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外典・マガツヒ教創世記 ~働きたくないので弱小女神で宗教を始めたら、街を乗っ取る最悪カルトになっていた~  作者: 溝上 良
第3章 

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第53話 おあああ……











 サボり場の教会で、また俺たちは愕然としていた。

 身体を地面に放り出し、完全に脱力している。

 当たり前のように俺の上にのしかかっているユーリエ。

 邪魔だとはねのけたいのだが、今はそんな元気もない。

 それほどショックなことが起きているのだ。


「あのさあ……」

「ちょっと。わたしを見て呆れた顔をしないでよ。何もしていないでしょ、わたし」


 八つ当たりである。

 分かってはいても、やらざるを得ない。

 そうでないと、俺の精神がおかしくなる。


「どうするんだよ、この状況。マジで最悪じゃん。国の前に、天使教が直接俺たちを殺しにきたぞ」


 会談を申し込んできた天使教。

 こんなの、宣戦布告みたいなものじゃん……。

 絶対にちょっと目障りになった小さい宗教を押しつぶしてやろうと思っている感じじゃん……。

 天使教に目を付けられる前にトンズラする作戦が台無しだ。

 マガツヒ様は黄緑色のふわふわした髪を振り乱しながら、テンション上げているし……。


「望むところだね!」

「バカは黙っていてください」

「聖女……?」


 絶望した表情でユーリエを見るが、当のユーリエは真顔でガン無視である。

 天使教と正面から戦争しようとする女神だからね。仕方ないね。


「じゃあ、後は任せるわね。わたしは帰ってきたとき用のご飯を準備しておくから」

「待て」

「ぐぇっ!?」


 意味の分からないことを言ってさっさと逃げ出そうとするユーリエの長い白髪をわしづかみにする。

 ちょっとブチブチいった気もするが、気のせいだろう。

 仮に事実だったとしても、今回もユーリエが悪い。

 いつもすべてユーリエが悪い。


「こ、このわたしの美しい髪になんてことを……。次やったら殺すわよ」

「ご、ごめんなさい。掴みやすくて……」


 涙目になりながらありえないくらい強くにらみつけてくるユーリエに日和って謝ってしまった。

 だって怖いんだもん……。


「というか、なに俺だけに天使教対応させようとしてんだ。聖女として、お前も当然対応するに決まっているだろ」

「ごはんの準備があるのよ」

「嘘をつくな。お前、天使教と会っている間に逃げる気だろ。逃がさん、お前だけは……!」

「しつこいわね……っ! あなたが始めた物語なんだから、最期まで自分で責任を取りなさいよ……!」


 最期ってどういう意味だ!!


「俺が最も嫌いな言葉の一つが責任だ」

「最低……!」


 お前も嫌いだろ!!

 白い眼を向けてくるユーリエだが、こいつも責任とか義務とか、そういう言葉が大嫌いなのは知っているぞ!

 嫌々とは言え、付き合いは長いからな。


「というか、もう会談っていう言葉に良いイメージがまるでないんだよ。ついこの前、それで殺されかけたんだし」


 思い出されるのは、この街を治めていた貴族のなんとか君である。

 会談とか言っていたのに、本気で殺しに来ていた。

 しかも、死なない化け物連中をけしかけてきやがって……。

 あれのせいで、俺はマガツヒ様の力を使わざるを得ず、そのあと地獄の筋肉痛に襲われたのだ。

 絶対に許さん。死んでも許さん。


「本当よ。しかも、天使教でしょ? 絶対に異教を許さないあの宗教が、平和的に解決を求めるはずないじゃない。絶対に殺しに来るわよ」


 ユーリエの言葉にうなずく。

 会談と聞けば、何やら平和的な響きに感じるが、絶対にそんなことはない。

 異教を許容しない天使教は、これ幸いと殺しに来るだろう。

 天使教の信者が大多数を占めるこの世界なら、それを糾弾する人間もほとんどいないだろう。

 やっても、あっちはデメリットが何もないのだ。

 ずるくね?


「国より先に宗教が動くのって、本当にやばいよな。街をクーデターで失って、貴族も死んでいるのに」

「国に動いてほしいと思うって、本当におかしいわよ」


 はあ、と二人して重たいため息をつく。

 国から討伐軍が送り込まれるのも嫌で仕方ないが、天使教よりはまだ話を聞いてくれる可能性も……。

 ……いや、ないかぁ。だって、庶民が貴族殺してんだもんなあ。

 絶対、何も受け入れられずに殺されるよなあ。

 国からも命を狙われ、天使教からも命を狙われる。

 なんだこの人生。全然想定していなかったんだけど。


「……マジで嫌なんだけど。ここは男気見せて、お前が出てくれない?」

「わたしは女よ! 確認する!?」

「いらん」


 怒りのあまりシスター服を脱ぎ棄てようとするユーリエ。

 止めろ。需要ないぞ。

 ハメルとかは大喜びしそうだけれども、ここにいないのであれば意味がない。


「こういう時、マガツヒ様はマジで役に立たないですもんね。相談する気にもなれないし……」

「ひどくない?」


 ひどいのはお前の頭だろ。










◆


 そして、ついにその時はやってきてしまった。

 いつものライアーたちのサボり場の教会……ではなく、街の中心部に建てられた大きく立派な教会。

 そこで、マガツヒ教の教祖と聖女。そして、天使教からの使者が複数名向かい合っていた。

 彼らから見えない位置で、お互いのことを逃げられないようにつかみ合っているのはご愛敬である。

 ニコニコと青筋を浮かべた笑顔を浮かべている二人の前で、甚だ遺憾ではあるが、公の場ということも意識して天使教の使者のトップは頭を下げた。


「はじめまして。貴重なお時間を戴きまして、感謝します」


 女は言葉遣いこそ柔らかく丁寧なものの、その表情は無機質だった。

 もう帰りたい。


「私の名はイリア。天使教神聖騎士の一人です」

「おあああ……」

『言葉を失った……?』



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