強敵出現?
ドアを閉め放浪人はダルそうな足取りで部屋の奥に戻っていく。
机には多くの本が積まれており
見たことのない数式や文字、紋章を
書き写したノートが散らばっていた。
「お帰りなさい。マスター。先ほど訪ねてきたのは
どなたですか」
本の上に置かれその下にあるプリントにライトを当てている
ログが訪ねてきた。
「受験仲間」
そう言うと机の目の間に置かれているベッドに
放浪人が腰掛ける。
「なるほど。行動を察するにまたユオさんが講義を抜け出したと
予想します」
「正解だ。あいつも試験前というのに相変わらずだ」
「やった正解しました」
ログの嬉しそうな音声が鳴る。
「それよりミツザワのくれたテストの採点は終わったか」
「はい。先ほど終わりました」
「どうだ」放浪人は期待を込めてベッドから体を
乗り出す。するとログは点数が表示された
点数は…100点中30点
「強敵だ」
恐ろしい敵の前に放浪人は後ろにあるベッドに倒れこんだ。
「 いえいえマスター十分ですよ。 前回は0点だったのでたった数日でここまで
上げるとはすごいです 」
「 気休めは逆に傷つくだけだ 」
ベッドで目を瞑りながら脱力する放浪人。
「 合格出来そうなのか? 」
「 試験は総合点です。 武術が満点なら後は実技試験合格でギリギリだと予想します 」
「 なら少し休む。 筆記以外落としたらもう取り返しがつかないからな 」
そう言うと睡魔に身を任せ眠りにつく放浪人だったがログの振動で再び目を覚まし
眠りを邪魔され不機嫌そうな顔をする。
「 なんだ 」
「 すいません。 連絡です 」
「 連絡? 誰からだ 」
放浪人はベッドから起き上がると机に置いてあるログを掴んだ。
「 ユオさんです 」
「 ユオだと……まさか 」
放浪人はかったるそうに頭をかくと窓のカーテンを開けた。
今まで締め切りにしていた窓から一気に日差し放浪人が目を細める。
そしてそこから見えるショートボブで中央の前髪をピンでとめている髪型。
いたずら子の瞳をした少女が部屋のベランダに丁度着地したところだった。
そう彼女がアムの探していたユオだ。
ユオは放浪人と目が合うとニカっと笑い
敬礼しながら手に持っている紙袋を掲げた。放浪人は窓を開ける。
「おいっす。ホーロ元気にしてた」
「いや。そこで何やっている。みんな探してたぞ」
「いーのいーの。気にしなーい」
ユオはそう言うと放浪人の脇を通り遠慮なく部屋入ってくると
部屋を見渡し机に置いてある大量の書籍に目を向けた。
「おお勉強してるみたいだねー。オッス。ログ公」
「オッス。ログじゃない。出ていけ」
放浪人は玄関を指さした。
その言葉にユオはあからさまに嫌だという表情を浮かべる。
「ええ。きたばっかりじゃん」
「だからどうした。さっさとアムの所に行け」
「相変わらず冷たいなー。人がせっかく心配してきたのに」
「見ての通り元気だ飛び降りて行け」
「お願いここにもう少しいさせてお兄ちゃん」
ユオが瞳を潤わせ上目使いで放浪人を見た。
「……帰れ」
「うわっ無反応。うーんこの技結構自身あるのにな」
実際リクトリには効果抜群だったらしい
「 ログ。 ミツザワに連絡入れろ 」
「 うわ。 ちょっと待って。 ちょっと」
ユオは放浪人の声をかき消すと慌ててログを掴むと
「 どうしました。 マスター 」
「 いやー何でもない。 何でも 」
誤魔化し笑いを浮かべ画面を抑え込む。
「 わたし用事があってここにきたの 」
「 用事? 」
「 明日の試験の激励! 差し入れだよ 」
「 差し入れだと 」
するとユオが放浪人の前に紙袋を突き出した。
そこには飲み物と食べ物の匂い。
腹の虫がどこからか聞こえる。
「 ここ数日、 ロクに食べてないんでしょ。 試験前日なんだから
ちゃんと食べないと 」
ユオが今までにないくらい優しい顔を浮かべ。その顔に放浪人は言葉が詰まり
渋々と紙袋を受け取った。
「 っち…少しだけだ 」
「 契約完了だね 」
いつもの元気な表情に戻るとユオはログをグルグル指で回し遠慮なく放浪人のベッドに座った。
「 それで勉強は、 どうなの合格できそう 」
放浪人は目を背け机に座り込む
「 空欄は少なくなくなった 」
「 おっ大健闘じゃーん。 ミッツー先生様様だね 」
「 相変わらずアム以外は変なあだ名をつけるな 」
因みにミッツーはミツザワのことである。
「 お前の方はどうなんだ。 試験前だというのに講義をサボったりして
いいのか 」
「 わたし? まぁー適当にね 」
「 余裕なんだな 」
放浪人はそう言うと袋から食べ物を取り出して口に放り込む。
「 別に私は落ちても受かってもどうでもいいから 」
「 中等部に大人しく戻るだけか。 それでも来年は受けられないだろ? 」
「 よく知ってるね。 ログから聞いた? 確かに進級試験受けられないんだよね
だから卒業したら一年間フリー 」
中等部で進級試験を受けないと卒業して今度はフリーから始めから
1から試験受けないといけなくなる。
「 本来卒業待つんだけど先生に説得されてアムが
どうしても受けたいっていうからね。 仕方なく受けただけ 」
「 やる気ないのはそのせいか 」
「 それよりさーホーロは落ちたらどうするの 」
「 ……落ちる気はない 」
「 もしだよ。 もーしホント冗談通じないなー 」
ユオは言うと思ったのかクスクスと笑う。
必ず受かって見せると意気込みでここにきた放浪人
落ちた時のことを考えていなかった。
放浪人は顎に手を置き少し考え
「 とりあえず旅に出るかな 」っと絞りだした。
借金の事もそうだがエナルインの事も気になっている放浪人。
獣人世界に戻せる方法を探す旅にも悪くないと考えいた。。
その言葉を聞くとユオがベッドから立ち上がった。
「 おーいいね。 いいね。 わたしも連れてってよ 」
「 なんでだ 」
「 そりゃーホーロと旅したら楽しそうだしね。 きっと飽きないっしょ 」
するとユオは手首をネジったポーズをとる。
その姿放浪人はもちろん見覚えあり
「 やめろ 」額に手を当てた。
「 いやーまさかあの映像の人と巡り会うなんてね 」
放浪人にユオが話しかけたきっかけでもある
例の映像。ここまで読んでくれた方ならわかるかもしれない
(12部参照)
「 これも運命だね。 どう付き合う? 」
「 やかましい。 ガキ 」
「 たはー相変わらずのコメント 」
ユオはベッドに倒れこみ目を閉じた。
「 普通断らないでしょーあっもしかして彼女いるとかログどうなの 」
「 いません 」
ログが即答した。
「 えー彼女いないでこんなかわいい顔して純粋な年下の少女の
告白を断るなんて。 ひどー 」
「 食い終わったぞ。 帰れ 」
そうこうしているうちに放浪人は紙袋の食べ物を全てたいらげた。
「 はや! まだ全然ゆっくりしてない 」
「 アムの所に戻ったらどうだ。 心配してたぞ 」
「 アム…まさか! アムの方がいいとか。うーん確かにあの子モテてたからな。
とんでもなく鈍感だけどいやいやでも顔そっくりだよ髪型が違うけど 」
「 違う 」
「 じゃあ女の魅力かな 」
何か思いついたのかユオはベッドから起き上がった。
するとベッドに座り足を組み手を頭に回した。
セクシーポーズ。
「 どうよ 」
若干顔を頬を染めながるユオ。
「 恥ずかしいならやるな 」
「 グウ。 これでもダメかー…はっまさか 」
いくら誘惑しても寂しい反応ばかりの放浪人ユオはある答えにたどり着く
「 ホーロ…もしかして 」
「 なんだ 」
「 …やっぱりミッツ…。 確かにいつもお互い気にかけてるし
いや変化球でリックかもいがみ合いながら燃え広がる… 」
「 そろそろ本気で追い出すぞ 」
その言葉にユオが二へラ笑う
「 はーい。 これ以上やると好感度がた落ちしそうだから言うこと聞きますか 」
そう言うとベッドから立ち上がりログを放浪人に渡すと自分のバンドを操作する。
そしてそのまま玄関の方へ歩いて行った。
「 ホーロ。 最後にこれだけは聞きたいんだけどさーまだ試験受かる気でいる 」
ユオは振り向き訪ねると放浪人は頷いた。
「 当たり前だ。 必ず受かる 」
「 ふーん。 そっかじゃ頑張りなよー応援するからさ 」
そう言うと放浪人の真似なのか眉をあげて右手を上げドアを開け出て行った。
「 なんだったんだ。 あいつ 」
「 激励でしょうか 」
「 前みたくからかいに来ただけかもな 」
放浪人はため息をつき紙袋にゴミを入れようとした時
ポロリと何かが落ちてきた。
怪訝な顔でそれを拾い確認した。ちょうどその時
「 もう。 ユオちゃんどこ言ってたのみんな探したんだよ 」
「 ごめん。 ごめんちょっと野暮用で…この後の講義には出るからさ 」
ユオとアムの声が壁越しから放浪人の耳に入る
それを聞きながら落ちている紙を確認した放浪人は
フッと笑うと再び机に座りこんだ。
「 あれマスター。 お休みになるのでは? 」
「 もう少しやる。 無駄なあがきは得意だからな 」
紙を机の壁に貼り付けると放浪人は再び強敵に挑むのであった。
壁に貼られている『 負けないでよ 』というかわいい字に見守られながら




