第27話 ちなみに、命名は僕です
「十天鬼衆っていうのはねぇ」
なぜかウキウキしながらマガツヒ様が話し出す。
この馬鹿女神から飛び出してきた言葉は、俺とユーリエを唖然とさせた。
十天鬼衆。
マガツヒ教が抱える十人の突出した戦力のことを指す。
単純に戦闘に特化した者もいれば、後方支援能力に特化した者。
潜入を行い敵組織の破壊工作を専門とする者や、あるいは金銭をかき集めることを得意とする者。
それぞれがマガツヒ教に重大な貢献をすることができる者たちのことをたたえて、十天鬼衆と呼ぶ。
「ちなみに、命名は僕です」
「ガキにただ格好いいから、かわいいからとなんの意味も持たない名前を付けるバカな親みたいですね」
白けた目を向けるユーリエ。
お前……聖女がガキって言うなよ……。
結構きついことを言われているはずだが、マガツヒ様は平然としたまま、胸を張る。
「ふっふっふっ、めちゃくちゃ刺してくるけど、僕はちゃんと意味を考えて名付けたんだもんね」
「どうせろくでもないでしょ」
俺もユーリエの言葉にうなずく。
この女神がまともな感性で名付けなんてできるはずがない。
宗教戦争を引き起こそうとしている、やばい女神だからな。
そんな俺たちに対して、心外だと言わんばかりに頬を膨らませる。
「そんなことないよ。天使教を鬼のように殺しまくる十人の衆……略して十天鬼衆!」
「やっぱり最低じゃないですか」
どんだけ天使教が嫌いなんだよ、この女神。
いったい何をされたらこんな恨みを抱くことができるのか、慈愛と慈悲の精神でしか形作られていない俺には到底わからない。
……というか、そんなやばそうなやつら十人もいるの!? 多くない!?
「そんなすごい奴らうちみたいな零細宗教にいますかね? それだけ能力があったら、天使教に行くと思うんですけど」
「それはもう僕に対する信仰のためだよ! 信仰最高!」
「間違っているだろ、信仰対象……」
いや、まあそんなやばい連中が天使教に集結しているのもどうかと思うんだけどな。
この世界の宗教、なんか怖いのばっかなんだよ……。
天使教もやることやってるしなあ……。マジで関わり合いたくない。
「そう言っているけど、あなたが信仰を広げていたんだから、共犯者よ」
「いや、お前もだろ」
お前の立場言ってみろ。聖女様だろうが、聖女様。
「だいたい、十天鬼衆って誰がいるんだ? それすら知らないんだけど」
「ダリアが序列第4位で、シーサイスは第7位だよ。ちなみに、順位は信仰の強さとマガツヒ教への貢献度、そしてやばさで僕の独断と偏見に基づいて決めているよ!」
「やばさって何?」
評価基準に入っていたら絶対におかしいのが入っているよね。
ダリアとシーサイスもその序列に入っているのか。
まあ、今回の騒動で相当やばいということは知られたから、そこに入っていても納得だが……。
「というか、シルヴィエの精神を一瞬でめちゃくちゃにしたダリアで4位なの? どうなっているのよ、この宗教の人間のやばさは」
ユーリエが絶望したように言うので、俺も黙り込んでしまう。
……よくよく考えたら、ちょっと内面を見られただけで相手を精神崩壊させてしまうような女がダリアだ。
なんでそいつが四番目なの?
それ以上にやばい奴らが、最低でも三人いるってこと?
嘘だろ……。マジでクソみたいな宗教になってんじゃん……。
しかも、殺人とか平気でしていたスラムの戦闘員をあっさりと壊滅させたシーサイスが七番目?
もう終わりだよ、この宗教……。
「3位から上は特にやばいよ。僕もちょっとあれかなって思うレベルだし」
「誰だ!? そいつらは誰なんだ!? 二度と会話しないレベルで逃げるから教えてくれよ!」
「ダメです。その子たちは君と会話するのが楽しいみたいだし」
ふざけんなよこのクソ女神……!
最初からやばい奴を教えてもらわないと、近寄ってきたときに逃げられないだろうが……!
見るからにやばい奴なら大丈夫だし、何なら心当たりは数人いる。
でも、ダリアのように表向きは普通の女の可能性もあるのだ。
クソ……! ガキの相手をしてくれる貴重な人材だと信頼していたのに……!
手ひどく裏切られた気分だ。
「ちなみに、ライアーとユーリエは序列の枠を超えた、番外序列だよ。格好いいでしょ!?」
「俺も組み入れられてる!?」
「番外ってなに!?」
愕然とする俺とユーリエ。
なにやってんだお前えええええええ!! 痛々しいバカグループに勝手に突っ込んでんじゃねえよ!
番外序列ってなんだよ。変なところで特別感出そうとしていて痛々しいよ……。
「ふざけんなよ。のんびり惰眠をむさぼろうとしていたのに、なんで胃が痛くなるようなことを言われないといけねえんだよ……」
「本当、小市民だよねぇ、君たち二人は」
小市民? 現実をよく見ていると言え。
「小市民じゃないですけど、普通にちょっと贅沢に生きていきたいだけなんですよ」
「そうそう。他人のお金でね」
「「いぇーい」」
「うーん、この最低二人……」
ハイタッチする俺とユーリエを見て呆れるマガツヒ様。
呆れるのはお前のしたことと思想だよ。
あーあ。せっかくゆっくりのんびりとできていたのに、色々と嫌なことを知らされてしまった。
このままのんびりする気分にもなれないので、俺は身体をだらしなく委ねてくるユーリエとマガツヒ様を押し返し、立ち上がる。
「はーあ。とりあえず、一度教会に戻るかぁ。さすがにずっといないとなると、変に噂されても嫌だしなぁ」
「そう。行ってらっしゃい」
「てめえも来るんだよ、バカが」
ユーリエを抱き起すと、ぶーぶーと文句を言ってくる。
うるせえ。俺が働くなら、お前も道連れだ。
本当なら、マガツヒ様も働かせてやりたいところなんだが……。
しかし、女神であるマガツヒ様を信者の前に出すと、いったいどうなってしまうことやら。
まともじゃない宗教ということを改めて突き付けられたので、軽率なことはできないのだ。
……本当、早くやめよう。
「僕はもっとのんびりしておこうかなぁ」
「ここに、俺の理想像がある……!」
「うるさいわねぇ」
ズルズルとユーリエに引きずられて教会に向かう。
あー。やっぱり仕事したくないわー。
◆
領主の館。
領地を治める貴族は、部下からの報告に眉をひそめていた。
「スラムで勢力図が変わった、だと?」
「は、はい、アリドーラ様」
部下の言葉を聞いて、領主アリドーラは、ふむと顎に手を当てた。
過去作のコミカライズ最新話が公開されました。
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『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第9話
https://kimicomi.com/episodes/13c56e2160ec2
『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第9話
https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1046954
『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第9話
https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1046038




