、胸の奥が少し温かくなるのを感じた。


しかし、レンだけは美月の表情をじっと見つめていた。


笑顔の奥に、どこか深い悲しみが隠れている。


そんな気がしたのだ。


「美月さん」


レンが、静かに声をかける。


「以前、ここで暮らしていたんですよね?」


「……ええ」


美月の表情が、わずかに曇った。


そのときだった。


星月寺の和尚が、古びた木箱を抱えて境内に現れた。


「美月。これを見せておこう」


「和尚様……それは?」


「先代和尚の日記じゃ」


和尚は木箱を開け、中から一冊の古い日記帳を取り出した。


表紙には、長い年月を経て薄れた文字が残っている。


茶助は、思わず身を乗り出した。


「おおっ! まさか寺に伝わる秘宝の地図ですか⁉️」


「違う」


レンが、即座に突っ込んだ。


「お前は何でも秘宝に結びつけるな」


「だって寺だぞ? 古い箱だぞ? 絶対、何かあるだろ!」


「あるとしても、お前の欲望を満たすものではない」


「まだ何も言ってないだろ!」


二人のやり取りをよそに、和尚は日記を開いた。


「これは、先代和尚が美月と葉月を引き取った頃の日記じゃ」


美月の指が、ぴくりと動いた。


「……葉月」


その名前を聞いた瞬間、コウタが顔を上げる。


「葉月って……美月さんの妹?」


美月は、すぐには答えなかった。


しばらく黙っていたが、やがて小さくうなずく。


「私には、五歳下の妹がいたの」


「美月さんが十四歳のとき、葉月は九歳だった」


和尚が、静かに言葉を続ける。


「両親を亡くした姉妹を、先代和尚様がこの寺に引き取ってくださった。葉月は、とても我慢強い子だったそうじゃ」


美月さんは、日記に記された文字を見つめていた。


「葉月は、いつも私の後ろをついてきた。泣きたいときも、寂しいときも……いつも我慢して笑っていた」


その声が、少しずつ震えていく。


「でも、ある夜……葉月は『お母さんを探しに行く』と言って、寺を出てしまった」


「お母さんは、亡くなったんじゃ……?」


茶助が尋ねる。


和尚は、ゆっくりと首を横に振った。


「先代和尚の日記には、こう書かれている」


和尚は、あるページを開いた。


「母親は、実は生きていた。毎週、遠くから寺の様子を見に来ていたそうじゃ」


「えっ⁉️」


茶助が、大声を上げる。


「生きてたのかよ!」


「声が大きい」


レンが、茶助の頭を押さえた。


和尚は気にせず、日記を読み進める。


「葉月は、母親が来ていることに気づいた。そして、その後をつけていった可能性がある。だが、母親も葉月も、その後の行方はわからなかった」


境内に、重い沈黙が落ちた。


美月は、両手を強く握りしめる。


「私は……葉月を止められなかった。あの夜、もっとちゃんと話を聞いていれば……」


「美月さんのせいじゃないよ!」


コウタが叫んだ。


「だって、美月さんもまだ十四歳だったんでしょ? 子どもじゃん!」


美月は、驚いたようにコウタを見る。


コウタは涙をこらえながら、懸命に言葉を続けた。


「葉月ちゃんは、きっと美月さんに会いたいと思ってるよ」


美月の目に、涙が浮かんだ。


そのとき、レンがふと顔を上げる。


「……葉月」


「どうした?」


茶助が振り向いた。


「オレの通っているロイヤル・プレミアム学園に、葉月という名前の女子生徒がいる」


「なにぃ⁉️」


茶助が、勢いよく飛び上がった。


「お前、まさか全校生徒の名前を覚えているのか⁉️」


レンは、当然のように胸を張った。


「俺は女子の名前と顔は、全員知っている」


「そこだけ異常な記憶力を発揮するな!」


「しかも、その葉月は……美月さんにそっくりだ」


美月の顔から、血の気が引いた。


「……本当に?」


「髪型も、目元も、雰囲気も似ている。年齢は十八歳。高校三年生だ」


「十八歳……」


美月は、震える声でつぶやいた。


葉月が九歳でいなくなってから、九年。


もし生きているなら、現在十八歳。


年齢は一致している。


しかし、同じ名前で、顔まで似ている。


そんな偶然が、本当にあるのだろうか。


茶助は、興奮を抑えきれない様子で叫んだ。


「よし! 明日、学園に行って本人に聞いてみよう!」


「お前は何を聞くつもりだ?」


「君のお姉さん、美月さんって知ってますか? って!」


「いきなりすぎるだろ!」


レンは、深いため息をついた。


しかし、美月は日記を胸に抱きしめ、静かに顔を上げた。


「……会ってみたい」


その声には、長い年月を越えた願いが込められていた。


その頃――。


ロイヤル・プレミアム学園の校舎裏。


ひとりの少女が、夕焼けに染まる空を見上げていた。


長い髪が、風に揺れている。


少女の手には、古びた写真が握られていた。


そこには、幼い自分と、優しく微笑む母親、そして姉の姿が写っている。


少女は写真を見つめ、寂しそうにつぶやいた。


「お母さん……いつになったら、迎えに来てくれるの?」


その横顔は、美月によく似ていた。


少女は写真を裏返す。


そこには、たった一つの名前が書かれていた。


——葉月。

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