第56話 興味ないんだけど、この話続くの?
いつものサボり場教会。
その中の俺の私室で、俺は天井を見上げながら絶叫していた。
「おああああああああああああああああああ!! 終わったあああああああああああ! 俺の人生終わったあああああああああああ!!」
「うるさっ」
マガツヒ様が迷惑そうに俺をツンツンとつついてくる。
止めろ、うっとうしい。
全部お前のせいなんだぞ。
そして、俺のすぐそばで……というか、俺の膝に頭を突っ伏しているのはユーリエである。
白い髪が散らばっている。
手慰みに、とりあえずつまんだりしてみる。
うーむ、サラサラだ。
そんな俺に対しても何も言わず、ブツブツと小さく何かを呟いていた。
「ああ……あの時ライアーの甘言に乗ったから……。何もかも全部ライアーが悪いわたしは悪くないライアーが百パーセント悪い。あの頃に戻れたら、殴ってでも甘言に乗らないようにするのに……」
「くらっ」
ユーリエの方を見ても、マガツヒ様は嫌そうに顔を歪めていた。
だから、諸悪の根源がそんな顔したらダメですよ。殺意がわく。
「ちょっとちょっと! 僕の教祖と聖女がそんな感じでどうするの! もっと元気になって、多くの信者を導かないとダメじゃないか!」
「導く前に、俺の命の灯が消えそうなんですけど……」
命あっての物種なのに……。
死んだら、導くもクソもないじゃん……。
まあ、命があっても、マガツヒ教の狂信者どもを導くつもりなんて一切ないが。
勝手に突っ走ってろ。俺の関係ないところでな。
「その場で殺しにかかってこなかったことはよかったけどね……」
「まあ、前回は貴族くんのホームだったしな。今回はこっちの陣営だったから、さすがに暗殺とかはできなかったんだろ」
一応、あの無駄にでかい教会は、現在のマガツヒ教の総本山だ。
多くの狂信者が詰めているし、数も地の利もすべてこちらに分がある。
その場で殺しにかかってくることはないとは思っていたからこそ、嫌々ではあるが会談をしてやったわけだが……。
まあ、前回は貴族くんのホームをこっちが乗っ取っていたわけだけど、会談場所はあっちの指定していた場所だったしな。
こっちは役立たずの護衛もどきが二人と、生贄一人しかいなかったしなあ。
ああ、今思い出してもつらいわ。
よく頑張ったよ、俺……。
「まあ、首の皮一枚つながったってところね。早く逃げる準備を進めないといけないわよ。天使教全体というわけではなさそうだけど、一部に気づかれていることは間違いないから」
「言われなくても」
へそくりもある程度かき集めることはできたし、軍資金は十分だ。
あとは、狂信者どもに見つからないように逃げる手段を考えなければならない。
……それが思いつかねえんだよ!!
だって、あいつら四六時中どこにでもいるんだもん! 街の出入り口に絶対いるんだもん!
城塞都市みたいに改修しているから、壁上にも当たり前のようにいるし、監視が行き届いているんだよ!
もちろん、あいつらが俺たちの本性を知って逃げるのを妨げようとしているわけではなく、ただ外敵からの備えをしていることくらいは分かる。
だが、その副次効果で、俺たちも逃げられねえ……!
こんなにも鉄壁の守りだから、もはやユーリエはデコイとして置いていくことは決定している。
「ちょっと。僕の前で堂々と逃げる宣言やめてよね。逃がすつもりなんてないんだから」
「呪いの道具みたいなことを言い出しているわよ、この自称善神」
「言っていることが悪神だよな……」
胸を張ってプンスコと怒って見せるマガツヒ様。
怖いよ……。神からは逃げられない……。
ユーリエ置いていくから許してください。
「そういえば、あっちの神聖騎士がダリアのことを知っているみたいだったな」
とりあえず、あまり逃げることを言っているとマガツヒ様の警戒心も高まるだろうから、別の話題で意識をそらすことを狙う。
話題に上がったのは、なんだか知らないけど怖い女、ダリアのことである。
勝手にペラペラとしゃべり始めた彼女だが、天使教の神聖騎士と知り合いのようだった。
「ね。裏切り者よ、裏切り者。わたしたちに知らないうちに勝手に暴走するし、早く放逐しましょう」
「……お前、ダリアを相手にそれできんの? 俺は無理だけど」
「女の担当はあなたでしょ。あなたがやりなさい」
「焚きつけるだけたきつけておいて、無責任にもほどがあるだろ……!」
だいたい、ダリアに裏切られたら、もう終わりだ。
知らないうちに貴族の私兵団を壊滅させるような戦力を整え、街の住民をカルト信者に洗脳し、いつの間にかクーデターを終わらせていた女だ。
あっという間に、俺たちを殺す算段はつけてしまうことだろう。
戦々恐々としている俺たちに、マガツヒ様が呆れたような声音で話しかけてくる。
「ダリアが裏切るとかはないと思うけどね。彼女の信仰心は本物だよ。僕はそういうのを感じ取ることができるからね。だから、君たちのやつは本当につらいよ」
余計な……もとい、便利な能力があるものだ。
マガツヒ様は、俺たちのカッスカスな信仰を感じ取っているらしい。
もう追放してくれたらいいのに……。
神敵とか言われなければ、別にそうしていただいて一向にかまわない。
言われると、ダリアたちが全力で殺しにかかってくるのでやめていただきたい。
「まず、信仰されるにふさわしいふるまいをしてくださいね、女神様」
「しているじゃん!」
「「…………?」」
何を……言っているんだ……?
信仰どころか、尊敬されるようなことすらしていないぞ、この馬鹿女神。
「まあ、ひと段落ついただろ、天使教とは。今のうちに逃げることを考えよう。本当に、ガチで」
「ええ」
天使教よりも、マガツヒ教からの脱出を成功させる必要がある。
失敗すれば死である。
一度失敗すれば、殺されはしないかもしれないが、警戒はされる。
最初のチャンスこそが、最大最期のチャンスとなるのだ。
何度でもシミュレーションを繰り返し、準備を入念にしなければ……。
そんなことを考えていると、扉をノックされる。
「夜分遅くにすみません。ダリアです。少しよろしいでしょうか?」
よろしくない。
居留守使いたい。叩き出したい。
だが、そんなことできるはずもない。
ダリアさんは怖いのだ。
俺とユーリエは視線を交わし、絶望しながら扉を開けた。
「もちろん、大丈夫ですよ。さあ、座ってください。狭いところですが」
「ええ。大切なダリアのためなら、いつでも対応させていただきますよ。何かありましたか?」
思ってもいないことを言いながら、ニコニコと笑みを浮かべる。
はあ、ダル……。まーた演技の時間だよ……。
ダリアは嬉しそうに笑うと、椅子に座った。
座るな、立て。そして、すぐに出ていけ。
「昼間にあったこと、まだお二人にお話しできていなかったことがありましたので、そこだけお伝えできればと思いまして。私の信仰を、本当のものだと思ってほしくて……」
……もしかして、さっきさんざん裏切り者とか言ってキャッキャしていたの、ばれてる? 嘘だよな?
き、気づかれていない、気づかれていない。
「ふふっ、そんな心配、する必要はありませんよ。私たちがダリアのことを疑ったことなんて、一度もありません。昼間にあったことを踏まえても、その信頼に微塵も揺らぎはありません」
「ああ、教祖様、聖女様……! 私の信仰、お二人にこれまで以上に捧げます……!」
感動したように涙を浮かべて、椅子から転げ落ちるように跪くダリア。
いらない。何も捧げてくるな。捨てたい。
『……僕は?』
そして、なぜか信仰をマガツヒ様ではなく俺とユーリエに捧げると言ったダリアに、不可解な表情を見せるマガツヒ様。
あなたもいらない。
「私が天使教の神聖騎士イリアと、どうして既知なのか、疑問に思われたことでしょう。それは、私が天使教と内通していたとかではありません」
ほんとぉ……?
そうだったら、俺とユーリエが確実に死ぬから、そうでない方がありがたいんだけどさあ……。
疑惑の視線を向けていると、ダリアは過去を恥じるように、顔を歪めて口を開いた。
「ご存じの通り、私は元天使教の信者。そして、私が天使教の孤児院にいたとき、イリアが先生だったのです」
興味ないんだけど、この話続くの?
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『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第16話
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『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺されました』第11話
https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1151266
https://kimicomi.com/series/eb41931417e85
『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第12話
https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1127191




