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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第12章 彼女たちは、どう生きるか
557/559

556.帰路

 アジサイが、大声で宣言する。

「では、帰りまーす。

 皆さん、もうこの地に思い残すことはありませんよね!」


 パトリックが、何か言おうと口を開く。

 アジサイが、もう一度叫ぶ。

「ありませんよね」

 パトリックも口を閉じた。


「ジュラルミン一味を捜索して、捕まえなくて良いのですか?」

 それでも、サナンダが聞いた。

 キャサリンが答える。

「放置しておくしかないと思います。

 あくまでリコグリ王国の国内の問題です。

 我々が深く関わり続けるわけには参りません」


 マキナも便乗して発言する。

「たこ焼き用の鉄板は、どうするんだ?」

 こっちは、くだらない質問だ。

 彼にとっては、帝国でもたこ焼きが食べられるかどうかが、大きな問題なのだろう。


 それにも、キャサリンが答えた。

「鍛冶屋さんが、たくさん作ってくれることになったので、今ある鉄板をもらってきました」

 鍛冶屋さんは、たこ焼き用の鉄板を1日に何個も作れるだけの実力者だった。

 すぐにでも新しい鉄板が出来ると知って、古い鉄板は譲ってもらえたのだ。


 それを聞いて、アジサイがニッコリ笑う。

「今のキャサリン様のお言葉を聞きましたね。

 では、帰りましょう」


 そう言うと、アジサイはプライベートジェットを野原に現出させた。


 タラップを使って、順番に乗り込んでいく。

 皆乗り込むと、アジサイはタラップを収納した。

 ドラゴンに近い大きさのプライベートジェットだけでなく、それに付随する機器、燃料など、何から何まで収納できるアジサイの魔法の収納庫の容量に、アクアは驚いていた。


「まあ、そうは言っても、俺たちドラゴンに比べたら小さいし、速度もドラゴンほどは出ないんだろ」

 それでもアクアは、負け惜しみっぽく嫌味を言う。


「そう思うんなら、アンタだけ空を飛んで帰っても良いのよ」

 アジサイは嫌味で返すが、ちょっと困った顔になる。

「速度は良いんだけど、燃料がもう心もとないのよね。

 次にリコグリ王国に来たら、帰りの燃料が無いわ」

 アイコンタクトを送られたキャサリンも思案してしまう。



 行きよりも人数が増えたが、操縦席にアジサイとアイが並んで座ったので、座席が足りなくなることは無かった。

 アナとカルデラは、キャビンアテンダント用の簡易座席だが。


 皆着席すると、シートベルトのサインが点いた。

 アナが、みんなのシートベルトを確認すると、壁に設置されたマイクで操縦席にそれを伝える。

 今回は草原なので、十分な滑走距離が取れるだろうとキャサリンたちは油断していた。

 そろりと飛行機は滑走を始める。

 整地されているわけでは無いので、やはり地面はデコボコなのだろう。

 機体は、大きくバウンドを繰り返す。


「おいおいおい、大丈夫なのかよ」

 初めてこの飛行機に乗ったマキナは、凄く不安そうだ。



 このままでは離陸速度まで加速できないと判断したのか、機体はいきなり空中に瞬間移動した。

 落下していくことで、重力でグングン加速していく。

 前かがみで落下していく、まさに超高速のジェットコースターのような状態から、水平飛行に移る。



「フーッ、行きの自由落下よりは、大部ましでしたね」

 キャサリンが安心したように、シートベルトを外した。


 マキナが文句を言う。

「キャサリンちゃん……

 ちょっと待ってくれよ。

 行きは、あれよりも激しい離陸をしたのか?

 俺様は死ぬかと思ったぜ」


「ハハハハ、マキナは根性なしだなあ。

 あれくらいで命の危険を感じたのか」

 ライトが笑う。


「何だよ、ライト。偉そうに。

 お前だってホントはビビってんだろ?」


「いや、僕は飛行機のことを良く知っているから、基本的に飛行に関して恐怖を感じることは無いよ」


 その言いように、ちょっとカチンときたのか、アクアが文句をつける。

「ドラゴンは、音速以上で飛ぶことが出来るんだ。

 マキナ様が、あのくらいのことでビビるはずないだろ。

 ライトの方こそ、未経験の落下で、小便漏らしたんじゃないか?」


「そ、そんなわけないだろっ」

 ライトは、ちょっとムキになった。


 マキナは、アクアがライトをやり込めたのに満足していたが、自分がビビるはずないと言われたことに少し引け目を感じて、微妙な表情になっていた。



 シートベルトのサインが消え、機内放送が流れる。

「アテンションプリーズって言った方が良いですか?

 このジェット機は、安定飛行に入ったので、もうシートベルトは外して良いですよ」


 キャサリンは、ちょっとシートベルトを外すのが早かったかなと、テヘペロな気持ちだった。


 アジサイの声を聞いて、エドワードがキャサリンに聞く。

「アテンションプリーズって何なんだ?」


「機内放送を聞いてねってことですよ。

 地球で飛行機に乗ったら、最初の機内放送でほぼ必ず言われる言葉なんですよ。

 そのせいで、キャビンアテンダントさんと言えば『アテンションプリーズ』って言うみたいな結びつけが出来たんですね。

 行きには言わなかったから、誰かから言われたんですかね」


「フーン」

 エドワードは地球のことは分からないので、自分以外の人間がキャサリンと共通の知識を持って通じていることに、ちょっと割り切れない気持ちを感じていた。




 完全に安定飛行に入ったので、アナが飲み物を配り始める。

 アジサイも客室キャビンにやって来た。

「おいおい、操縦室にいなくて大丈夫なのかよ?」

 マキナが文句をつける。


「自動操縦になっているから、大丈夫よ。

 念のために、アイに見てもらっているし」


「アイは、操縦できるのか?」


「知らないけど、何かあったら呼ぶように言ってあるから」

 アジサイは、耳に付けたインカムを指さした。


 アジサイは、リコグリ王国で手に入れたドブロクの瓶を数本持っている。

 この人数でそれだけのお酒を飲んだら、またみんな酔っ払ってしまうだろう。


 エドワードが、自分に言い聞かせるように言う。

「お、俺は、帰りは飲まないぞ。

 酔っ払ってしまったら、帝都でだらしない恰好を晒すことになってしまうからな。

 それは、皇子として許されないからな」


「本当にそれが理由なのか?

 雑魚天使の裸を見逃したくないからじゃないのか?」

 アクアが突っ込みを入れる。


「えっ、そうなの?」

 キャサリンが、ジロッと睨む。


「ち、違うぞ。断じて違うからな!」

 エドワードが必死で否定するが、皆微妙な笑顔で反応している。


「わ、私は、そんな簡単に裸体を晒したりしないからな」

 カルデラも必死で否定する。



「しかし、酒なしでは何十時間も時間がつぶれんじゃろ」

 ビソアやシロッコは、アジサイに勧められるまま酒をあおり始めた。


 機内は和やかな雰囲気に包まれている。

次回更新は、5月5日(火)の予定です。

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― 新着の感想 ―
アテンション… 『傾注』とか『注目』って意味だよねぇ。 Pleaseが入るから『注意事項があります。聞いてください。』って意味になるけど。 カルデラちゃんは一応、女性体型(美少女)だから男性の目を引…
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