第四八話 直訴、奉ります
ドアーを激しく叩く音が廊下に響く。
周明の少し甲高い声が司令官室に響き渡る。
周明はマッカーサー連合軍最高司令官(元帥)に、敗者の直訴状『七人の大義』を読み始める。
「Please ask me MacArthur commander in chief.」
元帥は拘束された身体の動きを止め、周明を睨む。
周明が、
「When I'm quiet, I don't harm.」
首をゆっくり縦に振る元帥。
周明は肥田に眼で合図する。
肥田は司令官の顔から「猿ぐつわ」を外す。
元帥は顎を引いて胸を張る。
マッカーサー元帥が、
「What is it to want to say ?」
周明、
「The Japanese Direct Petition.」
マッカーサー元帥、
「Direct Petition? ・・・OK . I'll hear .」
周明は直立不動で皇居を拝謁、深々と一礼する。
すると周明に倣って、肥田、岡田、杉浦、堀田、山田がソファーを立ち、直立不動で皇居に向かい深々と拝礼する。
首藤も司令官の机の前から不動の姿勢で拝礼する。
周明はおもむろに、テーブルに並べられた七通の封書の「一通」を取り上げる。
封を切り元帥を睨み、深々と一礼する。
元帥は頷く。
周明は、取り出したザラ紙をおもむろに広げ、読み挙げる?
周明「一、首藤操六! 日本の大義」
首藤が、司令官の机の前からマッカーサー元帥の傍に歩み寄り、不動の挙手する。
元帥は首藤の全身を静に見る。
周明がゆっくりと、気合いの入った声で読み上げる。
「一ッ。日本の米国植民地化に反対する。No, Colonization !」
「一ッ。日本古来の伝統を変えてしまう事に反対する。No, Tradition is changed !」
「一ッ。日本の教育を根本的に変えてしまう事に反対する。No, Educationis changed !」
元帥はうなずきながら首藤を見る。
周明は広げたザラ紙をたたみ、静かに封筒に仕舞う。
そして、
「二、岡田 滋! 日本の大義」
周明は元帥を見る。
岡田が元帥の前に歩み寄り、不動の挙手をする。
岡田の皮靴の踵のあたる音が。
「カッ!」
元帥が岡田を見て、頷く。
周明が、
「1, Do not colonize Japan.」
「2, The deram and hope are given to the young person.」
「3, Do not use the atomic bomb to fight.」
マッカーサー元帥は深く眼を瞑り、天井を見てため息を吐き、
「・・・Yes・・・」
杉浦は元帥の前に一歩、歩み寄り深々と頭を下げる。
元帥は痩せた杉浦を見る。
そして周明が、
「三、杉浦誠一! 日本の大義」
「一ッ。日本の伝統的教育を変えない事ッ!No, Education is changed ! 」
「一ッ。日本人を洗脳しない事ッ!No, brainwashed !」
「一ッ。頼母子講(保険)を続ける事。No, Insurance system is changed !」
不動の姿勢で司令官を見詰める杉浦。
鉛筆を握りしめた手が震えている。
「? Insurance system・・・?」
周明を見る元帥。
「・・・Yes !」
マッカーサー元帥が、
「・・・OK !」
周明は肥田に目配せをする。
肥田は元帥の後ろ手の緊縛を解く。
元帥は解かれた手首を擦り、周明を見る。
「四、堀田善衛! 日本の大義」
堀田は元帥の前に歩み寄り、胸を張ってジッと元帥の眼を見る。
元帥が腕を組み、堀田を見る。
周明が読み上げる。
「一ッ。言論の自由。Freedom of speech !」
「 一ッ。思想の自由。 Freedom of a thought !」
「 一ッ。行動の自由。 Freedom of behavior !」
元帥は堀田を見て、納得した様に『二度』うなずき、
「Yes, OK !」
堀田はマッカーサー元帥を見詰めたまま微動だにしない。
周明は更に、
「五。肥田春充! 日本の大義」
肥田が堂々と元帥の前に歩み寄り、睨む。
元帥は肥田を睨み、拘束された腕を擦る。
「一ッ。体操の充実。Exercise !」
マッカーサー元帥、
「Exercice ?」
周明が元帥に向かって一括する。
「静かにッ!」
周明は更に続ける。
「一ッ。教育を受ける権利。The right to get education. 」
「一ッ。病院を沢山建てる事。Many hospitals are built !」
元帥は肥田にウインクして、
「Yes !」
肥田は呆気にとられ、睨んだ顔が緩む。
突然、司令官の机の上の電話が鳴る。
「リリリリーン」
首藤が急いで司令官の机に戻り、電話のコードを引き抜く。
周明は続ける。
「六。山田欣五郎! 日本の大義」
山田が元帥に熱い視線を送り前に進み寄る。
元帥は奇妙な視線で山田を見詰める。
そしてじっと周明の言葉に耳を傾ける。
「一ッ。女性の人権の取得。The female rights !」
「一ッ。オカマの人権の取得。The homosexual rights !」
「一ッ。戦争はやらない事。Abandonment of a war !」
元帥は山田の全身を見て、
『Homosexual ? Gender?・・・ Oh.」
元帥は頭を抱える。
山田が、
「何よ。文句あるの?」
マッカーサー元帥、
「・・・ NO, OK,Ok.」
山田が、
「・・・だいじょぶ? この人」
元帥は全員の顔をゆっくり凝視して行く。
そして、
「キミタチハ、ナニモノダ?」
周明が、
「・・・日本国民の代表だッ!」
元帥は全員を見回し、
「・・・キミタチハ、『ヒーロー』ダ。ヨク、ココマデキタ」
元帥はもう一度、周明を見て、
「OK ! Everything will grant your request .」
周明が六人に向かって、『この言葉を大声で訳す』。
「マッカーサー元帥は、すべての・・・要望を叶えると言っている」
六人は顔を見合わせて、
「勝ったッ! 勝ったぞ。俺達は連合軍に勝った。マッカーサーに勝ったんだ!」
六人の眼から涙が溢れ出る。
元帥がソファーから立ち上がる。
六人が俯いて泣いている。
司令官室のドアーの鍵を開ける音が。
「カチャ・・・」
ドアーが開く。
『MPの将校スミス』達、八人が銃を構えて部屋に入って来る。
ナンシーは開いたドアーの向こうから、茫然と『この光景』を見詰めている。
スミスが大声で、
「フリーズッ!」
MP(A)が、
「ハンド アップッ!」
MP(B)が、
「ドン フリーズッ! ハリー、ハリー!」
MPの一人が拳銃を構え、全員を壁の前に集めて立たせる。
MP(C)が、
「バックッ! ノウ! バックッ! ハリー! ハリー!」
七人全員は後ろを向いて、壁に向かって薄笑いを浮かべている。
続く
「参 考」
スミス(連合軍最高司令官付け・MP将校)




