試験開始!相手は教頭!?
生徒の皆が注目するステージに放浪人が上がる。
彼の目の前には教頭が手を後ろに組み待っていた。
「受験番号6番ん。放浪人。これから実技試験をするのん」
「教頭かわざわざ責任者であるあんたが出るとは期待されてんのかね」
放浪人が肩をすくめる。
何を勘違いしているのんこのイキリクソガキっと
言葉が出そうになった教頭だが流石に大人げないので
咳払いし言葉を選んだ。
「なんですのんその態度減点にしますん……って何をキョロキョロと
してるん」
放浪人は観客席を見渡している。
「おいおい。あれ教頭じゃないか」
「ホントだわざわざ出てくるなんてあいつよっぽどすごいのか」
腕を組んでいた男も流石に教頭が来たということで
驚きを隠せない。
「ばかな。あの教頭が直々にだと!」
身を乗り出し注目せざる得なかった。他も
「なになに。ミツザワ君もそうだけどあの人も結構カッコいいかも」
「今年顔面偏差値は高いよね」
「というかわたしあの人見たことあるんですけどどこだっけな」
「あーいいですね。これは期待できそうですねー」
教頭直々ということで観客席がざわめき始める。
「随分期待されている受験生なのね。あの6番」
「確かに昔活躍していたロドベル教頭が自ら実技試験の担当に
なるのは今まで例がないからな」
サーナの隣にいた二人は興味深々にステージを見つめる。
「あいつ遅いのよ。たっく」と言いながら
膝に肘をのせ頬杖をついて放浪人に視線を送るサーナ
すると辺りを見渡していた放浪人と不意に目があった。
放浪人はニヤリと笑い手を小さく上げた。
「もっもう放浪人ったら」とニヤニヤしながら手を振り返す。
「サーナの知り合いというのはあの人のことなのね」
「あっ…」
現場を一部始終見られたらしい。サーナが顔を伏せる。
「いや。今さら遅いわよ。というか別に隠す必要ないでしょ」
「いや…なんていうか言うタイミングを計っていたというか」
「タイミングってどういうこと」
テレポート場の出来事から少し経つが今だに覚えている
生徒もいるため言うに言えなかった。サーナ
「俺あいつの事どこかで見たことあるな」
「ホントなのサイガ」
その言葉に女性は驚いた。
「ああ。どこだったか…」
口元に手をやり必死に思い出そうとするサイガと呼ばれた男。
「ああ。そんなことより試合よ試合」
サーナは焦り声を上げた。
「いきなりどうしたのよ」
隣にいた女性は驚いた顔をする。
「さっきのミツザワって奴もすごかったけどあの6番もかなりの
実力者よ」
「ほう。お前にそんなことを言われるとわな。面白そうだ」
そう言うとサイガは放浪人の方に目を向けた。
その様子にサーナはホッとする。
「あなたやっぱりまだ何か隠しているわね……そもそも
彼とはいつ会ったの?」
もちろん友達は疑いの眼差しを送る。
「えーとそれは話が長くなるというか」
言いづらそうな態度を見て女性はため息をついた。
「でもまぁいいわ。今は試合の応援をしましょう
貴方の知り合いなんでしょ」
「チグサ!」
嬉しさのあまり女性の名を言うサーナ
「けど。寮に戻ったらたっぷり聞いてあげるからね」
「うっ…」
チグサは眉を上げ笑うと視線をステージに向ける。
サーナはなんて言おうか悩みながら肩を下げ
先ほどとは違う心境で目線を戻すのであった。
『それでは受験番号6番の実力テストを開始したいと思います』
女性のアナウンスと共に電光掲示板には放浪人と教頭の
顔写真と名前が映し出されその下にはHPと表示されたスティック状のバー
「良いですかん放浪人ん!ルールはいたって簡単ですん。
魔術んや魔法ん、武術んなんでも構いませんん
相手にダメージを与えてあの表示されているバーを全て消せば勝ちですん」
「なるほどいたって簡単なルールだな」
放浪人はその場で構えた。
「まだ始まってもいないのにやる気十分んですねん」
所詮武術だけの猿以下の脳タリンん!
わたしの魔具で固めた魔術と魔法の前に敗れるのん!
余裕の表情を浮かべる教頭が肩に手を置くとそこから魔法陣が現れる。
「あのさ、あの教頭って強いの?」
ユオが顔を傾けリクトリに訪ねると肩を上げわからないという
表情をする。
「見た目弱そうだよね。こりゃ放浪人の一方的な試合になりそうかな」
「だよね。ラッキーじゃん。ホーロ」
しかしミツザワは浮かない顔、
「どうしたんですかミツザワさん。何か気になることでもあるんですか?」
アムはその様子に嫌な予感がした。
「んだよ。ミツザワ。お前模試であいつの実力少しは見たんだろ?
他の教官ならまだしもあんな痩せ細った教頭に負けるわけねえだろ?
というかボーナスじゃんついてるな!あいつ」
「いや。あいつ逆についていないかもな」
ギリギリと腕を上げ悔しがるリクトリを横にミツザワがつぶやいた
「やばいってどういうことさ。ミッツー」
「教頭先生のことなにか知っているんですか?」
双子が首をかしげて訪ねる。
「とりあえず様子を見るしかないな」
ミツザワの言葉に四人は黙り心配な表所でステージを見上げた。
『試合開始!』
クロンガが大声で試合の開始合図をした。
「さて。では実力を見てあげましょんん。ほらん。かかってきなさいん」
「フン。そうかい。じゃあ!」
放浪人は地面を蹴り。一気に教頭との距離を縮めた。
「観客には悪いが今日は一日中振り回されてばっかりなんでな!
サッサと試合を終わらせてもらう!」
放浪人は教頭の腹部に渾身の一撃をくらわせる!
バスンと重くるしい音が会場内に響き渡った。
「早い。なんてやつだ」
「あのスピードとパワー結構スゲーんじゃねーか」
一部の生徒がどよめいた。
「よっし放浪人!さすがこれできまりよ!」
サーナは思わずガッツポーズをするも他の二人は
それほど驚かなかった。
「いや。まだ終わっていない」
サイガが指さした。
「ちょっとあれ何よ!」サーナは目を疑った。
そこには灰色の鉄の鎧に覆われた教頭の姿。
鎧は放浪人の拳をしっかりガードしてまるで聞いていないのか
教頭が余裕の表情で放浪人を見ていた。
「クライブ教頭先生はああ見えて魔術や魔法使う中でもかなりの実力者だ。
特に彼が編み出した物理攻撃を完全に無効化する魔具はかなりのものだと聞く」
チグサもサイガの言葉に同意する。
「ええ。わたしも聞いたことあるわ。だからあの人が教頭という
地位についているのもその高い能力のおかげ」
「あの教頭そんなにすごかったの…そうは見えないけど」
「まぁ確かにそうだけどでもおかしいわね」
「おかしい?どうして」
サーナは首をかしげる。
「お前は中等部でそのまま上がったから知らないかもしれないが
本来の実技試験はどの分野でも受験生が実力を発揮できるように
配慮する魔法や魔術を教官調整するんだ。ああいうふうに
無力化する魔具を使うなんてきいたことない」
「ええ。そうなの!」
サーナは不安そうに放浪人を見た。
「随分と固いな…」
拳が鎧にガッチリ止められ逆に軽い痛みを感じ
歯を食いしばる放浪人。
「その程度ですかん?その程度ではわたしの鎧は砕けませんよん!」
そう言うと放浪人の前に手を出すと突然鉄の槍が勢いよく噴出する!
「ぐっ!」
放浪人は体をエビのように反らしギリギリのところでかわし
そのままバク転をして距離をとった。しかし
完全にかわし切れなかったらしく放浪人のHPのバーは少し削れた。
「おいおい。放浪人の奴先手をくらわせたと思ったら
自分が最初に食らっちまったじゃねーか何やってんだよ!」
リクトリは驚いた顔をする。
「やはりか」ミツザワが全てわかった
「ミッツどういうことなのさ」
ユオが訪ねるとミツザワは苦行の表情を浮かべる。
「どうもこうもない。もしかしたら放浪人の奴負けてしまうかもしれん」




