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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第12章 彼女たちは、どう生きるか
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557.帰国

 エドワードが酒を飲まないせいで、サナンダやパトリックたちも飲酒を避けたようだ。

 マキナは飲みたがったが、アジサイが「子供は飲んじゃダメ」と言って、飲ませなかった。

 アジサイとビソア、シロッコ、ソフィアとファビオで酒宴を始めた。


 ただ、ソフィアとファビオは、酒に酔わない訓練を積んでいるかのように、全く酔っている様子が無かったが。


 素面しらふの面々は、本を読んだり、軽いおしゃべりをしたり、うたた寝したりして時間をつぶしている。



 飛行機はほとんど揺れないし、あと半日ほどで帝都に帰ることが出来ると思うと、予想外に盛沢山だったリコグリ王国への遠征も良い思い出になりそうな、緩い雰囲気が機内を覆いつくしている。


 そう言えば、帰りの飛行機では座席が増えていた。

 キャサリンがどういうことか聞いてみると、ジェット機の内装は何種類か取り換えられるそうだ。

 ジェット機を内装違いでまるごと4機買ったそうなのだが、2機は内装とエンジンだけ取って、機体は地球に置いてきたそうだ。



 マキナが、偉そうに語り始める。

「みんな知ってるか?

 空を飛ぶことを当たり前に考えてジェット機に乗ってるかもしれないが、実はジェット機はどうして飛ぶのか、本当はよく分かっていないそうなんだぜ」


 オリガが呆れたように返す。

「そんなの、ジェットエンジンのすごいパワーで、ビューンと空を飛んでるに決まってるニャ」


「そうじゃなくて、虫とかハチドリとか、どうして飛べるのか科学的に説明がつかないと言われている奴がいるじゃないか。

 実は、飛行機も科学的にはどうして飛べるのか説明がつかないそうなんだぜ」

 マキナは得意げだ。


「ああ、それなら聞いたことあるニャ」


「つまり、飛行機は理論的には飛べないものなんだぞ。

 安心していたら、何かのはずみで飛べてる理由が無くなって、墜落してしまうかも知れないんだぜ」


「ふえー、それは恐ろしいのニャ。

 アジサイ、脱出用のパラシュートは用意しているのかニャ?」

 オリガが、一気に不安そうな声を出す。


「パラシュートは魔法の収納庫(アイテムボックス)に入っていると思うけど、すぐには出てこないわよ」

 アジサイは、冷静に答える。


 エドワードも急に怖くなったようだ。

「お、俺も、こんな鉄の塊が空を飛べるのが不思議だったんだ。

 それを聞いたら、なんだか怖くなってきたぜ」


「まあ、厳密には鉄の塊じゃなくて、アルミニウム合金の塊ですけどね」

 カルデラが、つまらない突っ込みを入れる。


「俺様たちドラゴンは空を飛べるから、飛行機が墜落することになっても助かるんだけどな」

 マキナが、さらに図に乗っている。


「墜落したら、マキナの尻尾につかまってアタイだけでも助かるのニャ。

 あ、でも、カーチャが死んじゃったら困るから、アジサイ、カーチャだけは助けてあげて」

 オリガは、真剣な表情でアジサイに懇願する。



 暇つぶしの戯言ざれごとと聞き流そうと思ったが、元リケジョのさくらだったキャサリンは、ちょっと黙っていられなくなった。

「虫やハチドリは、体を軽くして、羽ばたく力を確保するために羽を動かす筋肉を強くしているから飛べるみたいですよ。

 飛行機は、翼の揚力で飛んでいるだけです」


 ライトが口をはさんでくる。

「その翼の揚力っていうのが、科学的に解明されていないって話だろ?」


 キャサリンは、解説を始める。

「飛行機の翼は、上面と下面で形が違うんです。

 飛行機が進むと、翼は空気の中を突っ切っていくわけですが、翼から見ると空気が翼の上下を通っていくことになります。

 空気は、翼の形に沿って進んでいきます。

 上面と下面で形が違うせいで、翼に対する空気の相対速度が変わってしまいます。

 速度が違うと空気の密度が違ってしまいますから、密度が高い翼の下面の空気は翼を押し上げることになります。

 これが揚力です」


「なるほど、そういうことだったんですね」

 サナンダは、感心している。


「何を話しているのか、サッパリ分からなかったのニャ。

 でも、カーチャの言うことが正しいと思うニャー」

 オリガは、チンプンカンプンのようだ。

 でも、ちゃんと飛行機が飛ぶことの理屈が分かっていると知って、安心した様子だ。


「お、俺は……、何となく分かったような気がしないでも……、ないぞ。

 さすがは、キャサリンだ」

 エドワードは、一生懸命アピールしている。



 アジサイは、ライトの肩を叩く。

「アンタも、本当は分かってなかったでしょ。

 似非インテリ君」


「い、いや、そんなことは……

 今のキャサリンさんの説明には、数式が一切出てこなかった。

 さすが、分かっている人は違うと感動していただけだ」


「地球人は、揚力の話をするときに、必ずベルヌーイの定理がって言いますからね。

 厳密には、流体力学の知識が必要で、微分方程式が解けないと本当に理解しているとは言えませんが」

 カルデラが少し自慢げに言った。


「ええっ、カルデラ、そんな知識があるの?」

 クララが驚いている。


「私は、本当は知識豊富な天使なのですよ。

 もっと尊敬してください」

 カルデラは胸を張ったが、皆もう次の話題に移っていた。



 そんなこんなで、くだらない話をしているだけで時間が経過して、無事に帝都に到着した。

 着陸はスリル満点を予想していたが、帝都の近くの石畳の直線道路を滑走路代わりにしたので、身構えていた者たちが拍子抜けするほど安定した着陸になった。


 ジェット機がアジサイの魔法の収納庫(アイテムボックス)に収納された後、バスに乗ってファルマイト公国公邸に帰った。

 そして、そこで解散となった。




 一週間の予定で学校に届け出をしていたので、真面目なキャサリンは、まず帰ってきたことと来週からまた登校することを学校に報告に行った。



 カルデラの目的であった大魔王の処置は出来た。

 まだ、アイのお腹の中で消化中だが、あとひと月もすれば消滅するだろう。


 地震で被災した人たちに救援物資も届けられたし、パトリックの母国の戦争の危機も回避できた。

 ただ、キャサリンは、クララがリコグリ王国の後に龍人たちの国にも行くと言っていたのが少し気になっていた。

 しかし、一仕事を終えた満足感で、公邸に帰るとバタンキュー状態で眠ってしまった。


 翌日は学校から帰ると、妹をはじめとして家族から土産話をせがまれて、旅での出来事を話していたら一日が過ぎてしまった。


 また、日常が帰ってきた。

次回更新は、5月19日(火)の予定です。


次回から新章に突入の予定ですので、構成を考えるのに一週間のお休みをいただきます。

間が空きますが、見捨てないでくださいね。

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― 新着の感想 ―
小学生に微分積分(高校レベル)の計算式とか教えてはいけないことになっているから、簡単にベルヌーイの法則というだけですよ(笑) 流体力学の大まかな説明なら中学生レベルで説明されますけど。 厳密な定義を教…
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