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愛しのマリアの豹変無双〜没落貴族の箱入り令嬢は鈍器片手に無双する!〜  作者: シュガースプーン。


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第19話 買い物

 マリアは冒険者ギルドを出た後、鼻歌を歌いながら貴族街の方へ向かって歩いていた。


 明日のイザベルとのお出かけのために服を新調しようと考えたのだ。


 行きつけの店に入るとすぐにいつもの店員が出迎えてくれる。


「いらっしゃいませ、マリア様」


「はい。実は明日お友達とのお出かけがありまして、新しいお洋服で行きたいのですわ」


 マリアの要望を聞いた店員は「かしこまりました」と言って頷いた。


 マリアは別室へと通され、店員が部屋へマリアの要望に合いそうな服を並べていく。


 マリアは前回、自分は貴族で無くなった事を話した。

 そうでなくともこういった店は貴族の情報はすぐに出回る。


 しかし、この店はマリアの入店を断る事なく、以前とこなじ扱いをしてくれていた。


「これと、これが素敵ですわ」


 前回来た時とは違ってここ数日の稼ぎでお金は沢山あるので、1番安いものとは言わずに気に入った物を選んで購入した。


 この店で貴族である時と明確に変わった事が1つある。

 それは購入した商品を自分で受け取る事。

 使用人が馬車に積み込むのではなく、自分で持って帰る事。


 しかし、今はそれが嬉しかった。

 明日来ていくのを楽しみにして、洋服の入った袋を受け取ると、個室を出る。


 それから店の出口まで向かう途中、マリアが出口へ向かっていると先にドアが開いて他の客が来店した。


「あら、マリア・エンリエット様ではなくて?」


「ヴィオラ様、ごきげんよう」


 来店したのが顔見知りだったので、マリアはニコリと笑って挨拶をする。

 普段なら相手も「ごきげんよう」と言ってすれ違うのだが、今日は違った。


「ごきげんよう? 頭が高いのではなくて、ただのマリアさん?」


 マリアがヴィオラと呼んだ令嬢は口元を隠し、マリアを嘲るように言った。


 初めにわざわざ『エンリエット』と呼んだのも、貴族で無くなったマリアを馬鹿にした発言だったのだ。


「確かにそうですわね。ヴィオラ・ポルニッカ様、ご機嫌麗しゅうございます。先ほどの無礼、どうかお許しいただけますよう」


 マリアが侘びながらカーテシーをするのを見て、ヴィオラはいやらしく口角を上げる。


「この店は平民が入れますの? 相応しくない者を入れると店の品が落ちるのではなくて?」


「この店は品のある方々であれば拒む事はありません」


 ヴィオラに嫌味を言われた店員は表情を微動だにせずに店の方針を語った。


 貴族の次男三男で婿養子に行けずに爵位を継げなかった者は正式には貴族とは呼べない。

 そう言った人物も家からの仕送りで生きていれば平民のような生活はせずに貴族街で暮らしている。


 そのため、貴族以外お断りとするわけにはいかないのだ。


「ふん! でもこの方は没落したのですし、この店で買い物ができないのではなくて? ツケで買うなどというのは品があるとは言えなくてよ?」


「マリア嬢は冒険者としてお稼ぎになっております。ツケなども無くお支払いいただいております」


 自分の思うような返答をしない店員に苛立つ仕草を見せ、マリアを睨んだ後、ヴィオラは何も言わずに自分の担当の店員と奥へと行ってしまった。


「すみませんでしたわ」


 迷惑をかけた事に頭を下げる。

 しかし店員はゆっくりと首を振って否定した。


「何も問題ございません。それよりもマリア様、明日は当店の服で楽しんできてくださいませ」


「ありがとうございます! 絶対に楽しんできますわ!」


 店員の言葉にパアッと顔を明るくすると、マリアは購入した服の入った袋を大切に持って宿まで帰るのであった。


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