第11話 無限地獄♾️第一関門!誘惑の森!
謹慎破りの罰として、無念和尚から「無限地獄行き」を命じられた茶助とレン。
その第一関門が、寺の裏手にある「誘惑の森」だった。
入口の看板を見て、茶助は後ずさる。
「俺、最近ちょっと無欲になってきたんじゃないか?」
「じゃあ、試してみる?」
コウタが淡々と説明する。
「ここでは欲望が幻になる。その幻を追いかけると池に落ちて、入口からやり直し」
「無限地獄じゃねえか!」
茶助が森へ入ると、巨大なステーキが現れた。
「肉……!」
「幻だよ」
「分かってる。でも食えるかもしれないだろ!」
「食えないよ」
「試してみなきゃ――」
ドボーン!!
茶助は池に落ちた。
「早かったね」
「鬼か、お前!」
二回目は札束。
「一枚くらいなら……」
ドボーン!!
三回目は女子たち。
「茶助くん、カッコいい!」
「今行く!」
ドボーン!!
その後も、肉、金、人気、高級車、食べ放題と、茶助は次々に池へ落ちた。
そして最後に、みさきが現れる。
「茶助くん、こっちに来て……」
「みさき!」
「茶助、待って」
「無理!」
ドボーン!!
「みさきまで幻なのかよぉぉぉ!」
「そこは最初から分かってたと思うけど」
「分かってても行くだろ、普通!」
「普通ではないかな」
「俺の何が普通じゃないんだよ!」
「全部」
その頃、森の反対側ではレンも挑戦していた。
「僕に欲望など存在しない。僕は常に理性的で、冷静で、完璧だ」
「じゃあ、すぐ出られるね」
レンの前に巨大なスクリーンが現れる。
学年一位 鳳凰院蓮司
「当然だ」
しかし画面が切り替わる。
学年二位 鳳凰院蓮司
さらに、
茶助、学年一位。
「なぜ僕が茶助に負ける!」
「幻だからね」
「幻でも許せない!」
レンはスクリーンへ走り出した。
ドボーン!!
「僕は欲望に負けたのではない! 順位を訂正しに行っただけだ!」
「それを負けず嫌いって言うんだよ」
二回目は女子たち。
「レン様、素敵!」
「レン様、天才!」
レンは満足そうに微笑む。
「当然だ」
しかし、その中の一人が言った。
「茶助くんのほうが好き」
レンの顔が引きつる。
「……なんだと?」
ドボーン!!
「おのれぇぇぇぇ!」
三回目は、巨大な金メダル。
世界最高の高校生
「これは僕のものだ!」
レンが歩き出す。
ドボーン!!
「なぜだぁぁぁぁ!!」
「欲望を追いかけたから」
「僕は栄光を追いかけただけだ!」
「それを欲望って言うんだよ」
しばらくして、泥だらけの茶助とレンが森の中で鉢合わせした。
「お前もか!」
「何回落ちた?」
「……数えていない」
「俺も」
「お前と一緒にするな!」
「いや、お前も池に落ちてるだろ!」
二人が言い争っていると、コウタが現れた。
「欲望が無限なんじゃない。茶助は欲しいものを見つけると追いかける。レンは負けたくないと思うと追いかける」
「俺は三歩考えてから走った!」
「レンは正当な評価を求めただけだ!」
「そういうところだよ」
コウタは二人を指差した。
「欲望を追いかけている限り、この森から出られない」
茶助が周囲を見回す。
「……この木、さっきも見たぞ」
レンも気づく。
「この石もだ」
二人は出口を探して走り出すが、たどり着いたのはまた同じ池だった。
「この森、めちゃくちゃ狭いじゃねえか!」
「寺の裏の小さな森だからね」
「じゃあ俺たちは、ずっと同じところを回ってたのか!」
「うん」
「「無限地獄じゃねえか!!」」
「じゃあ、最後にもう一回」
茶助とレンは、今度こそ欲望を追いかけないことにした。
茶助の前にステーキが現れる。
「……食べたい」
「でも、行かない」
肉は消えた。
レンの前には、再び「学年一位」の文字が浮かぶ。
「……勝ちたい」
「でも、追いかけない」
スクリーンも消えた。
森の景色が薄れ、二人の前に出口が現れる。
「出られた……!」
茶助が振り返る。
「コウタ、最初から出口近かったんじゃねえか?」
「うん」
「うんじゃねえよ!」
レンも怒鳴る。
「なぜ最初に教えなかった!」
「教えたら試練にならないから」
「もっと分かりやすく言えぇぇぇ!!」
寺中に二人の叫び声が響いた。
――誘惑の森、攻略。
……と思った、その直後。
茶助の腹が鳴る。
グゥゥゥゥ……
「……でも、腹減った」
「やっぱり無欲には遠いね」
「これは生理現象だ!」
レンも腕を組む。
「僕は空腹など――」
グゥゥゥゥ……
「……」
茶助がレンを見る。
「お前も腹減ってんじゃねえか!」
「昼食の時間に負けただけだ」
「じゃあ、昼飯にしようか」
二人は同時に歩き出す。
「「今度は負けない!」」
「何に?」
茶助は即答した。
「食欲に!」
レンも即答する。
「茶助に!」
「お前、最後までそれかよ!」
――誘惑の森、攻略失敗。




