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愛しのマリアの豹変無双〜没落貴族の箱入り令嬢は鈍器片手に無双する!〜  作者: シュガースプーン。


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第15話 初めてのソロ2

「緊張しますわ……」


 マリアはダンジョンの入り口を見上げて息を飲んだ。


 これまでは理由はどうあれ、先輩の冒険者に負んぶに抱っこでダンジョンに連れて行ってもらっていた。


 しかし今回は周りから太鼓判を押されているとはいえ、初めて1人でダンジョンを探索するのは心細く感じた。


「この感じも久しぶりの感覚ですわ……」


 1人でダンジョンの前に立つマリアを見て、周りの冒険者がヒソヒソ話しをしている。たぶんその雰囲気からネガティヴなものだと思う。


 まるで、貴族のお茶会の時のようで。上っ面はニコニコとしていても、武の家の落ちこぼれである自分を笑っている感じに似ているからだ。


 実際は貴族の令嬢が1人でダンジョンに入ろうとしているように見えるので大丈夫なのかと見ている者が多く、しかし貴族の令嬢と思っているので話しかけて不敬罪にならないかどうかということでヒソヒソと話しているのだ。


 その聞かれないようにと内緒話をする感じがマリアに貴族のお茶会の時を思わせるのだろう。


 そう思うと、マリアをナンパした冒険者はバカだった(かわっていた)のだと思われる。


「でも、負けませんわ! 頑張ってお仕事して、帰ったら女将さんのシチューを食べて、休みの日にはイザベルさんと遊びに行きますのよ!」


 騎士団や魔法師団に勤める兄や姉が仕事終わりに酔って帰ったり、非番の日に出かけていくのを憧れて見ていた。


 いつか自分も。それが、今なのである。


 マリアはペシンと両頬を叩くと、ダンジョンへ入って行くのだった。



「あはははははは! 蚊程の相手にもなりませんわ!」


 ダンジョンに入ったマリアは入り口の緊張を放り投げ、メイスを振り回してダンジョンを駆け抜けていた。


 これまでの異常事態とは違い、ゴブリンが増殖しているわけでも浅い場所に凶悪な魔物が出現しているわけでもない。


 ロックタイタンを一撃で倒す実力のあるマリアに1匹でうろついているゴブリンやコボルトが相手になるはずもなく、駆け抜けるついでにサラッと倒されていた。


 そうしてどんどん奥へ進んでいくマリアの前に、一組の冒険者パーティが現れた。


 その冒険者パーティは魔物に苦戦を強いられていた。


 魔物と戦う仕事な以上、冒険者は命の不安がつきものだ。ゴブリンの増殖しかり、ちょっとしたイレギュラーで簡単に命を落とす。


 この冒険者パーティもそんなイレギュラーに見舞われたのか、それとも自分達の実力を見誤って場違いなエリアへ踏み込んだのか。


 とにかく苦戦を強いられているのは間違いなかった。


 冒険者達の中では暗黙のルールがある。無用なトラブルを避けるため、人の獲物は奪わない。


 ピンチに見えたら声をかけて、了承を得てから加勢する。

 了承を得たとしても、後になって必要なかったといちゃもんをつける冒険者もいるため、最近では見て見ぬ振りをする冒険者が多くなっていた。


 冒険者は自己責任。実力を見誤ってダンジョンで死ぬのも、助けていちゃもんをつけられるのもである。


「くそ。さっきの冒険者、どっか行きやがった! 俺達は文句言わねえよ!」


「やめろ! こんなとこまで来た俺達の責任なんだ! それより、サーラは大丈夫なのか?」


「止血できた! すぐにもどるから……痛っ」


 後方で手当てをしていた少女が立ちあがろうとして剣を落とした。剣は持っていた腕に巻かれた包帯は既に真っ赤に染まっていて、怪我の大きさがうかがえる。


「くそう。俺達はもう終わりなのかよ」


「ダメだ! 最後まで頑張るんだ!」


 弱音を吐く冒険者達の中に、一筋の閃光が舞い込んだ。


「邪魔でしてよ!」


 ダンジョンに似つかわしくない上品なドレス。


 魔力に覆われてほんのりと光る身体。


 彫刻のように美しい顔を好戦的に歪めた令嬢が鈍器を魔物の脳天に振り下ろしていた。


 ダンジョンの中での冒険者達独自の暗黙のルールなんてマリアは知らない。


 冒険者達の生存の方に重きをおく冒険者ギルドがそんなルールを教えるわけがない。


 魔物を一撃で倒した後、マリアの事を呆然と見る冒険者を無視して魔物をマジックバッグに詰め込む。


「まだまだいてこまし足りませんわー!」


 奇声を上げながら颯爽と立ち去ったマリアの後ろ姿を見送った冒険者達は顔を見合わせる。


「俺達助かったのか?」


「そうみたいだな……」


 ホッとした冒険者達は足から力が抜け、地面に座り込んだ。


「2人とも、良かった!」


 後方で剣を落とした冒険者が戦っていた2人に勢いよく抱きついた。


「痛い!」


「おいおい、大丈夫か?」


 抱きついた瞬間手の痛みに叫ぶ冒険者を心配して1人が声をかける。


「誰だか知らないけど感謝しないとな」


「ギルドで見かけたらお礼を言いましょう」


「ああ。助けられて文句を言うヤツってどんな根性してるんだろな?」


「さあ。考えても分からないさ。ほら、帰ろう! サーラの手当てもちゃんとしないといけない」


 冒険者達はマリアが走り去った方向に届かないとは分かっていながらもお礼を言ってからダンジョンを引き返していく。


 走り去ったマリアというと、その後も魔物を倒しながらどんどん奥へと進んでいくのであった。


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