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外典・マガツヒ教創世記 ~働きたくないので弱小女神で宗教を始めたら、街を乗っ取る最悪カルトになっていた~  作者: 溝上 良
第2章 

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第26話 なに? その恥ずかしい名前











 教会には裏庭がある。

 庭の手入れも結構信者が頑張ってくれており、緑と花が生い茂る綺麗ものとなっている。

 鳥がさえずっていたりして、耳も幸せになれる空間。

 あたたかな日差しが差し込むような天気だと、ここでぼーっと過ごすのが何よりも幸せな時間となる。

 というのも、ここはほとんど信者が入ってこなかったりする。

 不思議に思っていたが、どうやら俺とユーリエが静かに過ごす場所だとされているみたいで、その邪魔をしないように入ってきていないのだという。

 おいおい、わかってんじゃねえか。

 ユーリエのことは引っ張り出してくれていいけど、こうして気の抜ける場所が少しでもあると、全然気持ちが楽になる。

 やっぱり、日ごろからストレスだらけの演技生活を続けていると、しんどいからなあ。

 だからと言って、人前でボロを出すような愚かしい真似はしないが、気を抜きたいとは常日頃から思っている。

 この中庭が、その一つの理想郷なのだ。

 今も、柔らかな芝生の上であおむけになってぼーっとしている。

 そして、当たり前のようにユーリエが俺の胸に頭を置いてぼーっとしているし、マガツヒ様も太ももの上に頭をのせてぼーっとしている。

 ……俺の負担でかくない? なんで人と神をそれぞれ支えないといけないんだ。ふざけんな。

 と思いつつも、どうせいつものことなので、今更払いのけるようなこともしない。


「ああ……平和だ……」


 ユーリエの白い髪を手で遊びながら呟く。

 相変わらずとんでもなくサラサラしてやがる。

 指の間からこぼれ落ちるほどだ。

 女の髪は命と聞いたことがあるが、ユーリエは当たり前のように俺にされるがままになっているので、それは本当なのか訝しい。

 しょっちゅう手持ち無沙汰になったら弄っていても、何も言われないしなあ。こいつの髪。


「……それってただユーリエが気を許しまくっているだけでは……?」


 マガツヒ様が何か小さな声で言っているが、俺もユーリエもあまりにぼーっとしていてろくに聞いていなかった。

 やっぱり、柔らかい日差しってめっちゃ眠気を誘ってくるわ……。

 なんで人間って夜に寝るんだろうな。

 昼間に寝た方が絶対に気持ちいいのに……。


「そうね……。日向ぼっこって最高よね……」

「ああ……。人類が生み出した最高の文化の一つだ」


 だけど、基本的にそれは許されないのが人間の労働というものだ。

 だから、俺は普通に働くのではなく、マガツヒ様を利用して宗教で食っていこうと思っていたんだけど……。

 世の中うまくいかないなあ。

 いや、いきすぎて、逆にうまくいっていないというか……。


「人類だけじゃないような気もするけど、確かに気持ちいいよねぇ……」

「神様にもそういうのが感じられるんですね」


 俺の膝の上でぼーっとしているマガツヒ様。

 この人も髪は長く、サラサラのユーリエとは違って、ふわふわとした黄緑色の髪だ。

 感触も違って、またこっちも気持ちがいい。

 まあ、マガツヒ様の髪は触らないけれども。

 一応、これでも信仰対象ではあるから。

 そうすると、不満そうに膝に頭をこすりつけてくる。

 何してんだ、この女神。


「というか、むしろ快楽主義者が多いような気がするなあ……。僕は違うけど」

「最たるものの例じゃないですか?」

「え、どこが?」


 きょとんと眼を丸くするマガツヒ様。

 そういうとこやぞ……。

 確かに、神って好き勝手している印象が強い。

 のだが、マガツヒ様は相当である。

 あのスラム掌握テロ事件の際、キャッキャと歓喜していたことは記憶に新しい。

 あれを見て、他人を助ける善神だと信じられるものがどれほどいるだろうか。

 筆頭信徒(笑)の俺は、まったく信じられない。

 白い眼を向けていると、ユーリエが顔を近づけてきてこそこそと話し出す。近い。


「本当にわかっていないのが怖いわよね」

「……俺、寄生する先の神様間違えたわ」

「僕のこと寄生先だと思っていたの!? 衝撃的なんだけど!?」

「衝撃的なのは、最近の信者の暴走だよ……。なんだよ、スラムの支配者って……。全然嬉しくねえよ……」


 俺はせっかくいい気分だったのに、それが台無しにされる感覚に陥っていた。

 つい先日、俺たちがいるスラムでは劇的な勢力図改変が起きた。

 というのも、今までスラムを支配していた組織が壊滅。

 その支配権を乗っ取るようにして、マガツヒ教が台頭したのである。

 ……俺の知らないところで、だ。

 あのさあ。誰がスラムの支配者になりたいと言ったの? バカなの?

 なんのうまみもないよ。というか、怖いよ。

 スラムには、外の世界で犯罪をして逃げてきた危険人物も大勢いる。

 どうやってそいつらとかかわっていくんだよ。無理だよ。

 なんで俺がそんな社会の底辺と接しないといけないんだ。ふざけんな。


「教祖様は大変ね」

「現実逃避してんじゃねえぞ。ハメルとかは間違いなく俺よりお前のために動いているからな。ぶっちゃけ、マガツヒ教の首魁は俺とお前だ。当然お前も他人事じゃねえからな」


 すました顔をしているユーリエだが、もちろんそんなことはない。

 マガツヒ教の中には、ユーリエを神格化して非常に重要視している連中もいる。

 その中の一人が、幹部のハメルである。

 眼鏡をかけたイケメン(俺には及ばないが)で、ぶっちゃけ俺よりもユーリエのことを優先している気さえしている。

 まあ、それも当然だろうな。

 しょせん、ハメルも男で、生物学的に雄。

 ユーリエという雌に発情してしまう気持ちも分かる。外面だけはいいからな、こいつ。

 俺は全然そんな気持ちになったことないけど。

 化け物に欲情している男を見ている気分だった。こわ……。


「あなただけが苦しみなさいよ……。なんでわたしが……」


 ほら、当たり前のように最低なことを言えるのが、この女だ。

 むかついたから髪を引き抜いてやろうかと思ったが、また首とか噛まれそうなのでやらないでやることにした。感謝しろ。


「お前も俺の甘言に乗って甘い汁を啜ってきたからだろ」

「むかつくけどぐうの音も出ないわね……」

「というか、あんな荒っぽい殺人すらするような連中を、どうやって壊滅させたんだよ。しかも、敵のトップは洗脳しているし。怖いんだけど。ガチのカルトじゃん」


 スラムの支配組織とか、荒事にも慣れたやべー連中であることは間違いない。

 集まってくる連中も表の世界では生きていられないようなやばい奴らばかりだろうから、それらを押さえつけて実効支配を何年も続けていたことから、その力の大きさが分かるだろう。

 ……なんでそんな奴らに勝っちゃってんの? この宗教。


「本当、いつからこんなやばい組織になったのよ……」

「え? 結構前からじゃん」


 ポツリと呟いたユーリエの言葉を、マガツヒ様が拾う。

 ごろごろと俺の膝の上でうっとうしく転がっていたが、ぴたっと止まって俺たちを見上げていた。

 その言葉を聞いて、俺とユーリエが硬直した。

 ……結構前から?


「は? どういうことですか?」

「んー……。ほら、僕って女神様だから、信仰の強さとかがそのまま力になるんだけど、それがかなり強いのは感じ取れるんだよね。数もどんどん増えていったから、君たちのおかげだと思っているんだけど……」

「あー。でも、マガツヒ様もここまでマガツヒ教が武力を持っていたなんてことは知らなかったでしょ? 俺たちはそれに驚いているんですよ」


 どうやら、マガツヒ様はマガツヒ教の広がりについて語っているらしい。

 俺はそうじゃなくて、マガツヒ教が持っていた武力の話をしていた。

 宗教が戦力を保持しているというのが意味わからんのだが……。

 俺がそういうと、マガツヒ様が何を言ってんだこの馬鹿、みたいな顔を向けてくる。

 むかついたので頬を引っ張った。


「いひゃいんだけど。だから、知ってたけどって」

「「…………は?」」


 もちもちの白い頬を自分で撫でまわしながら、マガツヒ様がジト目を向けてくる。

 ちょっと待て。この馬鹿女神、知っていただと?


「し、知ってたって、あのとんでも武力のことを……?」

「うん」

「い、いつから……?」

「結構前から」


 ……なんで事前に俺に言っておかねえんだよ、この馬鹿!

 そんなにやばい組織だとわかっていたら、もうとっくに逃げるための準備をしていたわ!

 お前のせいで、これからばれないようにフェードアウトしていくことを考えないといけないんだぞ。とんでもなく出遅れたわ!


「……というか、なんで君たちが知らないの? 僕の教祖と聖女だよね?」


 呆れたように見てくるマガツヒ様。

 理由なんて簡単だ。

 俺とユーリエは顔を見合わせて、そしてマガツヒ様を見る。


「だって……」

「宗教、興味ないし……」

「はあ!? 僕の教祖と聖女のくせに何を言ってんだああああああ!!」


 ブチギレ激怒するマガツヒ様。

 立ち上がってふわふわの髪が暴れ狂う。どういう現象?

 いや、ほらだって……俺たち、信仰なんて別に持ち合わせていないし……。

 まあ、天使教よりはマシだと思うけど、マガツヒ様も……ねぇ?


「マガツヒ教には、それはそれはすごい『十天鬼衆』がいるんだぞ!!」

「「……なに? その恥ずかしい名前?」」


 なんで教祖と聖女がその一度聴いたら絶対に忘れないような名前を知らないんだよ! いい加減にしろ!



第2章スタートです!

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過去作のコミカライズ最新話が公開されました。

期間限定公開となります。

下記のURLから飛べるので、ぜひご覧ください。


『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第12話

https://magcomi.com/episode/12207421983638281988


『自分を押し売りしてきた奴隷ちゃんがドラゴンをワンパンしてた』第8話

https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1020677


『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第9話

https://kimicomi.com/episodes/13c56e2160ec2


『人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された』第9話

https://manga.nicovideo.jp/watch/mg1046954

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距離感バグってんねぇ、この2人+神様
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