第34話 うぼあー
『うひょおおおおおおおおおおおお!!』
燃え盛る天使教の教会を見て、両腕を上げてガッツポーズをしているやべー奴がいた。
それ、俺の信仰している女神だった。
なんだこいつ……。テロ行為に何を大喜びしてんだ……?
いや、それよりも俺の脳がまだ現状を受け入れられていないんだけど。
え、なにこれ? 燃えてるんだけど?
知ってるよね? この世界で最もポピュラーな宗教が天使教だって。
その天使教が、他宗教に非常に不寛容で、いざとなれば武力行使も辞さない頭のおかしい組織だってこと。
こんなことしたら間違いなく目を付けられるし、絶対に報復されるよね?
そうなったとき、真っ先に殺されるのって、一応トップの立場にいる俺なんだけど。
……何してくれてんだあああああああああああ!!
「…………」
そして、俺は呆然と天使教の教会を見上げたまま、脱兎のごとく逃げ出そうとしたユーリエの首根っこを捕まえた。
ぐぇっ、と聖女が出してはいけない声も聞こえてきた気がするが、そちらを見ていないから分からない。
そもそも、俺を置いて逃げようとした奴が悪い。
「待て、どこに行く」
「お花を摘みに行きますわ。だから、離してください」
「漏らせ」
「っ!?」
顔を真っ赤にして何とか逃げようとしているが、逃がすわけないだろうが……!
俺が死ぬなら、お前も死ね!
一人で俺が死ぬことはないと知れ!
「……アバドン? これはいったい……?」
同じく俺の隣で燃え盛る教会を見上げているアバドンに問いかける。
この異種族、何の感情も映してねぇ……!
とんでもないことをした自覚はないのか?
「天使教の奴らがごちゃごちゃうるさかっタ。それに、マガツヒ教をバカにしタ。だから、燃やしタ。頑張っタ」
「…………そっかぁ。頑張っちゃったかぁ」
ちょっと誇らしげに胸を張るアバドンに、俺は天を仰ぎ見る。
他の宗教の神でも、マガツヒ様でなければいい。
何なら、悪魔でもいいし、天使でもいい。
……俺を、助けてくれ。
「ち、ちなみに、ここにいた天使教の方々は殺したのですか?」
「んーん。別に殺してもいいと思っていたけド、ダリアがやめろっテ」
「ああ、それはよかった……」
そこまでいくと、取り返しがつかないからな。
……いや、もう今でも十分取り返しがつかないような気もするが。
でも、殺していなければ、何とか……! 何とか延命できないか……!?
「……死んでいた方がましだったと思うけド」
ん~? アバドンちゃん、今ボソッと何を言ったのかなぁ?
ダリア、その捕虜にした天使教信徒に、何してんの?
死ぬ方がマシって、お前どんなことがあるんだよ。想像できねえよ。したくねえよ。
「それデ、街の奴らがどう思っているかってことだったナ? それハ……」
当初の目的をアバドンが話そうとした時だった。
「申し訳ありません、教祖様、聖女様」
「「ひぃっ!?」」
俺とユーリエの肩が跳ね上がる。
一気に冷や汗が噴き出る。
さすがに演技の途中なので何とか抑え込んだが、抑えきれない恐怖があふれ出す。
この柔らかな声音……。
本来なら、聞いた人に安心感を与えるはずなのだが、今の俺たちにとっては恐怖の象徴でしかない。
ダリア。
シスター服を身に着けて笑顔を浮かべた女が、俺たちの後ろに立っていた。
きゃあああああああああああああ!?
「だ、ダリア? どうかしましたか?」
「お楽しみのところ、申し訳ありません。素晴らしい光景ですので、喜んでいただいていると思うのですが、どうしてもお二人にご報告しなければならないことが……」
申し訳なさそうに眉をゆがめているが……。
お前、教会焼き討ちのことを素晴らしいと思ってんの? マジ?
価値観が違いすぎてやばい。
「な、なんでしょうか?」
ガクガクと震えながらダリアに問いかける。
報告しないといけないこと……?
怖い、怖すぎる……! 何も聞きたくない……!
目を閉じ、耳をふさいでうずくまりたいが、そんな情けない姿は見せられない。
いまだに逃げようとじたばたしているユーリエの腕をつかむ力をさらに強めながら、ごくりと喉を鳴らす。
い、いったい何が……?
身構える俺に、ダリアはありえないほど優しい笑顔を浮かべて言った。
「領主が、戻ってまいりました。現在、にらみ合いが続いておりますが、すぐに攻撃があるものと思われます」
「うぼあー」
隣でユーリエがとんでもない悲鳴を上げていた。
分かる。
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『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第9話
https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1046038
『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第13話
https://magcomi.com/episode/12207421983750208762




