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愛しのマリアの豹変無双〜没落貴族の箱入り令嬢は鈍器片手に無双する!〜  作者: シュガースプーン。


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第42話 戦場のマリア

 戦といっても24時間戦いっぱなしではない。


 昨晩は夜戦もなく、砦の兵士達は見張りを交代しながらそれぞれ休息を取っていた。


「おい、あれはなんだ?」


 見張りをしていた兵士の1人が遠くから土煙を上げて近づいてくる何かを発見してそう言った。


「馬か? 猪か?」


 仲間がそう質問する横で、土煙の方を見て目を細めていた兵士が何度も目を擦る。


「いや、ドレスのお嬢様だ……」


「何言ってんだよ、目が腐ったのか?」


 反対側を見ていた仲間が笑いながらやって来て兵士の見ている方を確認する。


「ま、マジかよ……」


 自国側からとはいえメイスを片手にドレス姿で走ってくる令嬢に言葉を失った。


「ほ、報告を——」


 兵士がそう口にした時、背後の平原で爆発が起こった。


 目を離したのがよくなかった。


 見張りが目を離した隙を狙われたのか、魔法での攻撃を受けたのであろう。


 本日の戦が始まった合図であった。


 ◇◆


「止まれー! ここは今敵国との戦闘中だー!」


 兵士が、砦に向かって走るマリアに向かって叫んだ。


「武器を捨てろ! それ以上近づけば攻撃せざるを得なくなるぞ!」


 兵士は武器を構えて尚、マリアに向かって呼びかける。


「止まりませんわ! 私はマリア・エンリエット! 助太刀に参りましたの!」


 マリアは自国の紋章のついた鎧を着る兵士にそう叫ぶと、一気に加速して兵士の脇をすり抜けるようにして通り過ぎる。


 正確にいえば、もうエンリエットではない。しかし姉のいる砦で素性を名乗るのにこれ以上に勝手のいい名前はなかった。


「お、おい待ちなさ——」


 兵士の制止する声を置き去りにして、マリアは敵味方入り混じる戦場へと突入していく。


「お姉様はどこですの? お母様は?」


 戦場に居るであろう姉のセニカや母ロゼニアを探す。


「邪魔ですわよ!」


 その道中で、エルガー王国の紋章をつける兵士をメイスで殴り飛ばす。


「な、なんだこの女は!」


「鎧を着た騎士を殴り飛ばしただと!」


「その女は危険だ! まずはそいつから始末しろ!」


 エルガー王国の兵士達が声を上げて、マリアを先に狙い始めた。

 魔法師の部隊もマリアに狙いを定め、魔法を一斉に放ってくる。


「しゃらくさいですわぁ!」


 マリアが魔法に向かってメイスを一振りすると、飛んできた魔法を一斉に叩き落とした。


「ま、魔法を叩き落とした?」


「嘘だろ? そんなことできるのは聖騎士か魔法騎士くらいで……なんでこんな辺境の砦にそんな騎士が居るんだよ!」


 エルガー王国の兵士は畏怖の目でマリアを見ながらそう叫んだ。


「めんどくさいですわ! お姉様とお母様を探すのは後回し、どうせ戦の助太刀をするのです。全滅させてからゆっくり探せばいいのですわ!」


 捜索から戦闘に思考を切り替えたマリアは、メイスを肩に担いで戦場を見渡した。


「回収する手間がない分、いつもより楽勝ですわね」


 鎧には国の紋章が入っているので敵味方の識別はしやすい。


 マリアは一瞬で敵兵に近づくと、胴体を思い切り殴り飛ばした。


「ぐええ」


 敵兵はカエルが潰されたような声を上げると、ボコリと鎧を凹ませて、味方の兵士を巻き込みながら魔法師の方へと飛んでいく。


「よ、避けろ!」


 魔法師部隊の隊長がそう命令を下すが、高速で飛んでくる鎧の弾丸を避ける事ができずに巻き込まれて飛んでいった。


 その後も、マリアは戦場を縦横無尽に駆け回り、敵兵を蹂躙していく。


 マリアの手によって、小一時間もかからないうちに敵兵は全滅させられ、数日前に始まった戦は一旦の終わりを迎えたのであった。


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