第11話 ゴブリン調査先遣隊4
マリアがゴブリンを殲滅し終わったのと同じくして、ロックタイタンに崩された通路の向こうから声が聞こえた。
「ギル殿! マリア様! まだ無事ですか!」
馴染みのある声にハッとしたギルバートは、掛けられた声に慌てて返事をする。
「あ、ああ! 無事だ!」
「よかった。今岩を退けます! もう少し耐えてください!」
「はは、大丈夫だよ。信じられないだろうが魔物は全滅した」
ギルバートの返事に岩の向こうから「は?」と素っ頓狂な声が聞こえると、声の主は震える声である質問をしてくる。
「まさか、マリア様ですか?」
「シュピーゲン信じられるか? お嬢さん1人で全部片付けてしまいやがった」
「マリア様の力はそれほどのものになっておられて……とりあえず、道を開通させます。もう少しお待ちを!」
「ありがとう」
人と話して少し落ち着いたギルバートはマリアに声をかけるためにゆっくりと歩き始める。
「ああ、怖かったですわ」
「そんなわけあるか!」
武器を地面に置いて手を離した途端におよよと吐いたマリアの言葉にギルバートは勢いよくツッコミを入れた。
ギルバートと大きな声に驚いたマリアが振り向いてギルバートの方をじっと見ると、何かを思いついたかのようにハッとした顔になった。
「お怪我はありませんか? 癒し方を教えてもらえれば頑張って癒しますわ!」
マリアの言葉を聞いたギルバートは頭の上に大きな疑問符を浮かべる。
「やり方って、お嬢さんは回復魔法が使えるヒーラーではないのか?」
「私は魔法は使えません! そんな私でも癒すことができると教えてもらったのですがこの前の方々に教えてもらう前にダンジョンから出てしまって。なので、教えてくださいますか?」
マリアの説明を聞いてもギルバートは理解できなかった。
ヒーラーといえば回復魔法だ。それ以外の回復方法は薬と包帯だが、それはヒーラーとは言わない。
色々考えた結果、ギルバートはある事を思い出す。
前回マリアを見かけた時はガラの悪そうな冒険者と一緒にいたのでつい声をかけてしまったこと。
そして、回復や手当てと言わずに癒しと言っていること。
「まさかとは思うがそれはこの前一緒にいた男達から聞いたのか?」
「はい! 何もできない私でも癒しを施せるから冒険者になれるって言ってましたの」
ギルバートはその返答を聞いて大きくため息を吐いた。
「それは騙されたんだ。回復は魔法か薬でするものだ」
「……そうでしたのね。では、私は冒険者を続けられないのですね……これからどうしましょう……」
ギルバートの答えを聞いて肩を落としたマリアの言ってる意味がギルバートには理解できなかった。
「ロックタイタンにこれだけのゴブリンを倒すことができれば十分冒険者はできるだろう?」
「そうですの? 私は才能がないから武器は持たなくていいとお父様に言われていましたのに……」
「そんなバカな……」
ロックタイタンと無数に転がるゴブリンの死体を見ながらギルバートは呆れて言葉を失っとしまった。
沈黙が訪れたところで、タイミングよく道を塞いでいた岩が退かされてシュピーゲンがこちら側へやって来た。
「お待たせ致しました。お2人とも無事でよかっ……ははは、流石はマリア様だ」
シュピーゲンはすぐに目に入った目の前の惨状にから笑いを漏らす。
「シュピーゲン殿、お1人ですか?」
「ああ、はい。マリア様が危ないと聞きまして私は先に急いで来たのですよ。何かあればエンリエット家の皆様に顔向けできませんから。まあ、取り越し苦労だったようですが」
シュピーゲンが苦笑すると、通路の向こうから騒がしい足音が聞こえてきた。
「ご無事ですか!」「今加勢します!」「すぐにバフを!」
遅れていた騎士や冒険者も続々到着したようである。
騎士団や冒険者達はフロアいっぱいに転がるゴブリンの死体とロックタイタンを見て、驚愕の表情を浮かべる。そしてその数秒後には、誰からともなく大きな歓声がフロアに響いた。
「すげえや!」「ギルバートさんがやったのか?」「団長とお2人でだろう?」「俺たちが来るまでの間に全滅させちまうなんてなんて人達だ!」
救援に来た全員がギルバートとシュピーゲンの功績だと思って賞賛する。
それに対してギルバートもシュピーゲンも否定をするのだが、大歓声に飲まれて2人の言葉は届かない。
その光景を見て、雰囲気に飲まれたマリアは満面の笑みで拍手をしているのであった。




