第47話 あら、ライアー。目に何かが
最近、マガツヒ教の暴走を受けて萎え気味のライアーとユーリエ。
誰にもばれないように、サボる頻度を増やしていた。
仕事をやっているふりをするのは得意である。
そして、今日も今日とてのんびりサボろうとしていたところに、二人の女が押し入ってきた。
「…………」
「…………」
その二人――――シーサイスとアバドンは何も言うことなく、なぜか部屋の隅で小さく座りこんでいた。
もうこの時点でライアーとユーリエは面倒くさいと思っていた。
かまってちゃんは嫌いなのである。
「(……え、何この状況? サボる時間なのにいきなり押し入ってきて、何も言わずに座り込んでいるんだけど? クソ邪魔だわ)」
「(女相手なんだから、あなたの担当でしょ。何とかしなさい。この前、シーレスとかいう訳の分からない男の対応もわたしにさせたでしょ。天罰よ、天罰)」
「(えぇ……。あの女神様(笑)に罰を与えられると思うと腹立つなぁ……)」
ぶつぶつと言いつつも、しかし男女で対応を分担するのは前から決めていることだ。
ここでユーリエに押し付けると、今度は男の対応までさせられることになる。
仕事が増えるのは絶対に嫌なので、ライアーは心底嫌々対応してやることにした。
「えーと……どうされましたか? 何か悩み事があるのなら、私に仰ってください。解決策を出すことはできないかもしれませんが、話すだけでも気が楽になりますよ(解決策出せないからさっさと帰れ。邪魔)」
裏はさておき、表ではしっかりと心配しているような顔で優しく声をかける。
それを受けて、シーサイスはちらりと目を向けてポツリと。
「……別に」
「(は? じゃあこれ見よがしに落ち込んでますアピールしてんじゃねえよ。失せろ)」
固まったライアー、内心ブチギレである。
膝を抱えているため、シーサイスの凶悪なまでの胸が卑猥に歪んでいるのだが、それを見てキャッキャするような者はこの場に誰もいない。
唯一の男であるライアーも、微塵も興味を抱かない。
はよ帰れという思いしか頭の中になかった。
また黙り込むシーサイスを見かねて、アバドンが口を開いた。
「こいツ、今回マスターと聖女様を危険にさらしたことでダリアに怒られて落ち込んでいるんダ。ざまあみロ」
「あなたもでしょ」
「あー……(なんだこいつら。怒られて落ち込んでいたのかよ、ざまあ。ダリアもたまにはいいことするじゃん。そもそも、俺を危険な状況に追いやってマガツヒ様の力を使わせるまでに追い込んだのは事実だしな。もっと怒られろ)」
自分を嫌な気持ちにした人間が嫌な気持ちになっていると、ちょっと心がスッとする。
小市民らしい、嫌な気持ちの晴らし方だった。
何なら追い打ちをかけてやりたいくらいだが、そうするのは心優しいマガツヒ教教祖には似つかわしくない。
なので、心にもない適当な慰める言葉を吐く。
「私たちは気にしていませんから、安心してください。あなたたちのことはとても信頼していますので、大丈夫ですよ」
「……そう」
「(俺の思ってもいない慰めに対してその反応とは? 許せんよなあ……)」
またピキリと青筋を浮かべるライアー。
ちなみに、シーサイスとアバドンのことは微塵も信頼していない。
十天鬼衆とかいう訳の分からん恥ずかしい集団の連中なのだ。心を許すはずもない。
「反省はもちろんしているけド、優しいマスターに対して何もできないのはつらいナ。マスター、何かしてほしいことはあるカ?」
俺の前から今すぐ消えること。
と大きな声ではつらつと言おうとするのを何とかこらえた。
「いえいえ、お気になさらないでください。その気持ちだけで充分ですよ(お前らに頼むことなんてないわ。俺にとって不都合なことになりそうだし。……どうしてもというなら、天使教にごめんなさいするときの生贄に任命してやらんこともない)」
「マスターはそう言うと思っていたガ、それだと気が済まないからなア……」
うーん、と頭を悩ませるアバドン。
ダリア大好きなシーサイスと違って、別にダリアに怒られたことに対しては何とも思っていない。どうでもいいからだ。
とはいえ、さすがにライアーとユーリエを危険な目に合わせたという自覚は持ち合わせている。
それに対して罪悪感は覚えているのだ。
何とか罪滅ぼしがしたいと思うアバドンであったが、いい考えが出てこない。
そんな彼女に、ふっと嘲笑う声が聞こえた。
「はあ、やれやれ。あなたはその程度のことも分からないのね、アバドン」
「はア?」
スッと立ち上がるシーサイス。
先ほどまでの落ち込み様はどこにいったのか。
とりあえず煽られていることが分かったアバドンは、全力で殺気を込めてにらみつける。
ライアーとユーリエが直接向けられたら泡を吹いて失神するレベルだが、修羅場を何度も潜り抜けているシーサイスは一切ひるむことはない。
彼女は自信満々に胸を張りながら言った。
「ライアーも男よ。男が求めることなんて、至極簡単じゃない。何も悩むことはないわ」
「はあ?」
何言ってんだお前、とアバドンに続いて白い目をシーサイスに向けるライアー。
そんな彼の前で、シーサイスは自分の衣装をはらりとはだけさせた。
真っ白な肌。そして、深い胸の谷間があらわになり……。
「あ、ライアー。目に虫が」
「ほぐあああああああああああああああああ!?」
『ちゅ、躊躇なく目つぶしいったあああああああ!!』
満面の笑みのユーリエ、指をライアーの目に突っ込む。
とくに興奮することもなく、ただぼけーっと見ていたライアー、ガチの悲鳴を上げてのたうち回った。
大惨事なのだが、アバドンもシーサイスもお互いのことを煽ることに必死で気づいていない。
「お前、バカカ? マスターがそんなことを望むとは思えなイ」
「あらそう。じゃあ、あなたはしなかったらいいじゃない。私は別にライアーなんかに見られても何とも思わないし。私だけ贖罪しておくわ」
「……やらないとは言っていなイ!」
煽られるのもむかつくし、何よりライアーの目を独り占めしようとしていることが許せない。
アバドンも勢いよく衣装をはぎ取った。
褐色肌でシーサイスとは対照的。しかし、変わらず大きな胸が露出して……。
「あー、やっと目が回復してきた……。ユーリエ、てめえいきなり何しやが――――――!!」
その時、ユーリエの指がライアーの目に突き刺さる。
「あら、ライアー。目に何かが」
「何かってなんだいきなり雑すぎだろおおおおおあああああああああああ!?」
『ちゃんとツッコミを入れてから絶叫するの、なんだかプロ意識を感じるねぇ……』
過去作のコミカライズ最新話が公開されました。
期間限定公開となります。
下記のURLから飛べるので、ぜひご覧ください。
『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第11話
https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1116401




