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遥か彼方の放浪者 ~The one chosen   作者: Fuyu
第一章
68/321

試験前日会議

セインエイツ学園にある大きな長方形の机が並ぶ一室で職員会議が行われている。

それぞれ設置されている椅子に赤やオレンジ、緑といった種類の服を着た男女、

部屋の奥にある高級感漂う椅子に白い髭をはやした老人がそれぞれ着席していた。

そして部屋の中心には顔写真付きのプロフィールが大きく表示されていた。


「うむー。今回の中途入試参加者は6名ですか」


髪の短い中年は残念そうな顔で手に持っている名簿を持ちペラペラと流し読んでいた。

彼こそがこの学園の校長、トーマス・ゼゼナン。


「中途入試はほぼ教師推薦と中等部からの飛び級しか入れませんから。無理ありません」

「普通なら受かる確率がもっとも高い一般の試験期間を狙いますからな」


正装してキッチリした金髪の女性と口元のヒゲがカールしているダンディ中年が頷いた。


「しかしやはり推薦枠ですね。数日前に行った模擬試験の結果ですがとても

素晴らしい成績を残しております」


すると中央の画面には4人のプロフィールがピックアップで表示された。


「一人は教師推薦のミツザワ・フェヌア、彼は筆記、魔法適性、武術

の模試ではどれも合格基準をはるかに達していますな。もちろん模擬試験の結果は1位です」


写真が映し出されると爽やかな好青年。

おお。とまわりの教師は感心する。


「それは素晴らしい。推薦した鼻が高いですな。バイツ先生」


校長はバイツと呼ばれた教師に目を向ける。


「ほめていただき恐縮です。校長先生」


バイツは眼鏡を上げ立ち上がり深々と頭を下げた。


「彼は本来受験期間中に受ける予定だったのですが残念ながら村の討伐クエストそれも

高難易度に挑戦していましてそっちを優先するということで今回推薦枠に入れさせてもらいました」

「なるほど。本来なら、うちの生徒になっていた子ですか」


校長は髭をなで嬉しそうな顔をする。その様子をみてバイツは隣の真面目そうな女性に目配りをした。

真面目そうな女性は打ち合わせしたとおりに立ち上がる。

すると画像はバンダナをつけている目つきの悪い男に切り替わった。


「そしてそんな優秀な彼の相方がリクトリ・ツヴァンツィヒです。

彼の成績は筆記こそはそこそこですが。魔法の適性能力と武術能力は目を見張るものがあります」

「なるほどこの二人をあなた達二人が協力して推薦したということですか」


バイツと真面目そうな女性は頷いた。


「確かにこの調子なら彼らはきっと学園のトップクラスにすぐなれるでしょう。

教師の推薦枠をわざわざ二人分つかうとはロドベル教頭先生の指導がいいんでしょうな」


ロドベルと呼ばれた校長の隣で立っているやたらともみ上げが長い血色が悪い男。


「そんなんーことはありますんーはいんー」


やたらと特徴のある喋り方をしながらロドベル教頭は頭をかきながらデへへと笑う。


「それであと二人は誰ですか?」

「あ、今変えます」


小柄な女性がバンドを操作すると今度は二人の少女が表示された。


「ほう。彼女たちは双子ですか」


校長の見た画像の少女は全く同じ顔をしていた。違いがあるとすれば髪の毛の長さくらいのものだろう。

小柄な女性は資料の束を持ちあげた。


「えーと、今回の私が中等部飛び級に推薦した二人です。髪の長い子の方は中等部でもかなり

優秀で今回の模試でも全て良い成績を残しています」

「確かに姉はん、すんばらしいのですがん。妹はん、どうなのなのんよん」


教頭は画像をショートボブの少女に変えた。


「成績は良くも悪くもないんじゃないん、正直ん、この程度のん生徒ならん。結構いるのん」


小柄な女性はその質問を予想していたのかニヤリと笑った。


「確かに妹の方の成績はいいとは言えませんが彼女は過去に中等部のテストで

一度姉を抜かして全課程すべて一位に輝いたことがあります。

それ以降彼女はロクに勉強をしていないのです」

「なぬんあーに無勉強!」

「それどころか授業に一回も出ていないです」

「い。いやん、無勉強でその成績はたしかんーにすごいんけどん

不真面目はよくないんのーそんな素行の悪い生徒はん

まわりにいい影響は与えないんねダメよダメダメ」


教頭の言葉をきいた他の教師も黙って頷くと校長も心配そうな顔で彼女を見た。


「確かにそのあたりは、ロドベル教頭の言う通りですね。

まぁわたしは個性があっていいと思いますが高等部の授業についてこれない不安はあります」


しかし小柄の女性は自身満々に表情を浮かべている。


「フフフそれは大丈夫ですなんたってこの双子は…」

「彼女たちは最年少で飛び級し現在だと、治安維持局で働いている卒業生の妹です」


決め言葉よろしくの言葉をバイツに取られて露骨に不機嫌になる小柄の女性。

すると回りの教師がざわつき始める。


「なんと。あの天才問題児の双子の妹だと」

「風噂では、治安維持局の将来幹部候補って聞いたな」


流石の教頭も驚きを隠せない。


「ななな、なんととんでもないのねん!」

「フフフ。本当は二人とも去年中等部受けさせようと思ったのですが

素行の悪い方……妹の方がずっと逃げてましてね。一年にも及ぶ長い交渉のすえ

見事説得に成功しました。犠牲も多いですが…」


小柄の女性はハンカチで頬を吹きながらため息をつく。


「いいですね。あの子についてはわたしも今でも覚えていますよ

全てにおいて素晴らしい成績を残していきましたからね。

そうですかあの子の双子の妹ですか」


校長は上機嫌に手渡された資料を眺めた。


「いやはや。今年の受験者は優秀な方ばかりですね

これなら全員中途試験は合格にしても問題なさそうですな」


陽気に笑う校長に教頭はピクリと反応する。


「だめでよんー!確かーにこのピックアップされた4人は

優秀なのはんーわかりましたんがー!それと対照的なドロップアウトがいまんーす!」

「対照的な人間ですか?」


校長が怪訝な顔をすると教頭は不気味な笑顔になった。


「これをみてくださいん」


画面には二つのプロフィールが表示された。


「こっこれは」


両方とも名前しか記述されていない


「画像がなく情報がないということは飛び級でも推薦でもない…一般枠ですか」

「そうですん!こんの二人が一番の脱落候補!ドロップアウトですん」


そう言うと教頭はバンドを操作した。


「一人がぁ。こいつ!名前以外一切経歴はなく受験受付開始直後に気づかぬ間に

登録をしていた者ですん。

一般枠だというにも関わらずこちらが提供する施設や模試にも参加せず。

ずっと部屋に引きこもっている不届き者ですん」

「まぁまぁ。施設や模試については強制ではなく自由なのだし…」

「だめですんよ!校長先生!強制されていなくても学園に入りたい

姿勢がー大事なのですん。見えない強制があるのですん!」

「そ、そういうものかな」


熱弁する教頭の言葉に気押される校長。


「えーとじゃあもう一人の方は何が問題なんだい?模試にもちゃんと参加しているみたいだが…」


校長は放浪人と書かれたリストを表示させた。


「こいつはーそもそも受験するにいたりません!何故なら筆記は壊滅的、

魔法適性は全適性あるも並み、良いところバカの一つ覚えの武術能力!」


教頭は声を荒げた。


「しかんも。礼儀知らずの態度!品のない面だけの風貌!学園に相応しくありません

受験するしかくもねん」


と付け加えプルプルと拳を握り机を叩いた。

するとバイツは眼鏡を上げ立ち上がった。


「確かに模試の筆記は最悪でしたがそれだけで判断してよいのでしょうか。

武術スキルは良い成績残していますし魔法の才能もないとは言い難い

もう少し長い目で見てもよろしいかと」


その言葉に聞いていた教師達は賛同した。


「わたしもそう思います。受験指導の方でも模試が終わった後

ミツザワ君に頼んで勉学に励んでいるみたいですし」

「もう一人に関してもただ模試や講義を受けていないだけですし

そもそもまだ模試の段階で受験資格を剝奪するのはどうかと」

「あと放浪人君ってカッコいいらしいよ。他にもミツザワ君やリクトリ君…私、試験当日見に行こうかな」

「ダメです。仕事をサボっては、なのでわたしが当日試験補佐としていきましょう」


否定的なヤジが飛び教頭は青筋を立てた。


「おんだまり。関係ない話までするんじゃありませんん!こんの一般常識がまともにん

なってないん二人はん、いずれ我がん学園の顔にん泥を塗りかねませんん!

コウチョ先生ん!即刻受験資格をはく奪するべきですん!」

「ええ……困りましたね。ロドベル教頭先生の言うことはわかりますが、

一応二人共受験資格はパスしています。それにチャレンジ精神を大事にするこれがわが校の

掲げている校風ですしそれを曲げるのは……」

「なんとん…」


なぜあんなドロップアウトコンビの二人に肩入れするのん、とつぶやき教頭の顔が曇る。


「あなたはどう思います今回の試験責任者クロンガ先生」


校長はクロンガと呼ばれる男に目を向けた。

そこにはガタイが良く硬派な男が腕を組み静かに座っている。


「…話は聞かせてもらいました。自分も校長先生の意見と同じです。

ロドベル教頭、貴方の言いたい事は大変理解できますが

今回は自分が試験の最高責任者です。ですので試験に関してはまかせていただきたい。

自分がこの目でわが校に入学資格があるか確認します」

「おお、流石今まで多くの優秀な生徒を世に出してきたクロンガ先生

後の事は頼みましたよ。それでは次の話をしましょう。今回の長期休みについてですが……」


ついには、クロンガに全てを任せ違う話題を話す校長の態度に教頭は口を尖らした。


面倒なことんになりましたなん。わたしクロンガは苦手ですん。どうしたものんか……


腕を組み考えたロドベル教頭すると突然頭にピーンと電球が光った。

グフフん!いい事おもいついたんの、と何かあくどい事を考える教頭であった。

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