第13話 ゴブリン調査先遣隊6
「なんで私があんたのおもりなんかしなくちゃいけないのよ……」
「いいじゃないですか! 私はお友達とお出かけできるのが嬉しいですわ!」
「友達ねぇ」
本日のマリアはイザベルと買い物に出ていた。
ニコニコと歩くマリアの隣でイザベルが文句を言っているが、その顔は悪くないと言った雰囲気である。
なぜ2人で買い物に来ているかというと、時間は少し遡る。
ゴブリン増殖事件が終わった日、イザベルは支部長室へ呼び出された。
理由はギルバートにマリアをヒーラーと言って紹介した件。
前日の激務による寝不足で記憶になかったとはいえ、マリアにヒーラーの適性があるのかを確認せずに紹介した事でお叱りを受けた。
本来なら職務怠慢でクビになる事もあり得たのだが、今回は特別な業務を請け負う事で一旦保留となった。
その業務とは、マリアの御守り。
マリアが冒険者をしていくうえで、トラブルが起こらないように面倒をみるお世話役に命じられたのである。
ギルバートやシュピーゲンの証言から、マリアが武器を握るとギルバートよりも強い冒険者である事はわかっている。
その際、パーティでの戦闘に向かない事や、物事を信じやすく余計なトラブルに巻き込まれる可能性がある事など冒険者をしていくにあたっての問題点も浮かび上がっていた。
そこで、普通はあり得ないのだが、お世話役に白羽の矢がたったのがイザベルだったのである。
それで今日はなぜ冒険者のイザベルがマリアと買い物に来ているのかというと、今日はマリアの武器を買いに来たからだった。
「うわぁ、ここが武器屋なのですね! 沢山ありますわ! あ、あれはお父様が使っていた物ににてますわ! あちらはお兄様が持っていた物、あの杖はお姉様の物ににてますわ!」
武器屋に入って色々な武器を見て目を輝かせるマリアをみて、イザベルは苦笑しながらため息を吐いた。
「あんたが今日選ぶ武器はあっちよ。ギルバート様やシュピーゲン様のオススメなんだからそれ以外はダメだからね!」
そう言ってイザベルは色々な武器に目移りしているマリアを引っ張ってある武器コーナーへと連れて行く。
「ここよ! この中から選びなさい!」
「これはこの前使った武器ですわね!」
イザベルが連れてきたのはメイスが並ぶコーナーであった。
剣や斧などの刃物は使うまでにそれなりの訓練が必要になる。
マリアは武器を持つと性格が好戦的になり、訓練ができないだろうというのごシュピーゲンが幼少期の出来事から導き出した意見であった。
それに、訓練が必要ない鈍器であればロックタイタン級の魔物を一撃で倒せるのは実証済みだ。
なので、癖のない振り回せる鈍器という事でメイスが選ばれたのであった。
「どれにしましょう、迷ってしまいますわ。イザベルさんどれがいいかしら?」
「んー、あんたは元お嬢様だし普通のよりもこんな感じの変わったのの方が似合いそうだけどね」
マリアに聞かれたイザベルが指差したのは、少しお高めだが装飾のあるメイスであった。
「では、それにしますわ!」
「は? もっとちゃんと考えなさいよ!」
「だってどれがいいかなんて私には分かりませんもの! だったらお友達が選んでくれた物のほうが大切に使えますわ!」
「だから友達って……まあ、いいんじゃない? 早く買い物も終わるし」
マリアが即決した理由を聞いたイザベルは憎まれ口を叩きながらも口角を少し上げる。
「あ! あんた手に取っちゃダメよ! ダンジョンに入るまでは武器を握るの禁止なんだからね!」
イザベルが買い物に一緒に来た理由の一つにマリアに武器を持たせないというのもある。
「これ、試着いいですか?」
「ああ、勝手にやっていいぞ!」
店主の了解を得た後、イザベルがメイスを手に取り、マリアの腰にメイスを装備させる。
「よいっしょって、なかなか重いけどあんた大丈夫なの?」
腰にメイス用のベルトを装備して、そこにメイスを引っ掛ける。
「ええ。平気みたいですわ!」
「危ないわよ! でも、ドレスにメイスってやっぱりバランス悪いんじゃない?」
イザベルに見せるように嬉しそうに一回転したマリアに注意したがら、イザベルが感想を口にする。
マリアは戦闘時に武器と同じく体や服にも魔力を流しているので下手な防具よりも防御力が高い。
それに魔法使いなど重い鎧で動きが遅くなる事を嫌う冒険者は防具を最小限にする者も多い。
結果として、マリアは武器だけ装備すれば問題ないだろうという結果に落ち着いたのであった。
それにしても、ドレスにヒールでダンジョンに入る冒険者はいないが、それはもう今更だろう。
「さて、これで終わりね」
武器屋でメイスを購入して外に出たイザベルがバックを片手に持ちながら大きな伸びをした。
メイスは支部長から借りたマジックバックにしまったので、2人とも大荷物を持っているわけではない。
「それじゃあイザベルさん、次はお茶しに行きましょう?」
「はあ?」
「せっかくのお友達とのお出かけですもの、これで終わったらもったいないですわ」
「まあ、いいけど……」
マリアのストレートな誘い文句にイザベルが頬をかきながら返事をすると、その瞬間マリアに勢いよく腕を引っ張られた。
「ほら、早く行きますわよ!」
「もう、あんたこの前沢山稼いだんだしお茶くらい奢りなさいよね!」
「もちろんですわ!」
「本気にするんじゃないわよ! 割り勘でいいわよ。……友達なんでしょ?」
「はい!」
イザベルの手を引き振り向いたマリアの笑顔は太陽に照らされて輝いているのであった。




