試験前日の受験生達
試験前日に控えたセインエイツ受験生用の宿舎
水色の長い髪で左耳を見せるようにピンでとめている
純粋な瞳の少女が廊下を
キョロキョロと見渡しながら歩いていた。
誰かを探すみたいに
その時、ちょうど廊下で明日の試験の話をしていた
ミツザワとリクトリが少女に気づいた。
「アム。そんなに慌ててどうかしたのか」
ミツザワの気さくに声にアムと呼ばれた少女は気づくと
慌てた様子で二人の元に近づいた。
「ミツザワさん、リクトリさん、おはようございます」
頭を下げ挨拶した。
「ああ。おはよう」
ミツザワは笑顔で挨拶を返す。
「ああ。朝から心が洗われる」
リクトリがつぶやいた。
「あのユオちゃん、見かけませんでした」
「ユオ?……あいつまたどこかに行ったのか」
「ハイ試験前なので講義を一緒に受けて
いたのですが気がついたらどこかに行ってしまって」
アムは申し訳なさそうな表情で下を向く。
「気持ちはわかるけどなーあの先生メッチャ早口で
何言っているかわかんねーし」
「それはお前が理解しようとしてないだけだ
あの先生の魔術講義はなかなか為になるんだぞ」
「そうそうなのか。お前が言うなら今度真面目に聞いてみるかな」
リクトリがバンダナに手をやり目元を深く隠すのを見て
ミツザワは深くため息をつくとアムの顔を見た。
「とりあえず俺達も探すの手伝うよ」
「いいんですか。明日試験なのに」
「何。俺はもう明日の準備は終わったところだし
こいつも明日の調整だけだから大丈夫だ」
その言葉にリクトリもうんうんと頷くと笑顔でぐっと親指をたてる
「その通り安心しなよアムちゃん!俺達は君の為に頑張っちゃうよ!」
「ありがとうございます」
アムは深々と頭を下げて礼をした。
するとリクトリはミツザワの肩を掴みアムに背を向けた。
「くうう。やっぱりいいよなーアムちゃん!妹にしてえ」
「それを本人の前で言うなよ。嫌われるぞ」
「わーってるよ。でもさー一度でいいからお兄ちゃんとか
言われたいよな」
「そういえばお前は一人っ子だったなやはり妹に憧れが?」
「ああ。姉か妹欲しかったんだよなー」
「リアル妹と姉がいる俺にとってはそんな綺麗なものではないがな
他人だからいいもんなのだろうが」
ミツザワは過去に自分の姉妹の嫌な思い出を浮かべ
ため息をついた。
「あっあの」そんな背を向けている二人にアムは声をかけた。
慌てて二人は振り返った。
「いやーごめんごめん作戦会議しててさ」
「そうなんですか。流石です。それでユオちゃんはどこに
いると思いますか?」
咄嗟に口から出まかせを行ったリクトリは口を開けたまま固まる。
「えーとそれは…ほらあれだよ」
何とか答えをだそうと必死に模索するリクトリ
その様子を純粋な目をして答えを期待するアム
いやはや純粋とは時には残酷である
「とりあえず放浪人の所に行こうもしかしたら彼の所に
逃げ込んでいるかもしれない」
ミツザワが仕方なしに助け舟を出した。
「そそーそーなんだ。俺もそう言おうと思ってたんだ」
リクトリは便乗して首を縦にふりながらミツザワの肩を叩いた。
「放浪人さんですか…」
アムはつぶやき困った顔をする。
「5日前の模試テスト以降あまり姿を見ていませんが
大丈夫なんでしょうか…」
5日前模試ということで簡単な筆記や魔法適性、武術のテストを
おこなっていた。6人いる中で5人の受験生はそのテストに参加した。
そして結果はその日の夜発表されたのだが
余裕で入っていミツザワそしてリクトリとアム、
そして今現在探しているユオはギリギリ合格基準達していた
その中でただ一人合格基準に達していない放浪人…
それ以降彼はほとんど部屋から出ていない。
「かなり落ち込んでいましたし…わたし何か力になれれば
いいんですが」
ここに来て半月、食事をしたり講義に参加しているうちに
気がつけば5人は学園を目指す仲間になっていた。
「あいつは大丈夫さ。その程度で落ち込む奴ではないからな」
そう言うとミツザワは階段を上がった。
「そうだよ。アムちゃん、あの神経図太い放浪人だよ
場合によっては手伝わせてやる」
リクトリも階段に上ると慌ててアムは階段を上った。
「あいつは今俺が渡した課題を進めていると思うよ」
「課題ですか?」
アムはミツザワに訪ねる。
「ああ。今のままで勉強しても間に合わないからね
だから俺が今までのテスト記録で筆記にでそうな
問題を抜き出してあいつに覚え差しているんだよ」
「それで大丈夫なんですか?」
「さぁな。でもあいつなら筆記さえギリギリの点数取れれば
後は何とかなると思っている」
リクトリは怪訝な顔をミツザワに向けた
「それにしてもお前よくそこまで協力するな」
「同じ学園を目指す仲間だからな今年の受験生が少ないんだ
みんな合格した方が気分いいだろ」
「まぁ俺はそうは思わないが…」
話している内に3人は放浪人の部屋の前までたどり着いた。
リクトリがドアを確認すると鍵がかかっていた。
「おらー放浪人ー。あけろーそこにいるのはわかっているぞー」
「っちょっとだめですよ。そんな乱暴な事をしちゃ」
ドアの叩く音が聞こえたのかドアの向こうでガチャリと
鍵が開く音が鳴るとドアが開いた。
「何かようか?」
若干疲れ気味な声の放浪人が顔を出した。
寝不足だろうか目の下にはクマができている。
「あっ放浪人さんおはようございます」
少し遅れてアムは頭を下げた。
「あっああ……それで挨拶だけか
それなら俺はまた机に座るが」
ダルそうな放浪人は大きなあくびをする
「放浪人!アムが挨拶しているのになんだーその態度は!」
リクトリはドアを掴み訴えかける。
「まぁなんだ悪いな。今自分のことで手一杯だったんだ」
放浪人が頬をかくするとミツザワが
「やめろリクトリ」と興奮するリクトリの肩を叩く
「こちらこそすまないな放浪人。実は俺達、人を探してるんだ」
「人探し?フッ試験前日に随分と余裕なんだな」
「俺達は余裕があるからな。悔しければ明日の試験で合格するんだな」
「そのつもりだ」放浪人とミツザワはニヤリと笑う。
ふと横に立っているアムに放浪人が目を向けた。
アムは放浪人と目が合うと緊張した面持ちで
手を胸にやる
「あのそれで放浪人さん。ユオちゃん見ませんでした」
聞き覚えのある名前で放浪人反応した。
「ユオ?あいつまた講義をぬけだしたのか」
受験施設から何回も経験した光景。
放浪人は思い出す。
「おう放浪人。何かしってんか?」
リクトリの質問に放浪人の首が横に揺れる。
「知らん。そもそもここ数日顔も見ていないからな」
筆記テストの勉強をしていたと放浪人が説明する。
「本当かぁー。おまえあの子と仲いいからな。匿ってんじゃーねーか」
リクトリは怪訝な顔で放浪人の顔を眺めまわすも
彼は動じない。
「信用できないなら部屋を見ればいい」
そう言うとドアを開きあえて中を見せ
親指で部屋の奥を指さした。
「ほう。でわでわ中を見させてもらおうか」
部屋の中に入ろうとするリクトリの肩をミツザワが
ガッシリ掴む
「やめろって。嘘はついていなさそうだ」
「そうですよリクトリさん。これ以上勉強の邪魔しては」
二人に止められ渋々と放浪人の部屋から背を向ける
「っち。命拾いしたな放浪人」
「……もういいか」
放浪人はドアに手をかけた。
「ところで放浪人、明日の試験は大丈夫そうか」
ミツザワの言葉にピクリと反応する。
「さぁ。なるようにするさ」
放浪人は肩をすくめドアを閉めようとした
「放浪人さん。明日お互い頑張りましょうね」
アムの言葉にああっと頷くとそのままドアが閉まった。
「さて。ここにいないとするともしかしたら外だな」
「そうだね。とりあえず近くの店覗いて見ようか」
二人の言葉にアムは頷いた。
「そうですね。行ってみましょう」
三人はドアに背を向けて歩き出した。




