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外典・マガツヒ教創世記 ~働きたくないので弱小女神で宗教を始めたら、街を乗っ取る最悪カルトになっていた~  作者: 溝上 良
第2章 

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第38話 もともと!?











「街の人間を救うためだと? これが? 俺にはさっぱり分からんな。むしろ、俺の私兵団とお前らの激突によって、犠牲になる民が増えるだろ。間違いなくいいことではないと思うんだが、俺の勘違いか?」


 嘲笑うように口角を上げるアリドーラ。

 じっと二人を見る。


「ふっ……」


 そんな鋭い目を向けられても、ユーリエは余裕の表情だ。

 むしろ、不敵な笑みを浮かべてアリドーラの警戒心をはね上げさせる。

 そして、その表情のまま、ライアーを見た。


「(さて、ここからどうやって言い訳したらいいか、早く教えなさい)」

『えぇっ!? 何も考えないで言ったの!?』

「(耳障りが良さそうなことを言っただけですよ。なに? 町の人々を救うためって。一度もそんな気持ち抱いたことないわ)」


 堂々とない胸を張るユーリエに唖然とするマガツヒ。

 天使教さえ絡まなければ、比較的常識を持ち合わせている女神である。

 どうしてこんなスカスカな中身なのに、あんなにも虚勢を張っていられるのかと、激しく困惑していた。

 そして、そんなユーリエのSOSを受け取ったライアーは、むしろ小ばかにしたような目を向けていた。


「(俺に聞くな。俺が他人のために行動しようと考えたことがあると思うのか?)」

「(そうね。期待する相手を間違えたわ)」

「(なんだと?)」

『それはそれでブチギレるんだね……』


 自分でいうのはいいけど、他人から言われるのは何か違う……。

 それも、自分と似たような性格をしているユーリエに言われると、余計に腹が立つ。

 ということで、無駄に短い導火線に火が付いたライアーは、怒りのままアリドーラと相対してやることにした。


「どうした? どういう意味で民を救うと言っているんだ?」

「それは、あなたが不正をしているからです(知らんけど)」

「ほう……?」


 ピクリ、と眉をはねさせるアリドーラ。

 ハッタリかと思ったが、ライアーの堂々とした姿勢からは偽りは感じ取れない。

 だが、アリドーラの反応と言える反応はその程度だった。

 バカみたいに取り乱すことはない。

 そんな彼に、ライアーはさらに続ける。


「具体的な内容については差し控えます。私たちは、あなたを糾弾したいわけではない。ただ、正常な状態に戻してほしいだけです。そうすれば、民たちも救われることでしょう」

「(具体的な内容は知らないから話せないだけなのに、こういうだけで恩着せがましさも与えられるわね。さすがライアー。クズだわ)」

『褒めてるの、それ? というか、あてずっぽうでそんなことを言っても、アリドーラはダメージなんてないんじゃ……』


 真摯な色すら感じられるライアーの諭すような言葉。

 当然、アリドーラがそれで心に響くというものがあるわけではない。

 だが、否定しがたいものは感じられてしまう。


「ちっ……」

『不正しているのかよ!!』


 忌々しそうに舌打ちをするアリドーラ。

 肯定はしない。しかし、否定もしない。


「(何を言っているんですか、マガツヒ様。貴族は不正をするものですよ)」

『えぇ……? そんなあやふやな奴が刺さっちゃったの……? アリドーラも何しているんだよ……』


 当たり前だと言わんばかりの顔をするユーリエ。

 貴族は悪。固定観念は非常に強かった。


「なるほどな。どこから漏れたのかは知らんが……。いや、ゴールか? あいつに話していたわけじゃないが、情報をとることはできたかもしれないな」


 どこから情報をとったのかと考えたが、そういえば異質な悪党官憲であるゴールが殺されていたことを思い出す。

 おそらく、それもマガツヒ教の仕業だったのだろう。

 その際に、ゴールから情報を抜き出したのであれば、そういった情報を手に入れている理由も分かる。

 むろん、すべてのことをゴールが知っていたわけではないが、その実力からかなり中枢に入り込んでいた男だ。

 何らかの情報を持っていても不思議ではない。

 アリドーラの確かめるような目を向けられ、ライアーはふっと不敵に笑った。


「(ゴール……? 誰……?)」

「(え、知らない……。あなたの友達じゃないの……?)」

「(俺友達いないんだけど)」

「(あっ……)」

『悲しい会話をしないでくれる……?』


 ユーリエと目と目で通じ合っている。

 随分と信頼し合っているようだ。

 教祖と聖女。同じく高い地位にいれば、権力争いなどが起きそうなものだが、この二人に限ってはないらしい。


「そうかそうか。お前らも知ってしまったわけだな」

「ええ。ですが、もちろん言いふらすつもりはありません。あなたがちゃんと悔い改めて、今後はしっかりと領地を治めてくれるのであれば、私たちは――――――(これで、なんかいい感じに収まるだろ。そして、俺の処刑回避。ヨシ!)」

「そうね。あなたはさっさとこの場所から去ればいいわ。あの街は、聖女様とダリア様が治めてくださるから。……まあ、ライアーもあなたよりはマシだし」

「今更心を入れ替えるとか言っても無駄ダ。邪魔だから失せロ」

「「ッ!?」」


 今まで黙っていた二人の護衛。

 シーサイスとアバドンが、鋭くアリドーラをにらみつける。

 ただの女であるはずなのに、その眼には強烈な殺意と敵意が含まれていた。

 様々な修羅場を潜り抜けてきたアリドーラでさえも気圧されてしまうほどの迫力があった。


「(ちょおおおおおおおお!? こいつら勝手に何言ってんの!? ふざけんなよ、クソカルト狂信者が! 今までいい感じに階段を積み上げていたのが台無しじゃねえか!)」

「(女の信者はそっちの管轄でしょ! 手綱をちゃんと握っておきなさいよ! 責任取ってあなただけ死になさい!)」

『でも、街の私兵団を壊滅させたのって、割合でいうと男の信者の方が多かったよ』

「(余計なこと言わないでください!)」


 二人のにらみにごくりと喉を鳴らすアリドーラ。

 しかし、ここで引くわけにもいかない。

 彼女らの言う通りにすれば、今度は国から自分の命を狙われる。

 街を乗っ取られ逃げ出した貴族なんて、国が守るはずもないからだ。

 それに、こういう話にいくのであれば、都合がいいこともある。

 そもそも、暗殺を考えていたのだから。

 とはいえ、相手側からそんな虚仮にしたような言動をとられるのは、アリドーラ個人としては断じて認めがたい。

 はっきりと怒りをあらわにする。


「……そうか。はっ、最初からそう言うつもりだったんだな、マガツヒ教……!」

「えぇっ!? い、いやいや、そんなことないっすよ!」

「本当本当! 別にそんなつもりじゃ……!」


 ごちゃごちゃと教祖と聖女が言っているが、どうせろくでもないことだ。

 アリドーラは聞き流すし、敵意を向けてきたことに対して備えをしているシーサイスとアバドンも話を聞いていない。

 椅子から乱暴に腰を上げたアリドーラは、スラリと剣を抜く。


「もともと、こっちも暗殺するつもりだったんだ。これで、罪悪感なんて捨てて遠慮なく殺しにいける」

「「もともと!?」」

「行け」


 カツン、と剣をたたいて音を鳴らす。

 それを合図に、控えていたアリドーラの暗殺部隊が姿を現し、マガツヒ教に向かって襲い掛かったのであった。


「「(ぎゃああああああああああ!?)」」

『意地でも悲鳴を表に出さないことは評価したい』



過去作のコミカライズ最新話が公開されました。

期間限定公開となります。

下記のURLから飛べるので、ぜひご覧ください。


『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第14話

https://magcomi.com/episode/12207421983858902427


『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第10話

https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1088163

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襲われてるのに悲鳴出ないの筋金入りすぎる 完璧な外面だ
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